「世界ツアー101万人動員」の快挙を成し遂げたBABYMETALに、日本の音楽業界が学ぶべきこと
ここ数年、日本人アーティストの海外ツアーが話題になることが増えてきた印象がありますが、その筆頭にあげられるBABYMETALが、なんと2024年のライブで約101万人もの驚異的な規模の動員を行っていたことを発表しました。
参考:BABYMETALがUSツアー完遂 2024年の国内外通算51公演で約101万人を動員
BABYMETALといえば、2023年の段階でも日本を含む25カ国で通算94公演のライブを行い、フェスやゲスト出演を除くツアーの総動員数が24万人を超えたと発表しています。
2024年は、世界22カ国で通算51公演と2023年に比べるとライブの数自体は減ったものの、スペシャルゲスト出演の公演を除いたツアーとフェスの総動員数は約101万人と大台に乗せる結果となったようです。
特に、6月には、ヨーロッパの大型音楽フェスに10本出演し過去最多本数を達成したことが、全体の動員数を引き上げる結果になっているようです。
実際に、BABYMETALが出演したヨーロッパのフェスの様子の動画を見て頂くと、大量の人の波のような観客の熱狂のすさまじさが伝わるのでは無いかと思います。
海外を中心に100万人超え動員の快挙
もちろん、日本の音楽の歴史を振り返れば、100万人を超えるツアーの動員を果たしているアーティストは複数います。
象徴的なのは、コロナ禍の直前の2019年に181万人を動員した嵐でしょう。
同じ年には三代目 J SOUL BROTHERSも111万人の動員を果たしています。
参考:コンサート動員力、1位は嵐 星野源と米津玄師が躍進 - 日本経済新聞
ただ、これまでの日本人アーティストのそうした記録は、ほとんどが国内でのライブを中心に達成したもの。BABYMETALの今回の101万人という記録は、その動員のほとんどを海外で行っている点で意味が大きく異なります。
特に、直近で実施されている藤井風さんの世界ツアーの動員規模が21万人、YOASOBIが18万人、米津玄師さんが12万人規模。
さらに、来年実施されるAdoさんの世界ツアーが日本人アーティスト過去最大級の規模となる50万人超えを目標とすると発表されたことを踏まえると、このBABYMETALの101万人動員の凄さが分かって頂けるのでは無いかと思います。
参考:Ado、日本人アーティスト過去最大級のワールドツアー開催決定 50万人超を動員「日本を世界に持っていきたい」
全米のチャート1位やゴールドディスクも獲得
しかも、BABYMETALは今年5月にElectric Callboyとのコラボ曲としてリリースした「RATATATA」が全米のビルボードチャートの「ハードロック・デジタル・ソング・セールス」で1位を獲得。
参考:BABYMETALが初の全米1位 「最も売れたハードロック曲」に
さらに、Bring Me the Horizonとのコラボ曲「Kingslayer」が6月に米国でゴールドディスク認定されるという快挙も成し遂げているのです。
また、BABYMETALは先日発表されたSpotifyの「海外で最も再生された国内アーティスト」のランキングでも藤井風さんやXG、RADWIMPSに続く9位に入っています。
今年はBABYMETALにとっても、一段と飛躍の年だったことが良く分かります。
日本語歌唱に世界中のファンが熱狂
さらにBABYMETALの海外でのパフォーマンス映像をみて日本人として驚くのは、日本語歌唱でのBABYMETALのパフォーマンスに世界中のファンが熱狂していることです。
「音楽に国境はない」とは言うものの。
これまで多くの日本人は、日本のアーティストが海外進出して、海外にファンを広げるには、英語の楽曲を用意する必要があると考えていたはずです。
しかし、BABYMETALは日本語歌唱を軸にしたまま、ヘヴィメタルのトップアーティストの座に上り詰めました。
その彼女たちの存在感の大きさは、メガデスなどのヘヴィメタル界のレジェンド達がBABYMETALに一目置いていることでも明らかでしょう。
BABYMETALは、既に文字通り「音楽に国境はない」ことを象徴する存在になっているのです。
日本の音楽業界では特殊な存在に
BABYMETALは、結成が2010年と既に14年を超える歴史を持つグループで、2014年に「ギミチョコ!!」のパフォーマンスがYouTube経由で世界に拡がったことが、世界での活躍のきっかけになっているそうです。
実際にこの動画の再生回数は、もうすぐ2億回に到達しようというレベルですので、その注目度の高さが良く分かります。
その後、明確に日本ではなく世界を活動の軸に置いたBABYMETALは、日本のテレビ出演からは距離を置くようになり、一般的な日本人からは少し遠い存在になっています。
ただ、その一方で、BABYMETALは毎年のように世界の大規模なフェスに出演しつづけ、着実に世界のトップアーティストとしての地位を確立してきたわけです。
最近でこそ、日本からも様々なアーティストが海外のフェスに出演するようになり、世界ツアーも積極的に実施するようになってきました。
ただ、つい数年前までは日本のアーティストのほとんどが日本向けの活動を優先してきたのが現実でしょう。
実は、BABYMETAL以外の日本の音楽があまり世界から注目されてこなかったのは、日本のアーティストがBABYMETALの成功をある種「特殊」なものと位置づけて、従来通りの日本中心の音楽活動を続けてしまっていたからと言えるかもしれません。
BABYMETALの「正攻法」を参考に
すでにBABYMETALは、当然のように2025年のヨーロッパツアーの予定を発表しています。
彼女たちにとって、もはやヨーロッパツアーやアメリカのツアーは、特殊な活動ではなく、毎年当然のように実施する活動と言えるわけです。
毎年のように世界中のファンに自分達のライブを届け、世界のフェスで新しいファンと出会いつづけることで、BABYMETALは着実にそのファンを世界中に増やしつづけているわけです。
本気で自分達の音楽を世界中に広げたいのであれば、BABYMETAL同様に活動の中心軸を日本から世界に移すことが、一つの「正攻法」であることは間違いありません。
米国を拠点にする88risingと契約した新しい学校のリーダーズや、韓国を拠点に活動し世界中にファンを増やしているXGなど、そのBABYMETALの「正攻法」による成功事例は日本でも着実に増え始めています。
参考:デビュー3年目で躍進を遂げたXGに学ぶ、日本音楽世界進出の秘訣
今回のBABYMETALの「世界ツアー101万人動員」のニュースをきっかけに、更に多くの日本人アーティストが「正攻法」に挑戦し、世界に日本の音楽を広げてくれることを楽しみにしたいと思います。