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磁気カード時代「1日乗車券」で横浜市営地下鉄、全駅下車に挑戦

鉄道乗蔵鉄道ライター

 ICカード乗車券の普及により現在ではほとんど姿を消してしまった磁気カード乗車券。日本の鉄道で初めて登場したのは1985年の国鉄オレンジカード。当時は自動券売機に投入して乗車券を購入する金券方式のプリペイドカードで、カードをそのまま自動改札機に投入することはできなかった。

 自動改札機に直接投入が出来るストアードフェア方式の磁気カード乗車券が登場したのは1991年のこと。国鉄分割民営化によって誕生したJR東日本のイオカードがそれにあたる。イオカードの登場後、1990年代にはストアードフェア方式の磁気カード乗車券が大都市部を中心に全国の鉄道事業者に普及。自動改札機を通すとカード裏面に乗車駅と下車駅と残額が印字されるようになった。

 鉄道事業者の中には、このストアードフェア方式のカードのフォーマットを使い1日乗車券を発行していた事業者もおり、カード裏面に乗車区間の履歴の印字をためていくのが乗り鉄の楽しみにもなっていた。こうしたこともあり、筆者は磁気カード乗車券タイプの裏面印字を1日で満杯にしたいという欲求にかられ、横浜市営地下鉄でそれを実際に実行したことがあった。

スタートはあざみ野駅、午前9時

ブルーラインの3000形(筆者撮影)
ブルーラインの3000形(筆者撮影)

 筆者が、横浜市営地下鉄で1日乗車券の裏面印字満杯に挑戦したのは2010年12月18日のこと。横浜市営地下鉄ブルーラインあざみ野―湘南台間40.4kmとグリーンライン日吉―中山間13.0kmの全駅に下車し、カードの裏面印字を埋めていく。

 スタートはあざみ野駅、午前9時。まずはブルーラインの全駅に下車しながら終点の湘南台駅へと向かう。磁気カード乗車券の裏面印字欄は22行×2列の計44行ある。すべてを埋めるまでにはいったい何時間かかることになるのだろうか。

 あざみ野駅の隣駅の中川駅で最初の1行を刻み終えると、地下鉄は地上区間へ。横浜市北部となるこのエリアは所々に雑木林が残り車窓風景は長閑である。各駅に降りながら再び地下区間となり8駅目の新横浜駅へと到着したのは午前10時頃のこと。あざみ野から新横浜へは直接向かえば17分で移動できる距離であるが、既にここで2倍以上の所要時間を要している。地上に上がるとちょうど東海道新幹線新横浜駅に700系新幹線電車が停車していた。

あざみ野から1時間で新横浜駅(筆者撮影)
あざみ野から1時間で新横浜駅(筆者撮影)

3時間でやっと横浜駅

 正午を迎えたのは、横浜駅隣の高島町駅。14駅目だ。ここには「二代目横浜駅の基礎等遺構」という史跡があるということで立ち寄ってみる。国有鉄道の二代目横浜駅は、煉瓦造りの堂々とした駅舎建築で、1915年に建設されたが8年後の1923(大正12)年の関東大震災後の火災により取り壊され短命だったため「幻の横浜駅」と呼ばれているそうだ。昼食は、高島町駅の3駅先となる伊勢佐木長者町駅近くの飲食店でいただく。

 15時近くとなりようやく22駅目の上大岡駅へ。上大岡駅は京浜急行電鉄との接続駅でバスターミナルも備えていることから駅周辺はかなり賑やかだ。季節は日照時間が最も短い12月中旬。すでに日は西に傾きかけていた。

 終点の湘南台駅に到着したのは17時過ぎのこと。ブルーライン全32駅の下車を達成した。あざみ野―湘南台間の所要時間は8時間。直接乗り通せば1時間9分で移動できるが、実に8倍近い時間を要することになった。

上大岡駅に着いたころには日はかなり西に傾いていた(筆者撮影)
上大岡駅に着いたころには日はかなり西に傾いていた(筆者撮影)

さらにグリーンラインの全駅下車を目指す

グリーンラインの10000形(筆者撮影)
グリーンラインの10000形(筆者撮影)

 湘南台駅でブルーラインの全駅下車を成し遂げたのち、次はグリーンラインの全駅下車を目指して始発の日吉駅へと向かう。湘南台駅から日吉駅までの所要時間はおよそ1時間。残るは10駅だ。すでに9時間以上に渡って地下鉄に乗り続けていることから、いよいよ疲労もピークに達してくる。

 18時過ぎになり日吉駅に到着。心を無にしながら各駅に降り、カードを自動改札機に通し下車駅を刻んでいく。終点一つ手前の川和町駅は地上駅で、あたりはすっかりと暗くなっていた。駅前には畑と丘陵地帯が広がっておりどこか物寂しさを感じる。終点の中山駅に到着した頃には21時近くになっていた。ここまでの所要時間は約12時間だった。

21時過ぎにあざみ野駅から再び下車開始

 しかし、横浜市営地下鉄の全駅下車を達成しても、まだ裏面の印字欄が3行余っている。仕方がないので、再びブルーラインの始発であるあざみ野駅へ向かい湘南台方面へ2駅下車することで、ようやく裏面印字満杯を達成することができた。チャレンジを達成できたのはセンター北駅。時間は21時30分近くとなっていた。

 帰宅しようと、裏面印字が満杯になった1日乗車券を自動改札機に投入するとエラーが表示され改札機の扉が閉じられてしまう。改札機が横の窓口に申し出たところ柵を開けて改札内に通してもらうことができ、無事帰路に付くことができた。

裏面印字満杯のための自動改札機との闘いは実に12時間半に及んだ(筆者撮影)
裏面印字満杯のための自動改札機との闘いは実に12時間半に及んだ(筆者撮影)

※下記リンクで当時のブログ記事を公開しています。
▼横浜市営地下鉄1日乗車券、磁気カード裏面印字満杯挑戦記!前編
http://www.noruzo-tetsudo.site/article/2010-yokohama01.html
▼横浜市営地下鉄1日乗車券、磁気カード裏面印字満杯挑戦記!後編
http://www.noruzo-tetsudo.site/article/2010-yokohama02.html

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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