ゲームクリエーターの平均年収はいくら 情報公開に消極的?
ゲーム市場の規模や動向などを収録した書籍「2021 CESAゲーム白書」(6600円)が25日、発売されました。メインはゲーム業界の市場規模ですが、同書にはユニークなデータも収録されていますので、紹介してみます。今回は、ゲーム業界の給料です。
「CESAゲーム白書」は、ゲーム業界団体のコンピュータエンターテインメント(CESA、東京都新宿区)が1996年から毎年発行しています。
◇ゲーム会社の平均年収は500万円台
同書ではさまざまなデータが収録されています。その中で協会に加入した企業にアンケート調査を実施し、勤続年収や平均年収なども記載されています。
年収ですが、従業員の平均年収は537万円で、開発職は573万円。ちなみに従業員と開発職の勤続年数はどちらも8.3年でした。
新卒(2020年4月1日入社)の学歴の割合も公開されています(1社あたりの平均採用数)です。ゲームクリエーター(開発職)ですが、大学・大学院卒は17.6人。専門学校卒は18.0人でした。なお高卒は0.0人でした。
ゲームクリエーターは「なりたい職業」のランキングで上位になります。そして実践的なスキルを身に付ける専門学校卒に強みがあるのですね。とはいえ、専門学校は大変でして、単なる「ゲームが好き」だけでは厳しく、自ら研鑽して作品作りに積極的な意欲がある人が採用されることを以前の取材で聞かされました。
話を元に戻します。優秀な人材が欲しいのはどの企業でも同じでしょう。今年に入って、バンダイナムコエンターテインメントやカプコン、コーエーテクモホールディングスが従業員や新卒の給与を大幅に引き上げて話題になりました。しかし現在はさまざまな業界で報酬アップ(特に初任給)の動きはありますから、額はすごいにしても、ゲーム業界がことさら特別というわけでもないのです。
◇アンケート回答率極めて低く
むしろ気になるのは、アンケートに対する回答率の低さ……消極的な姿勢です。CESAに加入する367社に送付したにもかかわらず、回答したのはわずか37社(約1割)。さらに従業員の年収に答えたのはさらにぐっと減って8社で、開発職の年収に答えたのはたった4社……という具合です。
国税庁の「民間給与実態統計調査(令和2年分)」によると、給与所得者数の平均給与は433万円でしたから、他業種より収入が劣っているわけでもありません。ちなみに上場企業は、有価証券報告書で従業員の給与を公開しています。
ゲーム開発者向け技術交流会「CEDEC」では、CESAの協力で開発者のアンケートを実施、給料についてのデータを取っています。2019年に発表した調査(2018年分)では、3007票の有効回答があり、全体で年収551万円でした。補足すると、2012年分の調査時は522万円ですから、概ね右肩上がりに推移しています。いずれにしても、「ゲーム白書」と似たような数字です。
回答の少なさをあえてフォローすれば、アンケートに回答しても「何の得にもならない」というのは、その通りでしょう。ですが、積極的な情報公開などを含めて、業界のイメージアップを図るのは大事なことです。「営業上の機密」ならともかく、出せる情報はしっかり公開して、開かれたゲーム業界であってほしいと願っています。