「ニコチン中毒」の金正恩総書記はマナー違反の「常習犯」
金正恩(キム・ジョンウン)総書記はどうにもタバコを止めれないようだ。どう見てもニコチン依存症だ。
ヘビースモーカーはどこにもいるが、金総書記の場合はTPO(時と場所と場面)を構わず、吸っている。歩きながらでも、李雪主(リ・ソルジュ)夫人や娘のジュエが隣に座っていても、育児院でも禁煙の音楽会や舞踏会でも、また元老や長老らの前であろうが礼節などどこ吹く風で、一切おかまいなしだ。
今年も元旦から喫煙していた。
金総書記の公開活動は2月10日現在、延べ12回。そのうち手にタバコを持っている写真が配信されなかったのは1月21日の故崔泰福(チェ・テボク)元党書記の通夜と28日の潜水艦発射戦略巡航ミサイルの視察時を含め5回のみ。
但し、そのうち1月1日の「5.1競技場」での「2024年新年慶祝大公演」と1月15日に室内で開催された最高人民会議と1月23日の党政治局拡大会議では金総書記のテーブルの前に灰皿が置かれていた。
添付した写真は左上から万景台学生少年宮殿(1月1日)、農作機械展示会(1月2日)、重要軍用車両生産工場(1月7日)、左下から主要軍需工場(1月8日)、金化郡の地方工場(2月7日)、人民軍創建日慶祝公演(2月8日)でタバコを手にする金総書記である。この他に新たに建設された黄海北道光川の養鶏工場を1月7日に視察した際にも隣に娘がいるのにタバコを手にしていた。
金ファミリーの日本人料理人だった藤本健二氏から直接聞いた話では金総書記は15歳の頃から親に隠れて喫煙していたそうだ。ということは、今年40歳の金総書記の喫煙歴は足掛け25年間になる。
それでも2014年あたりから足を引きずって歩くなど一時「不便な体」(朝鮮中央テレビのアナウンサー)になったこともあって健康を意識したのか2016年にたった一度だが、3月中旬からから約80日間、煙草を絶ったことがあった。
この年の4月24日付の労働新聞に「煙草が人体に与える影響」との記事が掲載されていたが、記事を読むと、「革命をやろうとするな、体も健康でなければならない」との金総書記の言葉が紹介されていた。ということは自ら音頭を取って禁煙したことになる。
この年は全国で禁煙キャンペーンが展開され、朝鮮中央テレビには「朝から煙草を吸う人は健全ではない。周りの環境にも不快感を与えるので非常識だ」と喫煙家を非難する市民のインタビューまで流されていた。
しかし、金総書記の禁煙は長くは続かなかった。我慢できなかったのか、新たに建設された子供らが集う万景台少年団野営所を6月4日に視察した時の金総書記の手をみると、タバコを手にしていた。金総書記はこれ以降、二度と禁煙にチャレンジすることはなかった。
米国に亡命している母方の叔母(高容淑=コ・ヨンスク)は「ワシントンポスト」(2016年5月27日)とのインタビューで甥について「気が短くて忍耐力がない」と語っていたが、禁煙の失敗ではからずも忍耐力のなさを裏付けてしまった。
確か、2018年3月に文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が南北首脳会談開催のため特使として派遣した鄭義溶(チョン・ウィンヨン)大統領府国家安保室長が金総書記に面談した際に「タバコは体に悪いので、お止めになったらどうですか」と禁煙を勧めたことがあった。これには同席していた李雪主夫人が「いつもタバコを止めて欲しいと頼んでいるが、言うことを聞いてくれない」と手を叩いて喜んだが、金総書記は73歳の韓国特使のアドバイスを右から左に聞き流していた。
北朝鮮は2005年に最高人民会議で採択された「タバコ統制法」により新旧に関わらずタバコの生産を禁じている。金総書記のお気に入りは外国のイブ・サンローランだが、外国産タバコの輸入も規制されているはずだ。電子タバコも煙の出ないタバコも許されていない。
また、2020年に定められた「禁煙法」では劇場、映画館など公共の場、子供や育児の施設、教育機関、医療・保健施設、産業移設、奉仕施設、食堂、公共運輸手段での禁煙が全面的に義務付けられている。
そのことを裏付けるかのように北朝鮮の外務省は昨年、5月31日の「世界禁煙の日」に合わせてホームページの中で中国やキューバなど社会主義国の禁煙状況を伝え「我が政府は人民の使命と健康を保護するため先進的で積極的な禁煙政策を実施している」と宣伝していた。
確かに北朝鮮も全国的に禁煙が徹底しつつあるが、唯一の例外扱いが金総書記である。誰よりも規律にうるさい金総書記が自らマナーを違反しているのである。
喫煙が肥満防止のためなのか、それともストレス解消のためなのかわからないが、体重が一向に減らないところを見ると、後者のストレスが原因のようだ。しかし、「首領様」がストレスが溜まっているからといってどこでも喫煙が許されるものではない。音楽会など室内では喫煙は厳禁のはずだ。
父親の金正日(キム・ジョンイル)前総書記もヘビースモーカーだった。還暦(2002年)になる前の年に「喫煙は心臓を打ち抜く銃と同じだ」と言って禁煙を始めたが、よせばよいのに2009年に再びタバコを吹かし始め、それから2年後に心臓発作を起こして、急死してしまった。
父親の二の舞にならないよう周囲は金総書記に早めに禁煙を勧めるべきであろう。