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「質問の答えになっていないかもしれませんが」と平気で言う人は、コミュニケーションスキルが低い

横山信弘経営コラムニスト
質問の答えになっていないかもしれませんが、私はこう思うんです。(写真はイメージ)(写真:アフロ)

■ なんという、バカバカしいやり取りなのか

「なぜ、質問の答えになっていないことを、あんなに堂々と言えるのか?」

先日、ある企業の経営会議にオブザーバー出席しているときに、強く感じたことです。ある営業所の所長が、来期の方針を発表したあと、経営幹部のひとりが次のような質問をしました。

「今期の反省を生かして、新規開拓をしっかりやっていく、という話だったが、『今期の反省を生かして』というのは、どういうことか。詳しく教えてほしい」

すると、その営業所長はこう答えたのです。

「今期は業務効率化を進めるため、残業削減に力を入れました。しかし、採用活動も思ったようにうまくいかず、4人の採用をめざしましたが、結局2人しか新入社員が増えなくて、現場は本当にてんてこ舞いでした。とくに製造部門の人手が足りず、労務上の問題も残っています。私もあの手この手、手を尽くしましたが、力及ばずという感じです。いろいろ問題はございますが、とにかく来期こそは、営業所のスタッフ全員が一丸となって目標を達成させていこうと考えています。質問の答えになっていないかもしれませんが、そういうことです」

この営業所長があまりに堂々と答えるので、尋ねた経営幹部も、

「とにかく、いろいろあるだろうが、来期こそ頑張ってくれ」

と答えるにとどめていました。営業所長ご自身が最後に付け足しているとおり、質問の答えになっていない、にもかかわらずです。

なんという、バカバカしいやり取りなのでしょうか。しかし、実際には、多くの会議で見られる光景です。

現場では、極限まで生産性を上げなければならないと言われる働き方改革時代なのに、経営幹部たちは、日ごろからこんな不毛なやり取りを会議でしているのです。

■ 3つの特徴

では、「質問の答えになっていないかもしれませんが」と言う人の受け答えには、どんな特徴があるでしょうか。3つあります。

● 質問の論点とずれたことを言う

● 話が長い

● 頭が整理できていない

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。したがってクライアント企業の経営会議や営業会議に参加することも多い。業績の悪い会社ほど、不毛な議論、無意味な報告事項に明け暮れている場合があるので、私は会議中にいろいろと質問させてもらいます。

「2時間あまり会議をされましたが、参加者に現状の報告だけさせておいて、今期の施策を何も確認していません。部長、そのあたりをしっかりと聞くべきではないでしょうか」

たとえば私がこのように質問すると、以下のように返す人がいます。

「その点はですね。私も心得ているところです。たとえば来月には1200万円の案件が確定する予定でして、これが決まれば大きいと思います。ただ、そのためには、お客様の要望通りの生産体制をうちが確保できるかどうかがキモになってきます。横山さんの質問の答えになっているかわかりませんが、私はこのように考えています」

話の論点がずれているので、当然、私はもう一度質問しなおすことになります。「そうですか。なるほど、わかりました」などとは言いません。

「質問をもう一度繰り返します。今日の会議では、参加者に現状の報告だけさせておいて、今期の目標に対する施策を何も確認していません。2時間近くやっているにもかかわらず、ですよ。課長ひとりひとりに、今後の施策を聞いたほうが良いのではないか、と私は聞いているのです」

このように言ってはじめて、

「あ、そういうことですか。課長ひとりひとりに今後の施策を聞かなくちゃいけないってことですね……。確かに……」

と答えてくれればまだましですが、逆ギレする人も少なくありません。

「課長ひとりひとりに聞かなくても私が答えたからいいじゃありませんか。1200万の案件が決まれば、今期の計画にぐっと近づきます。私はそのことを言いたかったんですよ」

などと。

こちらは会議の「あり方」に言及しているのですから、完全に論点がずれています。話が噛み合わないのです。

■ 生産性を高めるコミュニケーションスキル

質問には、必ず話の論点となる「幹」があります。そして「幹」から「枝」が出ており、「枝」から「葉」が出ています。重要なことは、「幹」「枝」「葉」――それぞれが「センテンス」であることです。

そしてセンテンスは、複数のワードを繋げて構成されていることを頭に入れておきましょう。センテンスは「線」であり、ワードは「点」だと考えると、わかりやすいでしょう。「幹」「枝」「葉」、それぞれのセンテンスが頭に入っていると、話を正しく要約することができます。

ですから、「今期の反省」という部分だけに意識を向けるのではなく、「今期の反省を生かして、新規開拓をしっかりやっていく」というセンテンスそのものを論点と受け止め、頭を整理し、受け答えするのです。そうすれば、質問に答えられたはず。

管理者ほど、生産性の高いコミュニケーションをすべきです。

「質問の答えになっていないかもしれませんが」とばかり言う人は、日ごろから頭の整理ができていない。相手の話を「要約」して受け止められませんし、自分の話したいことを優先して話す悪癖があります。こんなことで、正しい組織運営ができるはずがありません。

とくに経営者や管理者などは、「質問の答えになっていないかもしれませんが」と言ってごまかさないよう、話の「要約力」を身に付けていきましょう。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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