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『子供』と『子ども』どっちで書く?―「こども家庭庁」の推奨は『こども』【記者的言葉解説】

コティマムフリー記者(元テレビ局芸能記者)
出典:フォトAC

 きょう6月21日、「こども家庭庁」が初の「こども白書」を公表しました。「少子化社会対策白書」「子供・若者白書」「子どもの貧困対策に関する年次報告」の3つについて、こども家庭庁が今回初めてひとつにまとめたものです。

 この、子どもを取り巻く状況や子ども関連施策を掲載した2024年版「こども白書」は政府により閣議決定されました。同白書によると、23年度にこども家庭庁が取り組んだ「こどもの貧困対策」や「ヤングケアラーへの支援」「こども・若者の意見を政策に反映させるための施策」、「こども若者★いけんぷらす」などが掲載されているとのこと。

 子育てに関する制度では、「改正子ども子育て支援法」が6月5日に成立しています。その中には、公的医療保険料に上乗せして集められる「子ども・子育て支援金制度」の創設が盛り込まれています。「社会全体で子どもや子育て世帯を支える」という理念から、個人と企業などから公的医療保険料に上乗せして、約1兆円を集めます。今まさに子育て世代の筆者にとっても、興味関心の高い制度です。

子どもたち:筆者撮影
子どもたち:筆者撮影

 この制度によって受けられるサービスとして、妊娠届の提出時と、出産間近、出生届を提出した時にそれぞれ3回面談を行い、このうち1回目と3回目の面談を受けると、それぞれ5万円相当の出産応援ギフト(クーポン券など)を受け取ることができるようです。

出典:フォトAC
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 その他にも、産後の母子の心身のケアや育児サポートをする「産後ケア」、50万円の「出産育児一時金」、さらに児童手当、住宅支援なども盛り込まれています。男女ともに育児休業を一定期間以上取得した場合は、手取りが10割となる育休給付や、「こども誰でも通園制度」なども用意されています。

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 さて、前置きが長くなりましたが、実は先日こんな記事を書きました。「【記者的言葉解説】子供は”お供”じゃないから『子ども』? 漢字表記はNG?」――こちらの記事でも紹介していますが、「子ども」という表記には『子供』『子ども』『こども』などさまざまな書き方があります。上記のリード文の中でも、「子どもの貧困対策に関する年次報告」『改正子ども子育て支援法』と書いていたかと思えば、「子供・若者白書」『こども誰でも通園制度』と書かれていたり、表記がバラバラです。

 筆者は記者になってすぐに、「『子供』という表記は『子ども』に直す」と教わりました。実際に、多くのニュース記事でも『子ども』という表記が目立ちます。しかし「【記者的言葉解説】子供は”お供”じゃないから『子ども』? 漢字表記はNG?」でも書いたように、どの表記でも間違いはなく、最近は『子供』と漢字で書く媒体も増えています。むしろ文部科学省は公用文に用いられる表記を『子供』に統一しています(なぜ『子ども』という書き方に直するのかは、リンク先の記事をご覧ください)。

 そんな中で、2023年に創設された『こども家庭庁』は、前年の22年9月15日に、『こども』と平仮名で書く表記を推奨する事務連絡を各府省担当者宛に発出しています。

 この記事では、執筆記事1万本以上、取材経験5000回以上の元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、『ニュース記事に使われている何気ない言葉』を解説。今回も『子ども・こども』の表記についてご説明します。知ればニュースを読むのが「ちょ~っとだけ楽しくなる」かも……しれません。(構成・文=コティマム)

「こども基本法」の理念に基づいて『こども』表記

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 『子供』や『子ども』などさまざまな表記がある中で、22年9月15日に「こども家庭庁」は、「『こども』表記の推奨について(依頼)」という事務連絡をしました。行政文書や法人文書での『こども』の表記について判断基準を整理し、23年4月に施行された「こども基本法」の基本理念を踏まえて、『こども』という平仮名の表記を使用する、としています。

 この「こども基本法」では、「こども」のことを「心身の発達の過程にある者」と定義しています。つまり、「18歳未満からこども」というように、年齢で定義していないののです。

 そして「全てのこどもについて、その健やかな成長が図られる権利が等しく保障されること」などを定めています。この理念に基づいて「こども基本法」の中では、”子どもの期間を一定の年齢で画することのない”ように、『こども』と表記しています。「こども家庭庁」ではこの考えを踏まえ、特別な場合を除いては『こども』と表記することを推奨しています。特別な場合とは、例えば法令の名前や固有名詞、他の語との関連などで漢字に合わせる必要がある場合などです。

出典:フォトAC
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 だた、「こども家庭庁」が平仮名の『こども』を推奨していても、メディアで目にするニュース記事などでは『子ども』『子供』表記が多い印象です。実際に現在複数の媒体を担当している筆者ですが、どの媒体でも『子ども』と書いています(一部、新聞では『子供』と書かれているところもあります)。

 とはいえ、普通に個人が文章を書く際は『子供』でも『子ども』でも『こども』でも、どれを書いても自由です(この記事でこんなことを書いたら元も子もないのですが……)。

 文章を書く仕事をしていると、どうしても”表記ゆれ”には注意しなければいけないので、「どの書き方に統一されているか」はいつも気になるところです(筆者は普段のメールや文章でもクセで『子ども』と書きますし、『子供』や『こども』という表記を見るとついつい直したくなります)。

まとめ

出典:フォトAC
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 普段何気なく読んでいるニュース記事は、多くの“言葉のルール”にのっとって書かれています(この『のっとって』も漢字表記ではなく、平仮名書きという表記ルールがあります)。

 子供、子ども、こども……とさまざまな表記がありますが、学校で配布されたプリントやニュース記事などで表記がどうなっているか、ぜひチェックしてみてくださいね。今後も記者目線で、「ちょ~っとだけタメになる(?)」言葉解説をつづっていきます。

 言葉に関する記事については、「【記者的言葉解説】ニュース記事で書かれる『熊』は『クマ』 片仮名表記にする理由は?」もご覧ください。※スマホからご覧の方は、プロフィールからフォローしていただくと最新記事の見逃しがなくおすすめです。リアクションボタンもプッシュしていただけると、励みになります!

参照:こども家庭庁「こども基本法」

フリー記者(元テレビ局芸能記者)

元テレビ局芸能記者で、現・フリーランス記者。現在は歌舞伎や舞台、企業・経営者を取材中。記者目線ならではの“言葉のお話”や、個人的に取材したおもしろ情報を発信していきます♪執筆記事1万本以上。取材は5000回以上。現在は『ENCOUNT』、小学館『DIME WELLBEING』、舞台評、出版社書籍要約、企業HP制作など多岐に渡り執筆中。過去媒体にテレ朝ニュース、キャリコネニュース、音楽雑誌『bounce』etc.

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