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【動画アリ】軽4WDのスズキ新型ジムニーが人気の理由

河口まなぶ自動車ジャーナリスト
筆者撮影

 スズキが実に20年ぶりに新型とした軽自動車のオフロード4WD車である「ジムニー」に話題と人気が集まっている。

筆者撮影
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 今回の新型は2018年の7月5日に発表されたわけだが、既にウェブ等でも「いま注文しても1年待ち」という話が広がっているほど。実際にスズキの関係者に話を伺っても確かに「かなりお待たせしてしまうことになる」とのことだった。

 ではなぜいま、軽4WDという特殊なジャンルのジムニーが話題となり人気となっているのだろうか?

 まず考えられるのは、実に20年ぶりのフルモデルチェンジということで、もともとのファンやクルマ好き、そしてメディアから注目されたということ。

 20年ぶりということ自体が驚愕だが、裏を返せばこれまでのモデルが20年に渡って販売されてきたわけで、さらにデビューした1970年から数えると、なんと48年に渡って販売が続いてきた名実ともに「生きる名車」でもある。そして今回、新型が登場するにあたって、改めてこの事実が浮き彫りになり、日本を代表する1台としてこのクルマがあったではないか、というムードが生まれた。正直な話、20年ぶりの新型ということもあって、新型が登場する噂が流れるまで偉大なるジムニーを忘れていた感はあったわけで、それが余計に再評価へとつながったといえる。

筆者撮影
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 また次に考えられるのは、ジムニーというクルマが極めて特殊な存在ということも理由としてあげられる。

 まずユニークなのはジムニーは日本特有の軽自動車でありながら硬派な、機能第一主義のリアルオフローダーであり、世界的に見ても似たプロダクトが皆無といえるクルマであること。極めて小型で軽量であるがゆえに、その走破性の高さや小回り性能等は圧倒的で、道なき道を進む際に極めて高い性能を発揮する。実際に国内では古くから多くの森林組合で使用されている他、ドイツでも森林組合などで使われている実績がある。これをしてスズキは「ジムニーでなければたどり着けない場所や走れない道が世界中にある」と謳っているが、まさにそれほどの稀な存在だ。

 そうしたクルマが、実に20年ぶりにフルモデルチェンジして、先代モデルが登場した当時(1998年)とは全く変わった自動車を取り巻く環境の中で、改めて存在感を示している。いまやハイブリッドや電気自動車があたり前になりつつあり、ジムニーとは明らかに路線が異なるSUVが主役となっている時代。そうした時代に、機能第一主義の、メカニズム的には比較的ベーシックなリアルオフローダーが新型として送り出される、というのは非常に興味深いところでもある。そんな、新しい時代に古くから続く歴史と伝統あるモデルが姿を表すのだから、自然と注目されるし話題にもなる、ということである。

筆者撮影
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 しかしながら今回、ジムニーが注目され話題となり人気となっている最大の理由はそのデザインにあると言って間違いないだろう。

 初めてこのデザインが流出した際には、ウェブでかなりの拡散がなされたほどだったが、いまこうして実際にプロダクトとなったものを見て、素直に魅力を感じる。スズキはこの新型で原点回帰を謳い、デザインに関しては「合理的で無駄のない機能美。『プロの道具』をデザインする」としている。そして実際に車両の姿勢や状況を把握しやすいスクエアなボディ、過酷な環境に負けないタフなパネル断面、走破性・積載性を高める細部の工夫といった3要素を表現したという。

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 さらに歴代ジムニーのアイコンだったエレメントを様々な部分に引用していると説明。ボディカラーや素材に関しても、機能を表現するもの、と説明されている。例えば新たなボディカラーのキネティックイエローは暗い森や悪天候でも目立つ性能として採用。逆にジャングルグリーンというボディカラーは隠れる性能を追求したもので、森に溶け込むような色として採用している。インテリアも水平基調として、オフロードでの車体の傾き等を検知しやすい機能の一部としている。

 こうした数々の機能的理由からデザインがなされているジムニー。なのだが、果たして実車を目にすると、ひと目でカワイイ、そして愛着が湧くような、生活の相棒としたくなるような感覚を、誰もが覚えるものとなっている。そして同時にまず機能を追求したデザインであるにもかかわらず、そのスクエアなデザインは現代の様々な叡智が集結した自動車デザインとは明らかに一線を画す独自の魅力を提示している。

筆者撮影
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 実際に、このデザインをみて「欲しい」と感じている方が相当に多いようで、ディーラーにはこれまでのユーザーとは全く異なる層が訪れたり、女性のユーザーがジムニーを見に来るという状況も発生しているという。ようはそれほどに、このデザインが多くの人の興味を惹きつけるものとなっているわけだ。その意味では、自動車においてデザインがいかに重要かを改めて認識させられる好例ともいえる。しかも作り手側は機能を第一としてデザインしており(もちろんある程度は”狙っている”部分もあるだろうが)、そうしたデザインにもかかわらず機能重視以外のユーザーの目を惹きつけるのだから、デザインの力こそが、購入や所有の意欲を生み出す大きな要素であることが証明された形だ。

 この結果、新型ジムニーはこれまでジムニーに乗り継いできたユーザーやアウトドア趣味を持つユーザーといった、正統派の顧客にとどまらず、これまでジムニーとは無縁だった人々の注目を多く集めており、話題となり、人気となっているのである。

 そして実際に試乗してみると、20年ぶりに新型となったことで、ジムニーとしての機能の高さや走破性の高さ、そして使い勝手等はこれまで以上としながらも、現代の自動車として洗練されたフィーリングも忘れていない作りになっており、これは確かにいままでとは違うユーザーも取り込めるプロダクトになっていると筆者も痛感したのだった。その辺りに関しては動画をチェックしていただければ幸いである。

 今回新型ジムニーを実際に試してみて、筆者はこのクルマにある意味ひとつの完成形をみた思いがしたのだった。

 いまや自動車は便利で快適になり、ハイブリッドや電気自動車が当たり前のようになりつつある時代。そして同時に自動車は進化して便利で快適で安全になっている。また同時に価格の幅も広くなり、様々なものが選べる時代になった。そうした中にあってジムニーは、日本特有の軽自動車であり、比較的安価な部類に属すクルマながら、このクルマでしか実現できない固有の機能と、そこから生まれる世界観を有している…他に変えられぬ価値を確かに有した1台として存在していると感じる。

筆者撮影
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 つまり価格の高低を問わず、魅力的で納得かつ満足できる価値を持つという、なかなか実現できない内容を実現した1台といえるのがこのジムニー。なるほどイマドキにあって、多くの人が注目し話題とし人気となっている理由がわかるというものだ。

自動車ジャーナリスト

1970年5月9日茨城県生まれAB型。日大芸術学部文芸学科卒業後、自動車雑誌アルバイトを経てフリーの自動車ジャーナリストに。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。2010年にweb上の自動車部「LOVECARS!」を設立し主宰。Facebook上に「大人の自転車部」を設立し主宰、2万名ものメンバーが参加する。その他YouTubeで独自の動画チャンネル「LOVECARS!TV!」(登録者数24万人)を持つ。昨年大型2輪免許を取得して2輪も勉強中。趣味はスイム、自転車、マラソン、トライアスロン。

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