「光」とは何か?その奇妙すぎる性質を解説
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「光とは何か?」というテーマで動画をお送りします。
視覚的な情報を頼りに生きている私たちにとって、「光」は欠かせない存在です。
そんな日常でありふれた存在である光ですが、その性質を分析していくと、日常的な感覚とはかけ離れた興味深い事実が明らかになってきます。
本動画ではそんな光に関する、基本的な性質について解説していきたいと思います。
●「光速」という特殊な速度
「光」は、真空中を秒速約30万kmという速度で進みます。
これは一秒間で地球を7周半する速さであり、人間スケールではとてつもない速さと言えます。
そんな真空中の光速は単に速いだけでなく、他の速度と異なり、特別なものでもあります。
これは当たり前のことですが、移動する物体の速度は、それを観測する観測者の速度によって異なって見えます。
例えば車道を時速40kmで走る車は、歩道で静止している人から見ると時速40kmに見えますが、同じく時速40kmで走る対向車から見ると、時速80kmに見えます。
しかし真空中の光速は、光源がどのように運動していても、どんな運動をする観測者から見ても、等しく光速に見えるのです。
常識に反しますが、これは様々な実験により確認されている事実です。
あらゆる物体の速度は相対的だが、真空中を移動する光だけは特別で、誰から見ても等しく光速である。
これを「光速度不変の原理」と呼びます。
アインシュタインは、この光速度不変の原理に基づいて「相対性理論」を構築しました。
特殊相対性理論では、常識に反するものの幾つかの重要な事実が語られています。
例えばまず、質量を持つ物質の速度の上限は光速であり、有限のエネルギーをどれだけ与えても光速に極めて近付くだけで、決して等しくはならないことが語られています。
また、時間の進み方は観測者によって変化することも記述されています。
光速に近い速度で移動する人ほど、外から見ると時間が遅れて見えるのです。
どんな速度で移動していようとも、観測者本人が感じる時間の進み方は変わりませんが、静止している別の観測者から亜光速で移動する人を見ると、その人の時間が遅れて進んでいるように見えます。
光速に近い速度で移動すれば、その人にとっては1年の時間経過でも、外の世界はその何十倍、何百倍も経過しているということが起こります。
この現象を「ウラシマ効果」と呼びます。
●波動と粒子の二重性
現代物理学において、一般相対性理論と並んで根幹をなす理論である「量子力学」は、素粒子や基本的な「力」など、主にミクロの世界を記述する理論です。
そんな量子力学において、これまた常識に反しますが、光は波動としての性質があり、かつ粒子としての性質も併せ持つという、「二重性」があると考えられています。
光の性質のうち波としての性質を強調する場合は「電磁波」、粒子としての性質を強調する場合は「光子」と呼びます。
この波動と粒子の二重性は、光を成す素粒子である「光子」に限らず、あらゆる素粒子が持つ性質であると知られています。
●波動(電磁波)としての性質
○波動性を示す具体例:回折と干渉
光の波動性を証明した有名な実験に、1800年代にトーマス・ヤングが行った「ヤングの実験」が挙げられます。
この実験では光を「スリット」と呼ばれる細い穴に通し、その先のスクリーンにどのような模様が映るかを検証します。
同様の検証を、まずは水面の波で行ってみます。
片方のスリットに注目すると、スリットを通過した波は直進するのではなく、障害物を回り込んで進んでいます。
これは「回折」という現象で、この現象を起こすのが、波が持つ特有の性質の一つです。
そして、波を2つのスリットに通すと、回折した2つの波が「干渉」し合い、波が強め合う点と弱め合う点がそれぞれ別の直線状に並んでいるのが確認できます。
干渉も、波が持つ特有の性質の一つです。
スクリーン上では、強い波が届く点とほとんど波が届かない点が交互にできています。
今度は「光」を二つのスリットに通すと、スクリーン上では、強い光が届く点とほとんど光が届かない点が交互にできています。
これは先ほど水面の波で観測された模様と同じであり、光が「回折」と「干渉」を起こすという波の性質を持っているからこそ生じる「干渉縞」と呼ばれる模様です。
○電磁波の波長と分類
電磁波はその波長によって性質が大きく異なります。
私たちが見える光(可視光線)は、電磁波の中でも特定の狭い波長域のみです。
その中でも波長の違いで、私たちの目は「色」を認識しています。
可視光より波長が長いものには、赤外線や電波があり、反対に短いものには紫外線、X線、γ線があります。
