台風17号に続いて18号発生 台風の対流活動がその北の高気圧を強化して西日本中心の高温持続
超大型の台風18号の発生
令和3年(2021年)10月8日3時に南シナ海で大型の台風17号が発生したのに続き、12時間後の8日15時にはフィリピンの東海上で超大型の台風18号が発生しました。
台風には、北西太平洋(南シナ海を含む)の台風防災に関する各国の政府間組織である台風委員会(日本含む14カ国・地域が加盟)が共通の名前をつけています。
台風17号については、香港が用意した「ライオンロック(山の名)」が、台風18号については、日本が用意した「コンパス(星座の名)」という名前がついています。
このコンパス座は、南半球の天の川にある小さな星座で、製図で使うコンパスが名前の由来です。
南シナ海で発生した台風17号は、ゆっくり北上のち西進し、海南島を通過してトンキン湾に入り、ベトナムに上陸してラオスで熱帯低気圧に変わる見込みです。
このため、台風17号は、日本への影響はほとんどないと思われます。
しかし、フィリピンの東海上で発生した台風18号は、北上して週明けには沖縄に接近する見込みです(図1)。
台風18号は中心付近に背の高い雲がなく、中心の西側と東側にまとまった雲がありますので、一般的な台風とは構造が違っています。
一般的に報じられることはほとんどないのですが、気象庁は台風位置の解析について、信頼度を「正確(good)」「ほぼ正確(fair)」「不確実(poor)」の3段階で表示しています。
気象衛星の観測が使われるようになってからは、「不確実」ということがほとんどなくなったのですが、この台風18号の位置の信頼度は「不確実」です。
つまり、強さや進路の予報は非常に難しい台風となっています。
台風の大きさ
気象庁が発表する気象情報や警報には、台風に「大型」など大きさを表現する言葉と、「非常に強い」など強さを表現する言葉をつけて発表しています。
この台風の大きさと強さの分類は、一つ一つ異なった顔を持つといわれている台風を、便宜上分類したものです。
昭和37年(1962年)から使われている分類ですが、当初は、大きさは1000hPaの等圧線の半径を使って5つのランクに分類(等圧線が変形している場合や防災上の問題があるときは暴風域を参考にして決める)していました。
また、強さは最低中心気圧を使って5つのランクに分類(防災上好ましくないと判断した場合は最大風速を参考にして決める)していました。
その後、大きさは強風域の大きさ(強風域が非対称の場合はその平均値)で5ランクに分類し、強さは最大風速で5ランクに分類となりました。
しかし、平成11年(1999年)8月14日の玄倉川水難事故をきっかけとして、安心感をあたえる表現は問題ということとなり、翌12年(2000年)からは、表のように表現を改めています(表)。
大型、超大型の台風それぞれの大きさは、日本列島の大きさと比較すると図2のようになります。
台風17号の大型、台風18号の超大型は、これだけ広い範囲で強い風が吹いていることを示しています。
日本付近の高気圧を強化
南シナ海の台風17号やフィリピン東海上の台風18号など、低緯度の海域では対流活動が活発になって上昇流が生じています(タイトル画像参照)。
この海域で上昇した空気は、上空で高緯度側と低緯度側に流れ、高緯度側に流れた空気は日本付近の高気圧を強化しています。
このため、移動性高気圧が強まりながら東進しています(図3)。
一般的に、秋の移動性高気圧は東進するにつれて弱まってゆきますが、春の移動性高気圧のようにです。
このため、高気圧が過ぎ去っても、北からの寒気がなかなか南下しにくく、晴れて日射の強い日が続いていることで、西日本の高温が続いています(図4)。
平年並みの気温になるのは、約1週間後の10月16日以降です。
そして、高気圧の強化によって台風もなかなか北上できなくなっています。
このため、台風18号は、沖縄の南海上を西進する予報となっていますが、超大型の台風ですから、台風から離れて通過した場合でも、強い風が吹く可能性があります。
油断することはできません。
タイトル画像の出典:ウェザーマップ提供。
図1の出典:ウェザーマップ提供資料に筆者加筆。
図2、図3の出典:気象庁ホームページ。
図4の出典:気象庁資料とウェザーマップ資料をもとに筆者作成。
表の出典:気象庁資料をもとに筆者作成。