九州南部も梅雨入りで予報精度が悪くなる雨の季節に 晴れの日の傘も雨の日の傘なしも見せられない予報官
九州南部の梅雨入り
令和3年(2021年)の沖縄地方と奄美地方は、5月5日に梅雨入りし、停滞している前線(梅雨前線)によって、雨や曇りの天気が続いていました。
しかし、5月11日からは梅雨前線が北上し、予想通りに九州南部が梅雨入りしました(図1)。
九州南部の梅雨入りの平年は5月30日、昭和26年(1951年)から令和2年(2020年)の70年間で一番早かったのは、昭和31年(1956年)の5月1日です(図2)。
今年、令和3年(2021年)の5月11日という九州南部の梅雨入りは、昭和31年(1956年)には及ばなかったものの、71年間で2番目に早い梅雨入りです。
ウェザーマップの16日先までの天気予報では、鹿児島は5月27日まで傘マーク(雨)や、黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)の日ばかりです(図3)。
降水の有無の信頼度が5段階で1番低いEや、2番目に低いDの日もあるとはいえ、九州南部では、梅雨入り以降、雨の日が続きそうです。
日本の梅雨は、梅雨入りしてもときおり晴れる日があるのですが、今回は、ときおり晴れる日がありませんので、土砂災害など雨による災害に厳重な警戒が必要な梅雨になりそうです。
これは、沖縄・奄美地方にあった梅雨前線が北上し、そのまま九州付近でしばらく停滞するためです。
四国の梅雨は?
九州南部だけでなく、四国地方も雨の日が続く予報です(図4)。
四国地方は、5月14日に晴れる予報ですが、この日の晴れを重視しなければ、きょう、5月12日にも梅雨入りの可能性があります。
5月14日の晴れを重視すれば、週明けの16日頃に梅雨入りとなります。
四国地方の梅雨入りの平年は6月5日ですが、昭和26年(1951年)から令和2年(2020年)までの70年間では、梅雨入りを特定できなかった昭和38年(1963年)を除く69回のうち40回(58パーセント)も6月上旬に梅雨入りしています(図5)。
そして、一番早かったのは、昭和51年(1976年)と平成11年(1999年)の5月19日です。
令和3年(2021年)は、九州南部だけでなく、四国地方など、その他の地方でも、梅雨入りは記録的に早そうです。
沖縄地方の「梅雨の中休み」
梅雨前線が北上したことにより、沖縄・奄美地方は、はやばやと梅雨の中休みとなる予報です(図6)。
ウェザーマップの16日先までの天気予報では、梅雨前線の北上によって、沖縄地方(那覇)では、5月12日以降は、ほとんどの日で、お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)です。
黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)の日は、5月12日と13日の2日間だけです。
最高気温も30度前後で、暑い日が続く予報です。
梅雨明けといってもよいほどの長い「梅雨の中休み」です。
また、奄美地方も、沖縄地方より雲が多くなりますが、お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)が続き、しばらく梅雨の中休みになりそうです。
沖縄・奄美地方では、梅雨の雨は貴重な水資源となっています。
災害をもたらすほどの降りすぎは困りますが、降らないとなると夏の水不足の心配です。
ロッカーの傘
予報官時代、「晴れの日の傘」も「雨の日の傘なし」も他人に見せられませんでした。
このことを、気象庁記者クラブで知り合いの新聞記者に記事にされました。
予報精度が悪かった時代の話で、記事の中で、職員とあるのは私のことです。
天気予報は雨が多い時は難しい
気象庁では、発表した各種の予報について様々な検証を行い公表しています。
予報が難しいのは、一般的には雨が多い時です。
従って、関東甲信地方の予報精度が一番良いのは、雨の少ない1月、予報精度が一番悪いのは、雨が多い7月となります(図7)。
予報が難しい事例が多い年か、少ない年かによって適中率が変化していますが、傾向としては、年々精度が向上しています。
例えば、東京地方の夕方発表の明日の天気の予報では、「ロッカーの傘」という記事がでた、平成9年(1997年)頃は、83パーセントの適中率でした。
現在は、87%パーセントまで適中率が向上しています(図8)。
天気予報の精度向上によって、「晴れの日の傘」も「雨の日の傘なし」も他人に見せられないという考えは、昔話になっているかもしれません。
ただ、雨の日の天気予報が難しいということには変わりがありません。
天気予報が難しい雨の季節に入りましたので、常に最新の情報入手に努め、警戒してください。
図1、図8の出典:気象庁ホームページ。
図2、図5の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。
図3、図4、図6の出典:ウェザーマップ提供。
図7出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。