プライズゲームがeスポーツに? クレーンゲーム選手権から見えた新たな可能性とは
タイトーは、プライズ(クレーン)ゲームを使用したゲーム大会「タイトーステーションCHALLENGE CUP 第1回クレーンゲーム選手権」を、東京都府中市にあるゲームセンター、タイトーステーション府中くるる店で10月30日に開催した。
本大会は、当初は8月に開催される予定だったが、新型コロナウイルスの影響による2度の延期を経て、ようやく実施が実現した。同社広報によると、参加希望者は定員の32人に対し延べ人数で800人を超えたため、抽選で出場者を決定したそうだ。YouTubeによるライブ配信のPV数は3万回を超え、1店舗で1日限りのイベントとは思えないほどの人気ぶりだった。
運営を担当したのは、同社が以前から主催しているeスポーツ大会「闘神祭」のスタッフとのこと。はたしてどんなイベントになるのか、筆者も興味津々で会場に足を運んだ。
幅広い年齢層が楽しめるイベントに
本大会は、景品を獲得するまでのプレイ回数が少ないプレイヤーが勝者となるルールで、全員参加の予選を勝ち抜いた上位8人による決勝トーナメントで優勝者を決定した。
上位に進出したプレイヤーは、元ゲーセン店長である筆者の目で見ても思わずうなってしまうほど上手で、決勝戦はわずか1プレイの差で勝敗がつく熱戦となった。だが、本大会は競技としての面白さよりも、老若男女を問わず誰でも参加できるイベントになっていたことのほうが強く印象に残った。
下は10代の小学生から、上は50代まで年齢層の幅が極めて広く、車椅子のプレイヤーも同じルールのもとで参加し、誰もが勝っても負けても実に楽しそうだった。既存のビデオゲームを使った対戦大会などとは違い、終始和やかで良い意味でのユルさがあったように思う。
コロナ禍でダメージを受けたゲーセンの集客に活用を
クレーンゲームは、景品の種類によって攻略法は異なるが、ルールは極めてシンプルであり、そもそもプレイヤー同士で対戦することを想定して作られていない。なので、例えばFPS(ファースト・パーソン・シューティング)や対戦格闘ゲームなどのように、長期にわたるリーグ戦を開催し、なおかつ観戦者も楽しめるeスポーツの興行として成立させるのは難しいだろう。
しかし、現在のアーケードゲームのオペレーション(店舗)売上は、拙稿「5年連続で市場拡大もビデオゲームは人気低迷 アーケードゲーム市場の実態は」でも紹介したようにプライズゲームが大半を占める。そんな時代にあって、本大会はコロナ禍も相まって年々失われつつあるビデオゲームやメダルゲームに代わり、新たなプレイヤーコミュニティ形成のきっかけ作りに貢献できる可能性を示したように思われる。
また、近年はゲーセンに出掛けなくてもスマホ1台あればクレーンゲームが楽しめて、なおかつ獲得した景品を自宅まで届けてくれるオンラインクレーンゲームも人気を集めている。本大会のようなイベントを開催することで、普段はオンラインで遊ぶプレイヤーに対し、ほかのプレイヤーや店舗スタッフと交流ができる機会を提供すれば、コロナ禍の影響で減少した店舗の客数、売上の回復にも貢献するかもしれない。
本大会の優勝者であるタイヤ王選手は、タイトーから「タイトークレーンゲームアンバサダー」に認定された。同社広報によると、今後の活動については現時点では未定とのことだが、同社のサイトには「タイトーの公式YouTubeチャンネルの『taitochannel』にて不定期で配信を行っている、タイトーステーションを貸し切りにして行う、クレーンゲーム企画等への出演権なども贈呈いたします」と書かれていた。
今後はタイヤ王選手をはじめ、大会スタッフが全国のゲームセンターを回り、店舗の客層に応じて「クレーンゲーム選手権」や「初心者講座」などを開催することで、各地でプレイヤーコミュニティの形成に貢献することを大いに期待したい。
なお、本大会の様子は今でもYouTubeでアーカイブ視聴ができるので、もし興味があれば下記リンクよりご覧いただきたい。
(参考リンク)