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関東甲信の梅雨入りは記録的に遅く、梅雨が来ないうちに夏が来たとなる可能性も

饒村曜気象予報士
あじさい(写真:イメージマート)

四国まで梅雨入りしたものの

 今年は、沖縄・奄美・九州南部・四国で梅雨入りしていますが、各地とも平年より遅い梅雨入りでした。

 また、6月10日までに九州北部・中国・近畿・東海・関東甲信が梅雨入りしていませんので、平年より遅い梅雨入りが確定しています(表)。

表 令和6年(2024年)の梅雨入り
表 令和6年(2024年)の梅雨入り

 そして、北陸地方や東北地方も、しばらくは梅雨入りしそうもありませんので、今年、令和6年(2024年)は、梅雨がないとされる北海道を除いて、全国で遅い梅雨入りになりそうです。

 6月10日は、南岸低気圧の通過によって東日本の太平洋側や北日本では雲が多く、所々でにわか雨や雷雨となっていますが、南岸低気圧の通過後は前線が南へ下がる見込みです(図1)。

図1 予想天気図(6月11日9時の予想)
図1 予想天気図(6月11日9時の予想)

 前線がかかる南西諸島は雨で、所により雷を伴いますが、夏の主役の太平洋高気圧の勢力が弱いために、前線がなかなか北上してきません。

 このため、九州南部を除いて、晴れて気温が高くなる所が多くなりそうで、四国地方に続く、梅雨入りの地方はしばらくなさそうです。

 令和6年(2024年)は、ゴールデンウィークのときに記録的な暑さとなり、5月5日に最高気温が25度以上の夏日を観測したのが524地点(気温を観測している全国914地点の約57パーセント)、最高気温が30度以上の真夏日が116地点(約13パーセント)もありました。

 その後、ゴールデンウィークの頃の記録を大きく超えることはなかったのですが、6月11日は夏日が734地点(約80パーセント)、真夏日が166地点(約18パーセント)と予想されています(図2)。

図2 全国の真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(6月11日以降は予想)
図2 全国の真夏日、夏日、冬日の観測地点数の推移(6月11日以降は予想)

 そして、翌12日は夏日が772地点(約84パーセント)、真夏日が274地点(約30パーセント)となり、今年最多となる見込みです(図2)。

 梅雨はどこにいった、あるいは梅雨が来ないうちに夏が来たという雰囲気になると思われます。

九州南部と四国の梅雨

 ウェザーマップは16日先までの天気予報を発表していますが、これによると、鹿児島では、11日は晴れるものの、12日以降は傘マーク(雨)や黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)が並んでいます(図3)。

図3 鹿児島の16日先までの天気予報
図3 鹿児島の16日先までの天気予報

 降水の有無の信頼度は、5段階で一番高いAが過半数という予報で、九州南部は一時的に雨が止むものの梅雨らしい天気となる見込みです。

 というより、これだけ雨の日が続くということは、土の中の水分が増えることから、土砂災害に厳重な警戒が必要という予報です。

 梅雨前線が沖縄・奄美地方から九州南部に押し上げられるためですが、押し上げられても九州南部までです。

 同じく梅雨入りとしている四国では様子が少し違います(図4)。

図4 高知の16日先までの天気予報
図4 高知の16日先までの天気予報

 高知では、降水の有無の信頼度が5段階で1番低いEや2番目に低いDが含まれる予報とはいえ、6月18日まではお日様マーク(晴れ)があります。

 当面の梅雨前線の北上は九州南部までで、梅雨入り早々、梅雨の中休みに入る可能性がある予報です。

 四国でこのような予報ですから、九州南部や四国に続く梅雨入りは、しばらくなさそうです。

東京の梅雨は

 東京の16日までの予報を見ると、信頼度が低いDやEが含まれる予報ですが、6月18日まで白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)が、6月19日までお日様マーク(晴れ)があります(図5)。

図5 東京の16日先までの天気予報
図5 東京の16日先までの天気予報

 梅雨入りの平年は、関東甲信地方では6月7日ですが、東京の16日先までの予報をみると、黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)や傘マーク(雨)が続く6月20日くらいまでは梅雨入りがなさそうです。

 昭和26年(1951年)から昨年までの73年間で、関東甲信地方で梅雨入りが一番多かったのは6月上旬の後半(6日から10日)ですが、平成13年(2001年)以降に限っても、6月上旬の後半が一番多くなっています(図6)。

図6 関東甲信地方の昭和26年(1951年)以降の梅雨入り
図6 関東甲信地方の昭和26年(1951年)以降の梅雨入り

 関東甲信地方で、梅雨入りが一番遅かったのは、平成19年(2007年)の6月22日ですが、今年はこの記録に迫る、あるいは超える遅さになる可能性があります。

 今年、東京で一番暑かったのは、5月24日の29.0度ですから、まだ真夏日は観測していません。

 そして、6月10日は、最高気温が24.7度で夏日には届かなかったのですが、前日までに、すでに33日の夏日を観測しています(図7)。

図7  東京の最高気温と最低気温の推移(6月11日以降はウェザーマップの予報)
図7  東京の最高気温と最低気温の推移(6月11日以降はウェザーマップの予報)

 東京の16日先までの予報によると、6月11日以降は、夏日が続きますので、梅雨が来ないうちに夏が来るという可能性もあります。

 暑さ対策に紫外線対策、今年は例年より早く始める必要があります。 

図1の出典:気象庁ホームページ。

図2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。

図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図6、図7の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2015年6月新刊『特別警報と自然災害がわかる本』(オーム社)という本を出版しました。

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