そろそろニート、飽きてきた?
財団法人東京しごとセンターから株式会社インテリジェンスが受託している「若者正社員チャレンジ事業」の広告がtwitterとfacebookで流れて来た(画像参照)。
ここで言う「経験のない」というのは正社員経験のことだと思われるが、企業実習を通じて正社員としての就職を目指す内容は比較的よく見られる就職支援事業であり、個人と企業が相互理解を高める上でも効果を見込めるものだと考える。
しかも、実習中は条件を満たせば最大10万円(キャリア習得奨励金)をもらうことができるそうだ。実習を受け入れる企業にも「受入準備金」と「採用奨励金」が支給される。
参加要件も明確に記載されている。
その上で、改めて広告に表現されている文言を見ていきたい。
・拝啓 ニート、フリーターの皆様
現在の若者政策の対象年齢は15歳から39歳までのものが増えてきており、それを前提とすると、対象となるニート、フリーターの数は推計900万人程度。そのなかの29歳以下で参加要件に当てはまる若者へ呼びかけている。
・今、やる気がなくてもこれから頑張ればいいんです。
現在の状況がどうあれ、就職サポートを受けるにあたっての土台が整っているのであれば、「これから」をどうしていくのか考え、行動に移していくサポートは重要だ。特に実習などは独力で企業を見つけることは難しい。一方、「やる気がない」若者となると、誰を対象としているのかが難しくなる。
やる気では括れないが、正社員として働きたい47.3%と独立したい1.6%と回答した以外の約50%が、今、(正社員として働きたい)やる気がなくても、この事業を知って「やってみよう」と思うなら精一杯応援するということだろう。あえて「やる気」という言葉を使っているのは、何かしらの奮起を促す意図があるのかもしれない。
また、ニート(若年無業者)のうち、求職型は仕事を探しているため、「やる気」という表現の外側にいる無業の若者としては非求職型と非希望型を示しているのだろう。
・そろそろニート、飽きてきた?
このキャッチコピーがもっとも考えさせられるものであった。筆者は10余年、無業の若者への支援活動をしてきたが「ニート」という状態から(正社員として)働くきっかけをつかむ動機が「飽き」であると考えたことも、聞いたこともなかったからだ。
ちなみに、「飽きる」の対義語・反対語は「凝る」であるが、ニート状態であることに凝っている、言い換えると、「あることに熱中し、心を奪われる。」とも考えられるが、むしろ、働けない状態を苦しく思っている若者が圧倒的多数であると実感する。
もちろん、これは広告的な拡散を狙ったものであり、たくさんの対象となる若者に情報を伝える。そしてこの若者正社員チャレンジ事業を活用してもらい、正社員就職のサポートをしていきたいという趣旨は理解できなくもない。ただ、このような表現を真に受けてしまうひとも存在し得るため、願わくばもう少し誤解のない表現で情報を発信してほしいものである。