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接着剤による火傷事故が増加中!つけ爪用に潜む意外な危険と専門家が教える予防法 #専門家のまとめ

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

最近、接着剤による火傷事故が注目されています。特に、つけ爪用のシアノアクリレート系接着剤は、綿などの繊維に付着すると短時間で高温になり、重度の火傷を引き起こす危険性があります。接着剤は日常的に使われる便利なアイテムですが、その危険性について十分な注意喚起がなされていないのが現状です。本記事では、接着剤による火傷の実際の事例や、予防と対処法について専門家の意見を交えてご紹介します。接着剤を安全に使用するための知識を身につけましょう。

ココがポイント

▼接着剤作業で職業性皮膚炎のリスクが高く、北米ではエポキシ樹脂が主要原因。適切な予防対策が重要。

接着剤を扱う仕事で皮膚トラブルが増加中!原因と対策を皮膚科専門医が解説(Yahoo!ニュース エキスパート 大塚篤司)

▼シアノアクリレート系接着剤は綿製品と反応し高温になりやけどの危険がある。適切な使用と注意が必要で、異変があれば皮膚科を受診すべき。

子供の火傷事故に潜む意外な原因 - ネイルグルーなどのシアノアクリレート接着剤の危険性(Yahoo!ニュース エキスパート 大塚篤司)

▼つけ爪用接着剤が167度に達し、皮膚に付くと発熱し火傷の危険。拭き取らず水で洗い流す。衣服の場合も水で対処。

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エキスパートの補足・見解

接着剤は日常生活で広く使われていますが、中にはシアノアクリレート系の成分を含むものがあり、使用方法を誤ると重度の火傷を負う危険性があることが明らかになってきました。特につけ爪用接着剤は、綿などの繊維に付着すると160度以上の高温になる可能性があり、深刻な火傷事故が報告されています。

国民生活センターによると、2019年以降、シアノアクリレート系接着剤による火傷の相談が7件寄せられており、その半数がⅢ度の重症だったとのこと。手指の火傷で1ヶ月以上の通院を要した事例もありました。こうした事故を防ぐためには、接着剤の危険性を正しく理解し、適切な使用方法を徹底することが大切です。

具体的には、接着剤が皮膚や衣服に付着しないよう細心の注意を払い、万一付着した場合は石鹸水で速やかに洗い流すこと。また、換気の良い場所で使用し、子供の手の届かない場所に保管するなど、事故を未然に防ぐ工夫も必要です。

接着剤は便利な反面、危険性も潜んでいます。メーカーによる分かりやすい注意表示と、使用者一人一人の意識と知識が、火傷事故防止のカギを握っていると言えるでしょう。

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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