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函館―長万部間、1900円から3500円へ! 函館バスが12月1日から運賃の大幅値上げを決めた背景

鉄道乗蔵鉄道ライター
函館バス(public domain)

 2014年10月2日、北海道函館市に本社を置く函館バスは12月1日から運賃の値上げを行うことを発表した。今回の値上げでは特に長距離路線での値上げ幅が大きく、区間によっては2倍以上の運賃になることから、異例の値上げともいえる。

 函館バスは運賃の値上げについて、近年の物価上昇や燃料費の高騰に加え、人件費の上昇も続いており、施設や設備の老朽化対策も急務となっている。さらに、鉄道との競合区間においては比較的安価な運賃を設定していたが、今後の持続可能な好況サービスの提供に向けて適切な運賃設定が必要になったことを理由に挙げている。

 函館駅前―木古内駅前間については現在の運賃は820円であるが、これが12月1日からは1,700円と2倍以上に跳ね上がる。函館―木古内間については道南いさりび鉄道では1,170円の運賃が設定されていることから、鉄道よりも高い運賃水準となる。

 函館駅前―長万部駅前間については1,900円から3,500円と、約1.8倍の値上げとなる。この区間のバスは1日4往復が設定されており、3時間15分前後で同区間を結んでいる。函館―長万部間についてはJR函館本線の特急北斗号では約1時間半の所要時間で4,780円。普通列車では約3時間の所要時間で2,420円となっている。

 函館バスでは、今回の運賃値上げにより収入が増加した分については、従業員のベースアップや待遇の引上げを行う計画で、さらに営業所施設の更新など施設・設備の老朽化に対応するための取り組みを進めるという。特に江差営業所では建設から57年が経過し、雨漏りなどの老朽化が顕著なため、現地での建て替えを2024年度末までに完了させる予定だという。

2024年度末までの建て替えが予定されている江差営業所(public domain)
2024年度末までの建て替えが予定されている江差営業所(public domain)

 今回、函館バスが従業員の待遇改善に舵を切った理由としては、函館バスではこの3年間、深刻な労使紛争を抱えていたことが背景にあると考えられる。2021年以降、会社側は労使交渉を行わなくなったことから、以降およそ100人にも及ぶ退職者を出したほか、運転手らを、労使協定を締結せずに時間外労働をさせた疑いで森社長ら会社幹部2名が略式起訴され、裁判所からそれぞれ罰金20万円の略式命令を受けている。これだけではない。函館バスの森社長は、従業員が違法に懲戒解雇されたなどと認定された裁判で、判決で言い渡された慰謝料の支払いに応じていないことから、函館地方裁判所から自宅と預金の差し押さえも受けていた。

主要区間の運賃比較表(画像:函館バスプレスリリース)
主要区間の運賃比較表(画像:函館バスプレスリリース)

(了)

鉄道ライター

鉄道に乗りすぎて頭の中が時刻表になりました。日本の鉄道全路線の乗りつぶしに挑戦中です。学生時代はお金がなかったので青春18きっぷで日本列島縦断修行をしてましたが、社会人になってからは新幹線で日本列島縦断修行ができるようになりました。

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