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2週間で2億8千万時間。「ONE PIECE」の世界展開を成功させたNetflixの凄さ

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:Netflixシリーズ『ONE PIECE』8月31日より独占配信中)

Netflixが8月31日に公開した実写版「ONE PIECE」ですが、早速シーズン2の制作決定が発表され、話題になっています。

続編制作決定は、原作者の尾田栄一郎さんが、実写版の「電伝虫」を通じて話す動画の中で伝える、という「ONE PIECE」ならではのスタイルで発表されました。

参考:Netflixドラマシリーズ『ONE PIECE』続編制作決定 尾田栄一郎氏がチョッパーに言及「優秀な“船医”が必要」

実際のドラマシリーズを視聴した人からすれば、実写版「ONE PIECE」のシーズン1が、続編の存在を感じさせるエンディングになっていたこともあり、シーズン2制作は当然という印象もあると思います。

ただ、実はNetflixは過去に実写版「カウボーイビバップ」を1シーズンで打ち切ったことがあるため、今回の発表に安心している人は少なくないはずです。

早速Netflixとしての公式の継続予告動画もアップされており、世界中のファンが楽しんでいる様子を見ることができます。

今回の実写版「ONE PIECE」は、これまで失敗する可能性が高いというイメージが強かった日本のマンガの実写化の常識を大きく変えたのは間違いありません。

ただ、ここでもう一つ注目していただきたいのは、そのインパクトの大きさです。

特に注目していただきたいのは、実写版「ONE PIECE」のNetflixにおける視聴時間が、すでに2週間足らずでなんと2億8千万時間を超えているという点です。

日本と世界でNetflixの位置づけは大きく違う

日本ではまだNetflixの会員数がそれほど多くないため、実写版「ONE PIECE」の話題はそれほど大きくなっていないという印象を持っている方も少なくないと思います。

そもそも、日本におけるNetflixの会員数は2020年の段階で500万人を突破したと発表されて以降開示されていませんが、おそらく1000万人まではまだ届いていないと言われています。

日本の人口が1億2千万を超えており、世帯数も5000万世帯近いことを考えると、Netflixを視聴できる世帯はまだ多く見積もっても2割ぐらいと考えられるわけです。

日本のテレビの世帯普及率が93%と言われていることを考えると、まだまだ日本の多くの人はNetflixが見られないのが普通という状態と言えます。

一方で、世界におけるNetflixの会員数は、2億3千万人を超えています。

特に、アメリカにおけるNetflixの世帯普及率は50%を超えていると言われますから、日本での感覚とは全く位置づけが異なるプラットフォームと言えるでしょう。

そんなNetflixの中で、実写版「ONE PIECE」が世界各国のランキングで1位になっているのは間違いなく凄いことです。

参考:大絶賛の世界1位スタート。実写版「ワンピース」が日本のマンガの世界への扉を開く。

ただ、Netflixのドラマシリーズは、映画のような興行収入の金額も出ませんし、日本からだとその凄さがピンとこないという方も多いはずです。

そこで、是非注目していただきたいのが、前述した2億8千万時間という視聴時間です。

2週間足らずで2億8千万を超える視聴時間

Netflixは自社で配信されている映画やドラマの視聴時間と、その視聴時間をシリーズ全体の番組時間で割った「ビュー」という視聴数を毎週公開しています。

実写版「ONE PIECE」が公開された初週の数値がこちらです。

(出典:Netflix TOP 10ウェブサイト)
(出典:Netflix TOP 10ウェブサイト)

実写版「ONE PIECE」の初週の視聴時間が1億4千万時間で、1850万ビューと、2位を大きく引き離した記録を達成していることが良く分かると思います。

実際に実写版「ONE PIECE」が公開されたのは週の途中の8月31日ですから、実質4日間だけでこの数値を達成したわけで、驚異的なスタートダッシュと言えるでしょう。

この勢いは2週目も維持されて、実写版「ONE PIECE」の初週と2週目を足した視聴時間が、2億8500万時間で、3780万ビューという数値になっているわけです。

これは、7時間30分を超える実写版「ONE PIECE」を、3780万人の人が全8話すべて視聴し終わったという計算です。

当然、まだシリーズを視聴途中の人がいることを考えると、実写版「ONE PIECE」は2週間足らず(正確には11日)で、世界中の4000〜5000万人以上の視聴者に届いている可能性が高いというわけです。

Netflixには10億時間超えの作品も

さらに今後期待されるのは、実写版「ONE PIECE」がNetflixの歴代の人気作品に匹敵する視聴時間になることです。

なにしろ、Netflixには視聴時間10億時間超えや、ビュー数1億超えの作品が多数存在します。

(出典:Netflix TOP 10ウェブサイト)
(出典:Netflix TOP 10ウェブサイト)

実写版「ONE PIECE」は、このトップ10入りも期待されますし、シーズンが続けばさらなる記録更新も期待できます。

映画「アバター」や映画「アベンジャーズ/エンドゲーム」などの世界で大ヒットした映画は、1億人〜2億人の観客を映画館に動員していると言われています。

もちろん映画は有料のチケットを購入した人数であることを考えれば単純比較はできませんが、Netflixの中だけでも、それに匹敵する視聴者に作品を見てもらうことができると言えるわけです。

「ONE PIECE」の魅力を最短で世界にひろげるという意味では、今回の数値は間違いなく大成功のスタートと言えますし、Netflixは「ONE PIECE」の世界進出において最適なパートナーと言えるでしょう。

Netflixは「ONE PIECE」が世界に向かう航海の仲間

実写版「ONE PIECE」の全貌がまだ見えていなかった5月に、尾田栄一郎先生がツイッターに意気込みとして綴られていた思いが印象的です。

「僕の寿命を計算してもONE PIECEが世界に向けて大きく踏み出せるチャンスはこれが最後だと思います。

やるからには自分の現役中に監修したい!という思いで2016年に着工しましたONE PIECE実写版号!」

ある意味、Netflixや実写版「ONE PIECE」の映像を制作した「tomorrow studio」は、尾田栄一郎先生が「ONE PIECE」を世界に向けて踏み出させる上での船の「仲間」と言える存在なのでしょう。

「ONE PIECE」の世界で、主人公のルフィがゾロやナミなど、1人ずつ素晴らしい「仲間」を見つけていったように。

尾田栄一郎先生も、Netflixや「tomorrow studio」、そして実写版のルフィを演じるイニャキ・ゴドイさんをはじめとする素晴らしい「仲間」を見つけていったということなのでしょう。

2週間で2億8千万時間超えは、間違いなく凄い数字ですが、「ONE PIECE」の世界本格展開においては、実ははじまりにすぎません。

これからNetflixとのタッグを通じて、「ONE PIECE」のファンが、実写版はもちろん、アニメやマンガも含めて世界中に拡がっていくのを楽しみにしたいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

Yahoo!ニュースでは、日本の「エンタメ」の未来や世界展開を応援すべく、エンタメのデジタルやSNS活用、推し活の進化を感じるニュースを紹介。 普段はnoteで、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についての啓発やサポートを担当。著書に「普通の人のためのSNSの教科書」「デジタルワークスタイル」などがある。

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