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「シャンプーハット」、大阪に居続けるワケ

中西正男芸能記者
向かって右がてつじ、左がこいで

関西のテレビで見ない日はない、お笑いコンビ「シャンプーハット」。現在、テレビ・ラジオを合わせて10本以上のレギュラーを持ち、舞台でも大車輪の活躍を見せています。こいでさん(40)は先月行われたピン芸人日本一決定戦「R-1ぐらんぷり2016」で決勝に進出。てつじさん(40)も、プロデュースしたつけ麺店「宮田麺児」が今年2月に再オープンするなど、ここにきてさらに動きが活発になってきましたが、変わらず大阪を拠点にし続けるワケとは?関西屈指の人気者が考える仕事の極意とは?普段、明かすことのない胸の内を語りました。

場所へのこだわりはない

てつじ「最近、2人とも動きがあると言えばありますよね。こいちゃんの『R-1』もそうですし、僕も、つけ麺のお店も再開することになりましたし、グルメ本を出したり。いろいろある中で、東京に行かない理由ですか?いや、別に『東京には絶対に行かないぞ!!』だとか『ずっと大阪でしかやらへんぞ!!』ということはないんです(笑)。本当に、本当に」

こいで「僕らとしては、お仕事はどこででもしたいですけどね」

てつじ「そもそもの話、この世界に入るきっかけが『おもしろいことをしたい』という思いやったんです。『東京に行きたい』と思って入ったワケでは全くないので、考えるのは、どうやったらおもしろいことができるのかということ。逆に言うと、おもしろいことができるのであれば、それが東京でも、北海道でも、どこでも構わないんです。ただ、今は大阪の人が僕らのことをおもしろがってくれて、興味を持って呼んでくれて、僕らがおもしろいと思うことをやらせてくれる。だから、必然的に大阪でお仕事をやらせてもらっていると。要は“場所”ではなく“おもしろいこと”ということなんです」

こいで「『R-1』もそうですし、実際、僕もちょこちょこ東京でお仕事もさせもらってますしね。場所へのこだわりみたいなものはないんです」

趣味が仕事につながっている

てつじ「さらに言うと、僕らは、趣味が仕事になっている部分がすごく多いコンビでもある。こいちゃんの競馬やイラスト、僕のつけ麺だとかグルメだとか。趣味においても、当然、僕らが普段生活している関西が軸になってますから。僕が食べ歩くお店は基本的には関西のお店だし、『宮田麺児』があるのも心斎橋だし、こいちゃんがイラストの個展をするのは難波ですし。仕事と趣味が絡み合っていくという僕らの特徴からしても、大阪にいることがおもしろいお仕事をしやすくすることにつながるんだろうなと」

こいで「確かに、趣味ありきの仕事はたくさんありますもんね」

てつじ「また、趣味も徹底してやっていくと、そこから仕事のエッセンスを得ることもあるんだなと感じています。例えば、僕は食べることが好きで、あらゆる飲食店に行かせてもらっているんですけど、そうすると、あることに気付いたんです。料理の分野は違っても一流の料理人の方は同じことを言うんです。『まず、皿を見る』と。この皿にどんな料理を盛り付けたら映えるかというところから発想を始める人が多いんです。芸人でも、自分が変わった食材になるとか、レアな食材になるということに目が行きがちですけど、僕は『自分は皿になろう』と思ったんです。食材が映える皿に。ま、僕らの同期というのは、とりわけ変わった“食材”が多かったですからね(笑)。余計に、そう思ったのかもしれませんけど」

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同期は変わった“食材”ばかり

こいで「ホンマにね(笑)。『野性爆弾』は2人とも変わってるし、『ブラックマヨネーズ』も特によっさん(吉田)なんて見たことない食材ですし、『チュートリアル』の徳井も、『次長課長』の井上も見た目はシュッとしてますけど、実はメチャメチャ変わり者ですしね」

