ムダ仕事をするオフィスワーカーには、AI(人工知能)を使った抑止力が必要か?
働き方改革に不可欠な考え
施政方針演説で「働き方改革を断行」すると宣言した安倍首相。改革を断行する考えをあらためて強調されしました。
実際、現場でコンサルティングをしていてひしひしと感じるのは、オフィスワーカーの生産性の低さです。「働き方改革だ」「労働生産性をあげろ」「もっと効率的に仕事をして残業ゼロに」と声高に叫んでも、現実的には「言っているだけ」の職場が多い。
私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。クライアント企業には、事業目標を絶対に達成してもらいます。やるべきことは、ベストなタイミングでスピーディにやってもらいます。他方、やるべきでないことは、絶対にやってもらいたくない。
ところが「やるべきこと」は管理できるが、「やるべきでないこと」は管理できません。
「Not-To-Doリスト」は難しい
よく、やるべきことを書きだしたものを「To-Doリスト」と呼び、反対にやるべきでないことをまとめたものを「Not-To-Doリスト」と呼びます。
「To-Doリスト」は、「新幹線の予約をする」「会議資料をつくる」「新商品のアイデアを3つ出す」など、やったか/やらなかったかが明確なものが書かれます。したがって進捗管理がしやすい。
いっぽう「Not-To-Doリスト」は、だいたいが「朝はメールチェックしない」「ムダな残業をしない」「会議は1時間以上しない」という心掛けになってしまうことが多い。したがって、やったか/やらなかったかを正しく管理できないのです。
とくに個人ならともかく、チームでタスク管理をする場合、「やるべきこと」はできても「やるべきでないこと」までフォローは難しいと言えるでしょう。
ムダな仕事をどう減らすか?
最大の違いは「リスト管理できるか」ではなく「スケジュール管理できるか」です。「To-Doリスト」に記したことは、スケジュールに転記することができます。
「今日の朝9時から新幹線の予約をする。1分で終わる」「金曜日の午後3時から2時間かけて会議資料をつくる」「明日の朝8時から1時間、会議室にひとりこもって新商品のアイデアを3つ出す」
……などと具体的に記し、進捗管理ができます。
ところが「Not-To-Doリスト」に書いたことを、
「今日の朝9時から3時間はメールチェックをしない」「明日の6時以降は残業をしない」「木曜日の午後4時からの会議は1時間以上しない」
などと具体的にスケジュールに落とし込めません。
問題は意識の低さ
おそらく、この記事を読んでいる多くの人が、「日ごろから、そんなにムダなことをしているだろうか」「やらなくてもいい仕事を管理することなど、それほど重要ではない気がする」と思っていることでしょう。
しかし現場にいると、膨大に「やるべきでないこと」があります。
「やるべきでないこと」
「今やるべきでないこと」
「あなたがやるべきでないこと」
「その順番でやるべきでないこと」
……があります。
「どうみても、10人もオフィスワーカーは要らない。せいぜい4人で仕事をまわせるはずだ」
「なぜ3人とも、毎晩8時まで仕事をしているのか。あきらかにムダな仕事をして残業を増やしている」
観察していると、このように思える職場が膨大にあります。
ムダな仕事が増えると、さらに人を増やし、それらの人や業務を管理するシステムが導入され、新しい部署がつくられたりして、組織や仕組み、制度そのものがムダな存在、ということになっている職場も少なくありません。
ムダが新たなムダを生成し、何がムダなのかわからなくなっている管理者も多々います。
「やるべきでないこと」をただしく管理しないと、このように深刻な問題に発展していきます。にもかかわらず、多くの人が正しく認識していません。したがって、個人で管理することは不可能。チームでマネジメントすることも困難です。あくまでも「心掛け」「方針」を打ち出すぐらいしかできないのが現実です。
AI(人工知能)との連携が必要か
よほど意識が高い人でないかぎり、自分で「Not-To-Doリスト」をつくらないでしょうし、このリストを使ってセルフマネジメントしようとしません。会社全体で管理することはさらに困難です。
しかし「働き方改革を断行」するには、避けては通れない道です。そこで「管理」ではなく「監視」という側面を取り入れたら、と私は考えます。
オフィスのいたるところにカメラやマイクを設置し、IoTやAIのチカラを借りて監視するのです。
あきらかに会社の方針に合っていない仕事を部下に依頼する上司をカメラが認識したら、それを記録し経営者に通達します。1時間を超える会議の中身を音声で録音し、本当に意味のある議論をしているかどうか音声認識し、解析します。
無駄メールの発信源を突き止めたり、優先順位の低い仕事からとりかかっているオフィスワーカーには、その都度警告したりするのです。これはもう「管理」ではなく「監視」。「マネジメント」ではなく「モニタリング」です。
もちろん、必要な業務とは何か、どの順番で仕事をすべきか、勝手に判断して仕事を増やさない考え方とはどんなものかを組織内で話し合い、決定し、さらに社員教育を徹底してから、このモニタリングをスタートします。
「やるべきこと」はマネジメントしやすいですが、「やるべきでないこと」はマネジメントしづらいですので、AIなどのチカラを使ってモニタリングする。モニタリングはオフィスワーカーを罰するために利用するのではなく、抑止力に期待するのです。