自分を変えたくても変えられない人は、根本的な間違いに気づいていない
なぜ自分を変えたいのに、なかなか変われないのか?
今の現状を変えたい、自分を変えたい、と願う人がいます。何か明確な目標があるわけではなく、夢があるわけではなく、今の自分ではない「何か新しい自分」に変わりたいと思う人たちです。
そういう人は、「自分が変わる」何かのキッカケを探しています。何かキッカケさえあれば自分は変われるんだと思い込んでいるからです。しかしながら「変わるキッカケ」が突如現れたとしても、そのキッカケをスルーして今の現状に甘んじようとしてしまうのです。
たとえばダイエットしたくても、なかなかダイエットする気になれない。先延ばしの習慣をなくしたいと思っても、なかなか改善することができない。友人は頑張って仕事をしているのに、どうもやる気になれない。取り立ててやりたいことがあるわけでもないし、夢や目標があるわけでもない。何となく過ごしている毎日に変化がほしい。……いろいろな理由で今の自分を変えたいと思っている人がいます。
そういう人に、「このグループに入ったら、必ずいいキッカケをもらえるよ。君も参加したら?」と誰かがアドバイスしたとします。
そのグループのメンバーは、よく知っている人たちで構成されています。とてもいい人たちばかり、グループが集まる場所もすぐ近くにあり、時間的にも問題なく、金銭的コストもかかりません。つまり「参加できない論理的理由」がほとんどないとします。しかし自分を変えることができない人は、たとえ論理的にはそうであったとしても、感覚的に「気が進まない」「その気になれない」という心理が働きます。ですから「作話(さくわ)」をはじめます。断るための理由を作りはじめてしまうのです。
「本当は参加したいけど、面識がない人とはちょっと……」
「君の知っている人しか参加しないよ」
「お金がかかるんでしょう? 最近、経済的にも余裕がなくて」
「お金はいっさいかからないよ。この前も言ったじゃないか」
「そうは言っても最近バタバタしてて、なかなか時間がなくて」
「君がいい時間に、集合時間を合わせるよ」
「そ、そうなんだ……。でも、うーん。とにかく、もう少し考えさせてくれないかな」
……「作話」を続けたあげく、逃げられないと受け止めたら「ちょっと考えさせて」と言うか、「参加しないと言ったら参加しないんだよ!」と逆ギレするかのどちらかを選択するでしょう。
感覚を論理で修正する習慣
人間が人間らしくあるためには――つまり理性のある人間であり続けるためには、感覚を論理で修正することがたびたび必要です。感覚的には「気が進まない」ことでも、「やはり●●だから、やるか」と意思決定するものです。
朝、起きて仕事に行きたくないという感覚を覚えても、そういうわけにはいかない、自分が出社しないと多くの人に迷惑がかかる、周りの人との信頼関係が崩れるという論理で、その感覚を修正するものです。
「そうはいっても、今日も一日、がんばろう!」
このように自分に言い聞かせて立ち上がる人が理性的な人間です。ビールをたくさん飲みたいと思っても、最近飲みすぎているから控えようと思ったり、親の言うことにいちいち従うのはイヤだけど、言っていることは正しいのだから今回は言うことを聞こうと思ったり……。すべて自分が抱いた感覚を論理で修正している末で決断しているのです。
なんでもかんでも自分が抱いた感覚のまま意思決定していたら、人間ではなく獣に近付いてしまうからです。
つまり「自分を変えたい」「本気で変わりたい」と口で言いながら、変わるキッカケが目の前にやってきたとしても拒絶してしまう人は、本当は自分を変えたいと心底考えていないのです。潜在意識の中で、現状を現状のままにしたいと欲求があるのです。これが「現状維持バイアス」です。
「現状維持バイアス」をはずす第一歩
「現状維持バイアス」がかかっている人の特徴はすぐにわかります。
そのことをしても、どうせ変わることないだろうと思えるキッカケは、積極的に掴もうとします。
たとえば「週末に旅行でも行ったら、気分転換になるよ」「この本を読むといいよ。何かいいキッカケが掴めるかも」と言われたら、「そうだね。まずはそれからやってみるよ」と受け入れます。潜在意識の中で、「そんなことをしても、自分が変わることはない」とわかっているからです。だから安心してやってみようと判断します。
しかし先述したような「このグループに参加したら?」という提案をされたら、気分が乗りません。なぜならそのグループに参加したら「本当に自分が変わるかもしれない」と感じるからです。潜在意識の中で「そんなことをしたら、今の自分が変わってしまうかもしれない」とわかっているからです。だから恐怖を感じます。
顕在化された意識の中では、自分を変えたいと認識しています。しかし、そう口で言いながらなかなか変わらない人は、潜在的な意識のもとでは、自分を変えたくない、このまま現状維持のほうが安心すると受け止めているのです。そのことを論理的に知ることが必要です。その事実を正しく知ること、受け入れることが、自分を変える最初のキッカケになるからです。