ストレートに希望を伝えてくれる子どもたち
育て上げネットの学習支援事業部「まなびタス」は、通って来る子どもたちを選んでいないが、なかなか学校に行くことができなかったり、家庭の経済状況が厳しい子どもたちが多く在籍している。いまは子どもの貧困問題は、日本の社会課題として認識され、「そんな子どもは本当にいるのか?」という疑問を持つ余地がなくなってきている。
さまざまなメディアを通じて、私たちは命の危険にさらされていたり、あきらかに不利な状態にある子どもたちの姿を垣間見ることができる。しかしながら、この「黄信号」は見えづらく、例えば「習い事をあきらめている」といった限定的なことは不利益とみなしづらいと考え、一方で、そのような限定的なことが複数、複雑にのしかかっているが「赤信号」とは言えない子どもたちのことを知る機会は多くない。
今朝、事務所に到着すると、私の机の上に紙で作ったクリスマスツリーが置いてあり、小さなメッセージカードが添えられていた。
「理事長へ ちょっと早いクリスマスプレゼントです。MerryCristmas 学習スペース一同より」
※MerryCristmasのスペルはそのまま。
日常的には学習支援の担当職員が子どもたちとともにおり、私自身は挨拶や職場見学やスポーツイベントなどで顔を合わせるくらいだが、やはり子どもたちからいただいたクリスマスプレゼントは嬉しく、また驚きでもあった。
かわいい感じのクリスマスツリーを少し展開してみると、そこには長靴のデコレーションがあり、そこに言葉がつづられている。
「理事長 おいしいおかしが・・・!!たべたいです」
「おいしいチキンも・・・!!たべたいです」
そして大きなハートのなかに「優しい大人の人へ!!」と大きな文字で書かれている。
これを見て苦笑するとともに、家庭や学校であまり感情を出さない子どもも、元気にさわぐ子どもたちも、地道に付き合っていくなかで非常に見えづらいが、確実な変化が見て取れる。
ひとつには、「優しい大人」という存在が身近にいることがわかったこと。もうひとつが、ストレートに希望を伝えることができるようになったことだ。裏を返せば、子どもたちのなかには、あきらかに大人という存在に対して不信感を抱いていることもあれば、希望や期待があっても、それを言わなかったり、察してほしいとばかりに遠回しな表現、ときに態度をとる子どももいる。
小中学生ともなれば、面と向かってお菓子が食べたい、チキンが食べたいとは言わないのかもしれない。しかし、日常的な行動や発言を見るにおいては、やはりどこか自分を抑え、大人が期待している発言をする子どもがいる。断られる、受け止めてもらえないことを前提に、そうであっても傷つかないような表現をする子どもがいる。
これは家庭環境やいままでの成育歴に起因することもあれば、もともとそういう性格なこともあるだろう。原因はわからないが、それでも大人に対してストレートに希望を伝えてくる子どもたちを前に、大人への信頼が少なからず醸成されてきていることを感じている。
埋もれた、または、隠された子どもたちの本音や希望を聞き出すのではなく、あくまでも子どもたちの自主性によって贈られたクリスマスプレゼントと希望。それは、子どもたちを社会で育んでいくにあたり、数値化することはできないが、一方で、傍に大人がいること、居続けることで少なからず彼らの成長や変化に寄与できているのではないか。そういう示唆を得ることができた出来事であった。