バーニーズNYが破産申請を検討? マンハッタンの高額家賃が足かせに 米CNBCが報じる
高級スペシャリティストアとして知られるバーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEWYORK)が今月中に破産申告する可能性があるとCNBCテレビの電子版が13日午後(現地時間)に報じた。
タイトルは“Barneys explores possible July bankruptcy filing as it grapples with rent hike at Manhattan flagship”(バーニーズはマンハッタンの旗艦店の家賃引き上げ問題に取り組むと同時に、7月に破産申告の可能性を探る、の意味)だが、破産回避に向けて動いていることも併記している。CNBCによると、Ashkenazy Acquisition Corpが所有するバーニーズのマディソンアベニューの旗艦店の家賃は、今年1月、それまでの約1600万ドルから約3000万ドルに急上昇したという。
ニューヨークのマンハッタンの家賃高騰は業界全体を揺るがす問題になっており、米国を代表するファッションブランドのラルフローレン(RALPH LAUREN)やギャップ(GAP)、百貨店のヘンリベンデル(Henri Bendel)やロード&テイラー(Lord & Taylor)なども撤退している。
バーニーズは現在、ニューヨークのマディソンアベニュー、ダウンタウン、ブルックリンの他に、ロサンゼルスのビバリーヒルズ店をはじめ、カリフォルニア、シカゴ、マサチューセッツ、ラスベガス、シアトル、ペンシルベニア、ハワイなどに28店舗(うち、アウトレット8店舗)を展開している。
1923年にマンハッタンの17丁目に1号店をオープン。現在懸案のマディソン旗艦店は1993年にオープン。多店舗化に乗り出すも失敗し、1996年にチャプター11(連邦倒産法第11章)の適用を受けて倒産したことがある。その後、何度か株主が変わり、米ジョーンズ・アパレル(Jones Apparel)グループに続き、2007年にはユニクロ(UNIQLO)を展開するファーストリテイリング(FAST RETAILING)とドバイ政府系投資会社のイスティスマール(Istithmar)が買収合戦を繰り広げ、イスティスマールが“勝利”。買収価格は9億4230万ドルまで高騰した。ジョーンズの買収価格は4億ドルだった。その後、2012年に買収したペリーキャピタル(Perry Capital)は自社の業績悪化を理由に2016年でファンドを閉鎖。現在も株主だが、別ルートでの資金調達を余儀なくされてきた。売上高は約8億5000万ドル(約935億円)と見られている。
日本では、バーニーズ ジャパンが約20年間、ライセンス形式で店舗と商品を展開しており、現在はセブン&アイ・ホールディングスの子会社となっている。
もともとは米バーニーズ社からマスターライセンスを受けた伊勢丹(現三越伊勢丹ホールディングス)が100%子会社として1989年にバーニーズ ジャパンを設立。バブルが弾ける直前の1990年11月に、新宿に1号店をオープンした。同地にライバルの丸井が出店しようとしているのを阻止する意味もあったという裏話がある。横浜店、銀座店をオープンしたり、元グッチジャパンの田代俊明氏や、後に国会議員を務めた故・藤巻幸大氏、現在ファーストリテイリングのグループ執行役員でユニクロR&D統括責任者の勝田幸宏氏などの業界を牽引する人材を輩出したりもしている。
しかし、米本国との係争問題や、長く赤字が続いたこと、伊勢丹本体への選択と集中などのため、2006年に売却。株主となった住友商事と東京海上キャピタルは、神戸店や福岡店など従来よりも小ぶりの店舗を出店して多店舗化を進める一方で、手付かずだった新宿店のリニューアルなどにも乗り出した。その後、2014年にはセブン&アイ・ホールディングスが東京海上キャピタルから株式を買収し、49.99%を保有する住友商事に次ぐ第2位の株主に。持ち分法適用会社として、役員の派遣は百貨店子会社のそごう・西武やセブン-イレブンとの連携を開始。翌年、残り株式を住友商事から買取り、完全子会社化。2016年に六本木店をオープンしたり、eコマースにも力を入れてきた。2019年2月期の売上高は208億1000万円。
前述の通り、バーニーズ ジャパンは米バーニーズ ニューヨーク社とは資本関係がないため、直接的な影響はない。ただし、住友・東京海上時代から米本国との関係が良化しており、店舗の内装や、エクスクルーシブで販売するXO(Exclusively Oursの略)ラインなどで連携が深まっている。また、ブランドビジネスにおけるイメージ問題は避けて通れない。米国バーニーズに週明け、あるいは、月内に動きがあるのか、注視したい。