電磁波にはエネルギーがあり、波長が短い(振動数が多い)ほど高エネルギーです。
片方を壁に固定した縄跳びを上下に振動させて波を作る時と考えてみましょう。
波の幅が同じであれば、波長が短いほど腕を素早く振動させてより多くのエネルギーを与える必要があることから、波長が短い(振動数が多い)ほど高エネルギーであるとイメージしやすいかもしれません。
X線やγ線は非常に高エネルギーで、生体の細胞を傷つけるため、有害な「放射線」に分類されます。
また、波長が長いほど波動としての性質が強まります。
最も波長が長い電波は特にそうで、例えば「回折」を起こす性質により、障害物に遮られた場所でも電波通信が可能になります。
○スペクトルと熱放射
自然に生じたあらゆる電磁波には、様々な波長の電磁波が混在しています。
どの波長の電磁波が、どれくらいの強度でやってきているのかを示した「波長ごとの強度分布」は「スペクトル」と呼ばれています。
地球から何万光年、何億光年も彼方にある天体からやってきた電磁波のスペクトルを調べることで、その天体との距離や組成など、様々な情報が得られます。
天文学においてスペクトルは欠かせない情報です。
またあらゆる物体は、その表面温度に応じた電磁波を常に放っており、この現象を「熱放射」と呼びます。
物体の温度に応じて、放射される電磁波の強度分布(スペクトル)が決まっています。
サーモグラフィーで暗闇でも人体が検出可能なのは、人体から主に赤外線が放たれているからです。
恒星程度の温度(数千~数万度)であれば可視光を多く放つため、夜でも星々が輝いて見えます。
また恒星の色もその温度によって決まり、赤い星ほど低温で、青い星ほど高温になります。
この熱放射という現象のおかげで、遠方の天体の光のスペクトルを調べると、その温度も理解することができます。
●粒子(光子)としての性質
○波動性だけでは説明困難な現象
光にまつわる多くの現象は、光が波動であると解釈すれば理解できることから、光が波動であることは間違なさそうです。
しかし困ったことに、光が単に波動というだけでは理解できない、幾つかの物理現象が存在することが知られていました。
中でも有名なものの一つに、「光電効果」という現象が挙げられます。
光電効果とは、物質に電磁波を照射した際に、電磁波からエネルギーを与えられた電子が物質から飛び出す現象のことです。
電子が飛び出すには、電磁波から一定以上のエネルギーが与えられる必要があります。
仮に光が波動であれば、そのエネルギーは電磁波の強度(波の振幅や数、明るさ)と波長の短さで決まるはずです。
よってより高強度で明るい電磁波を照射するか、より波長が短い電磁波を照射することで、電子により高いエネルギーを与えて飛び出させることができるはずです。
しかし実際は、ある一定以上の波長を持つ電磁波だと、いくら強度を高めても(明るくしても)電子は飛び出してきません。
これは光が単に波動であるという解釈では、説明ができない現象の一つです。
そんな中アインシュタインは、光が波動性を持ち、かつ粒子性も併せ持っていると提唱しました。
先述の光電効果も、光の粒子性によって説明可能です。光が粒(光子)なら、粒が一定未満のエネルギーしか持たなければ、どれだけ電子に粒を当てても電子を動かすことはできません。
電子を飛び出させるには、光子の波長を短くし、粒単位で高いエネルギーを持たせるしかなくなるのです。
光は波動と粒子の二重性を持っていますが、高波長の光ほど波動性が顕著に見られるのに対し、短波長の電磁波ほど粒子性が顕著に見られます。
○素粒子としての光子
宇宙に存在するあらゆる力は「重力」「電磁気力」「強い力」「弱い力」の4つだけに分類でき、それらの力はそれ以上分解できない最小単位の粒子である「素粒子」のやり取りによって伝わると考えられています。
量子力学の枠組みで、重力以外の3つの力について非常に高精度で説明可能な「標準理論」という優れた理論が存在します。
そんな標準理論において光子は、現時点で17種類発見されている素粒子の1つに数えられています。
光子の質量は0で、電荷を持ちません。
質量が0なので、物質が出せる速度の上限である「光速」で移動が可能です。
また光子は、「電磁気力」を伝える役割も持っています。
物質を持ったり押したりできる反発力、摩擦力、電気や磁石の力など、日常で私たちが実感できるあらゆる重力以外の力は全て電磁気力に分類されます。
そんな電磁気力は、素粒子間で光子が交換されることによって伝わるものであると
理解されています。
「物が見える」以外にも、私たちが普通に生活する上で「光」の恩恵は非常に大きいです。