てつじ「そう言うてるこいちゃん自身が、だいぶと変わってますしね…。だからこそ、自分は皿になろうと思ったんです。それはMCという形でもあるでしょうし、ひな壇的なところにたくさん芸人が集まった時の“交通整理”みたいな役割でもあるでしょうし。『てつじがおったら、より一層、盛り上がる』となったらいいなと。これって、本業の核となる大切な部分だと思うんですけど、まぎれもなく、たくさんお店をまわる中で学んだ考え方やったんです」

こいで「てつじはボケでもないし、ツッコミでもないから、まさに“皿”なんでしょうね。個性的な食材ほど、きちんと処理をして、きちんと料理して並べないと、味が混ざっておいしくなくなってしまいますしね。あと、僕も好きでいろいろやってますけど、今はイラストというのが、本業である漫才に密接に関わってもきたんです」

てつじ「やっぱり、僕らの本業、幹は漫才ですしね」

活動の幹は“漫才”

こいで「漫才で言うと、僕らはまだ大阪の漫才師の大きな目標である『上方漫才大賞』をとれていない。なので、そこを目指して、そこを見据えてネタを作る中で『これは分かる人にはおもしろいかもしれないけど、広く全体にウケるネタではない』と思うネタができることもあるんです。あるいは、言葉だけではなく、目で見える形にした方が映えるというネタもある。それを漫画として描き始めているんです。再利用というか、有効活用というか。ホンマに、つい最近始めたことなんですけど。漫画用になったネタを描き進める中で、逆に漫才で使えるアイデアを思いつくこともありますし、仕事と趣味というのが、こんな風に絡んでいくというのもおもしろいなと感じています」

てつじ「もちろん、どこまでいっても、幹は漫才なんですけどね。漫才があるからこそ、競馬の話もできるし、イラストも描けるし、つけ麺もできるし、グルメ本も出せる。もし、漫才がなかったら『つけ麺があたらなかったらどうしよう…』『本が売れなかったらどうしよう…』『次は何をしよう…』とオロオロするばかりやと思います。でも、そこをドンと構えてやっていられるのは漫才があるから。また、ドンと構えてやっているからこそ、そこから得るものもきちんとある。この相乗効果みたいなものは強く感じますね」

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初の漫才全国ツアーも

こいで「今年は上方漫才大賞を見据えて、夏に初めて漫才の全国ツアーをやるんです。まだ詳細は詰めている段階なんですが、7月18日の大阪・なんばグランド花月公演からスタートして5都市くらいをまわれればなと。これは完全に幹を太くするためのもの。そうなると、さらに、枝葉もつけていけますしね」

てつじ「なんだかんだで、もう20年以上、この仕事をやってきて、次の節目となると30周年。その頃には2人とも50歳を超えてますもんね。ただ、40周年、50周年になっても、こいちゃんはずっと変わってないと思いますし、僕も、ずっと変わらず皿でいられるように頑張りたいなと。ま、一つ心配があるとするならば、70歳になったおじいさんが相方を“こいちゃん”と呼んでいて違和感がないかなとは思いますけど(笑)」

こいで「テレないように、オレも頑張るわ」

■シャンプーハット

1976年2月1日生まれのこいで(本名・小出水直樹)と75年8月7日生まれのてつじ(本名・宮田哲児)が93年コンビ結成。2人とも大阪府出身。高校卒業後、新大阪歯科技工士専門学校で出会い、吉本興業の若手の劇場「心斎橋筋2丁目劇場」のオーディションを経てデビューを果たす。大阪NSC13期生の「野性爆弾」「次長課長」「ブラックマヨネーズ」らが同期にあたる。こいでのボケに対して、てつじが突っ込むのではなく同意するという新たなスタイルを確立し、若手の頃から注目を集める。朝日放送「おはよう朝日土曜日です」「今ちゃんの『実は…』」、関西テレビ「うまンchu」「お笑いワイドショー マルコポロリ!」などレギュラー番組多数。こいでは、趣味のイラストを活かして個展も開催。てつじも、つけ麺店「宮田麺児」のプロデュース、グルメ本「関西グルメ王の人生が変わる店」(発売中)の出版など、趣味を活かした活動を展開している。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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