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カド番の挑戦者・木村一基九段(48)先手相掛かりで積極的な指し回し 王座戦五番勝負第4局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月5日9時。兵庫県神戸市・ホテルオークラ神戸において第69期王座戦五番勝負第4局▲木村一基九段(48歳)-△永瀬拓矢王座(29歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 永瀬王座は昨年に続いて2勝1敗で第4局を迎えました。対局場は同じホテルオークラ神戸です。

 昨年の第4局は201手という大熱戦の末に、挑戦者の久保利明九段が勝っています。

 永瀬王座は昨年、最終的には3勝2敗で王座を防衛しました。

 昨日4日は神戸への移動日。一般的には体力を温存して・・・と考えそうなところです。しかし永瀬王座はなんと、朝から研究会に参加してきたそうです。そのあたりなど、まさに「鬼軍曹」の面目躍如というところでしょう。

 一方、カド番に立たされた木村九段。事前のインタビューで次のように語っていました。

木村「いつもどおり臨めるようには、してきたつもりではいますね。先手ということもありますので、積極的にいけたらいいな、というふうに思います」

 本局の立会人は現役最年長棋士の桐山清澄九段(73歳)。王座戦がまだタイトル戦に昇格する前の1975年、当時の絶対王者であった中原誠現名誉王座と対戦し、2連勝で三番勝負を制するなどの実績もあります。

 現在は多くのタイトル戦で立会人を務めている桐山九段ですが、愛弟子の豊島将之竜王(31歳)が登場するタイトル戦では、その機会はありません。豊島竜王は藤井聡太三冠を挑戦者に迎え、竜王戦七番勝負の防衛戦を戦います。

 午前9時。

桐山「それでは定刻になりましたので、木村挑戦者の先手で始めてください」

 両対局者は「お願いします」と一礼。持ち時間各5時間(チェスクロック方式)の対局が始まりました。

 木村九段、永瀬王座はともに飛車先の歩を伸ばしていきます。戦型は現代最新の相掛かりへと進みました。

 永瀬王座が飛車を8筋から7筋に横移動させて歩を取ったのに対して、木村九段がスキが生じた8筋に歩を打ち、桂を取りにいきます。端1筋の突き合いをのぞけば、先日指されたB級1組順位戦▲藤井三冠-△木村九段戦と同一の進行となりました。順位戦は熱戦の末に、先手藤井三冠の勝ち。木村九段は本局、逆の先手側を持っていることになります。

 33手目。木村九段は三段目に金を上がり、相手の飛車を追いました。▲藤井-△木村戦では木村九段が飛車を切って銀と刺し違え、一気に激しい戦いへと進みました。本局▲木村-△永瀬戦では、永瀬王座はじっと飛車を逃げています。

 39手目。木村九段は桂取りに歩を打ち、駒得をほぼ確実としました。対して永瀬王座は自陣に角を打ちます。ここまでの消費時間は永瀬15分、木村53分。時間の使い方からして、永瀬王座は予定の作戦と思われます。

「もしかしたらすでに永瀬王座の研究にハマってしまったのではないか?」

 そう心配する木村ファンの方もおられるかもしれません。永瀬王座にどれだけの深謀遠慮があるのか、現段階ではまだ不明です。コンピュータ将棋ソフトが示す評価値だけを見れば、形勢はむしろ、わずかに木村九段の方に分があるようです。

 47手目。木村九段は桂を取り、駒得の戦果を得ました。対して48手目、永瀬王座は端9筋の歩を伸ばしていきます。

 昼食休憩は12時10分から。その2分ぐらい前、手番の木村九段が声をかけ、昼食休憩に入りました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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