「寒暖差の咳」に注意 原因とメカニズム
強烈な寒波が襲来しており、呼吸器疾患の受診も増えています。普段から咳が多い人は、寒暖差で急激に悪化することがあります。寒暖差による咳のメカニズムを解説します。
疾患予備軍を寒気が直撃
気管支への軽い刺激によって咳が出やすくなることを「気道過敏性」と呼びます。代表的な病気は、喘息や咳喘息です。これらの「予備軍」は多く、今回の寒気をきっかけに発症される方も多いです。
この時期の典型的な受診パターンは、「普段から咳が出やすかったが、寒気の到来で雪かきを余儀なくされ、咳が止まらなくなった」というものです。コンコンと乾いた咳の場合は咳喘息(表)、ぜえぜえやヒューヒューという症状がある場合は喘息が疑わしいです。
冷気によって咳が出やすくなる
普段から咳が出やすい人は実感していると思いますが、実は冷気によって咳が出やすくなることが分かっています(図)。
実は冷気というのは、呼吸器系にはあまりよくありません。今から40年近く前に、喘息の患者さんに「冷気吸入」をおこなった実験があります(1)。全体の64.7%が冷気の吸入によって咳、息苦しさ、ぜえぜえなどを経験しました。
また、北海道の喘息患者さんの調査(2)によると、全体の62.1%が寒冷曝露による喘息発作を経験したとされています。特に、雪かきなどの屋外の作業で発作を起こした人が多かったのです。
さらに、冬は湿度も低くなるので、ハウスダストなどのアレルゲンが浮遊しやすくなります。乾燥で気道粘膜も弱くなり、ウイルスに感染しやすくなります。
また、血管運動性鼻炎(いわゆる寒暖差アレルギー)(3)によって鼻水が増えて、ゴホゴホと咳をする人もいます。
寒くなると咳の受容体が増える
上記以外のメカニズムとして、最近注目を集めているのが「咳の受容体」です。たとえば、ハーブ、ミント、カプサイシンなどの刺激物を吸うことで咳が出やすくなることが分かっていて、この入口を「TRP受容体」と呼んでいます。
近年、刺激物に咳が誘発されるTRP受容体に注目が集まっており、さまざまな研究が進んでいます。
さて、周囲の気温が下がると、気道粘膜にTRP受容体が発現しやすくなるとされています(4)。根本的な理由はよく分かっていませんが、周囲の環境に合わせて「肺の中に異物を入れないぞ」という本能的な防御機構がはたらいているのかもしれません。
まとめ
寒いところだけでなく、急に暖かいところに行くと、身体の血行がよくなるためか、咳が悪化するという人もいます。ただ、お風呂をイメージしてもらうと分かりますが、湿度が保たれていれば、暖かい環境で咳が悪化することはまれです。
いずれにしても急激な寒暖差は避けたほうがよく、咳がある人は長時間雪かきをすることは控えましょう。
また、咳や感染症を予防するために、部屋の湿度は40~60%を保つようにしてください。
(参考)
(1) 竹下修治, 他. 日気食会報. 1984; 35 (3): 233-240
(2) 長内忍. アレルギー. 2004; 53(5): 508-514.
(3) 寒いところにいくと鼻水が。寒暖差アレルギーとは??(URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/maedayohei/20210116-00217473)
(4) Dong R, et al. Front Physiol. 2020; 11: 833.