なぜ久保建英はマジョルカで見せる好パフォーマンスを日本代表で披露できていないのか?
日本代表が、黒星発進した。
カタール・ワールドカップに向けたアジア最終予選の初戦で、日本はホームでオマーンに0−1と敗れた。内容・結果ともにオマーンが優っていたゲームで、まさに完敗だった。
オマーン戦で、久保建英は途中出場だった。
65分からの出場で、ポジションは【4−2−3―1】のトップ下だった。数分前に同様に途中出場していた堂安律と共に流れを変えてくれることを期待したが、そうはならなかった。
久保は今夏、マジョルカへのレンタル移籍を決めている。彼にとっては、2度目のマジョルカでの挑戦だ。ただ、1度目の挑戦よりも早く“主役”の座を射止めている。すでに、ルイス・ガルシア・プラサ監督からすれば貴重な戦力のひとりだ。
今季のマジョルカは【4−2−3―1】を基本布陣としている。そう、日本代表、そして先の東京五輪におけるU−24日本代表と同じ布陣だ。
久保はここまで左サイドハーフ、トップ下、右サイドハーフと複数ポジションで起用されてきた。どのポジションで起用されても、好パフォーマンスを披露していた。
ベティス戦(途中出場/左MF)、アラベス戦(先発/トップ下)、エスパニョール戦(先発/右MF)と、久保はマジョルカに加入してから複数ポジションで起用されている。
攻撃面においては、やはり久保は器用な選手だといえる。戦術理解度が高く、いろいろなポジションでプレーできる。この辺りがラゴ・ジュニオールやアマト・エンディアイエとの差別化につながっているのだろう。
また、久保はサイドに置かれた場合、アップダウンをする。以前に比べて、上下動をするようになった。守備意識は確実に高まっている。ビジャレアルやヘタフェで思った以上に出場機会を得られず、悔しい想いをした。だが、あの日々は無駄ではなかった。
■ナンバー10の役割
そして、マジョルカでは、久保に「ナンバー10」の役割が与えられている。これは久保にも、チームにも恩恵をもたらしている。
マジョルカの中盤はイドゥリス・ババ、サルバ・セビージャ、ダニ・ロドリゲスで構成される。潰し役のババ、展開力でゲームを組み立てるセビージャ、ポジショニングとフリーランで味方を助けるダニ・ロドリゲスが重宝される中で、ファイナルサードで仕事ができる選手がいない。
ルイス・デ・ガラレッタや新戦力のロドリゴ・バッタリアも同様だ。彼らは走力があり、ハードワークを厭わない。ただ、スルーボールやラストパスを前線に供給できるかと言えば、そういったタイプではない。
第2節アラベス戦では、久保はトップ下で起用された。
この夏の移籍市場でマジョルカにレンタル加入したフェル・ニーニョは、フリーランが上手い選手だ。決定力には向上の余地があるが、走り込むニーニョに久保から決定的なパスが出るシーンは、すでに出てきている。ファイナルサードでの仕事が、彼らには求められている。
■森保ジャパンの久保
では、なぜ、久保はマジョルカでのプレーを日本代表で見せられていないのか?
問題は、そこだ。
久保と堂安律のホットラインは日本の武器のひとつだ。左利きの2選手は、右サイドとトップ下に配置され、ポジションを入れ替えながら躍動する。
レフティの久保は、右のハーフスペースでのプレーを得意とする。このポイントを使うのに、堂安の存在は助けになる。堂安がワイドに開いていれば、久保は「壁役」としてハーフスペースに入れる。あるいは、ワン・ツーをするフリをして、自ら前を向いてドリブルを仕掛けられる。
つまり、久保のプレーバリエーションは増える。
本来であれば、それは大きなプラスになるはずなのだ。
だが先日のオマーン戦のように、中央を固く閉じられると、攻撃時にスペースは存在しない。
途中出場で流れを変える。いわゆる「ジョーカー」というのが、現在の日本代表で久保や堂安に与えられている役割だ。ただ、オマーンのように最後まで走り切れるスタミナがあるチームには、久保や堂安の多少のキレやアジリティも意味をなさない。
やはり考えるべきは連動性であり、その時に重要になってくるのがCFだ。大迫勇也である。
(全2673文字)
■CFのタイプと連動性
マジョルカでCFを務めるフェル・ニーニョという選手は、とりわけ上手い選手ではない。しかしながら、よく走り、献身的にスペースメイクをする。そのランニングが、久保やダニ・ロドリゲス、ジョルディ・ムブラの空間確保に役立つ。
この記事は有料です。
誰かに話したくなるサッカー戦術分析のバックナンバーをお申し込みください。
誰かに話したくなるサッカー戦術分析のバックナンバー 2021年9月
税込550円(記事8本)
2021年9月号の有料記事一覧
※すでに購入済みの方はログインしてください。