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本田圭佑のW杯解説がテレビ番組的に大正解、視聴者は試合だけではなく解説者のキャラの違いも楽しむ

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:ロイター/アフロ)

熱戦が続いているサッカーの『FIFA ワールドカップ カタール2022』。11月23日には日本代表が優勝候補のドイツ代表を相手に逆転で勝利を飾り、ファンを興奮させた。

選手たちのプレーや結果はもちろんのこと、今回の『ワールドカップ』でもうひとつの見どころになっているのが、試合中継の解説者陣である。全試合を放送しているABEMAでは、現役選手、元選手が解説者を担当。それぞれが自身のキャラクターを押し出した「喋り」を披露している。

本田圭佑、後輩選手への敬意があらわれていた「さん」付け

特にテレビ番組的に大正解だったと言えるのが、日本代表対ドイツ代表の解説を担当した、元日本代表選手の本田圭佑だろう。

なぜ大正解だったのか。それは、的を射たうえで、リアクションが大きな解説だった部分だ。本田圭佑の解説は視聴者的にもテンションをあげやすい。SNSでついつい投稿したくなるようなコメントも多い。そのため、試合視聴の選択肢がいくつかあるなかで「これだけ話題になっているなら、本田が解説する番組を観てみよう」となる。「見栄えの良い解説」だったのだ。

本田圭佑の解説スタイルは、日本代表の戦術について細かく指摘し、さまざまな選手の名前を挙げながら「自分だったらこうする」と仮説を立て、「その場合はこんな結果になる」という根拠も明らかにするもの。そうやってとにかく喋り続けて、番組の視聴者をフィールドへと近づけていく。日本代表がリードを許しているなかで三苫薫を途中で投入した際、即座にその効果を見抜き、本田圭佑の言葉通りに試合が運んでいったところは実に見事だった。

なによりもすばらしかったのが、各選手のことを「さん」付けで呼んでいたところ。

日本サッカー界のレジェンドである本田圭佑にとって、プレーしている選手たちは後輩ばかり。しかし彼は決して先輩面はしなかった。本田圭佑の「さん」付けは、ワールドカップという世界最高峰の舞台で戦う選手たちへのリスペクトがあらわれていた。視聴者的にも好感度が高かったのではないか。

番組的にもおいしい、本田圭佑のユーモア解説

ユーモアも抜群に光っていた。実況者が、久保建英選手の名前を呼ぶべきところを「(ボールを)キープする本田…」と言い間違えたときには、「いや、僕が(試合に)出た方が良いですか。試合、出ましょうか!」とツッコミをいれて笑わせたところは、番組的にも非常においしい場面だったのではないか。

実況者が、機械によってオフサイドを検出する新技術「半自動オフサイドテクノロジー」について触れると、ド直球に「なんすか、それ?」と質問。そしてドイツ代表が幻の2点目を決めたときに、「テクノロジー発動でしょ!」と覚えたてのワードを叫ぶなど、その無邪気さで視聴者をとりこに。ほかにも、ドイツ代表のアントニオ・リュディガーが、日本代表の浅野拓磨の突破を阻止したプレーで大げさなステップを踏んだことについて「いまのは性格が悪い。バカにしたような走り方をしている」とおかんむりになる一幕も。

本田圭佑語録は数多あるが、解説をつとめたこの1試合だけでそのページ数を大幅に更新したといえる。

宇佐美貴史による「宇佐美の解説」もトレンド入り

写真:西村尚己/アフロスポーツ

「本田圭佑の解説」はSNSでトレンド入りを果たしたが、今大会では、11月22日のメキシコ代表対ポーランド代表の一戦でも、解説者だった宇佐美貴史(ガンバ大阪)の冷静で分かりやすい分析が好評をあつめ、「宇佐美の解説」がトレンド入りしていた。

本田圭佑の解説は監督目線とファン目線の両方を兼ね備えた感覚だったが、宇佐美貴史はまさに選手目線だった。ひとつ言えることは、本田圭佑と宇佐美貴史はカラーが全然違うが、どちらもサッカーのことをあまり知らない視聴者にとっても受け入れやすい語り口だったことである。

本田圭佑と正反対なのが、赤いモヒカンがトレードマークだった元日本代表・戸田和幸。とても真面目な解説で、逸脱することなく戦況をとらえるその視点は、サッカーに詳しければ詳しいほど引き付けるものがあり、通好みの内容だ。

こういった個性的な解説に注目が集まることは、番組的にも大歓迎ではないだろうか。実際にSNSでは、試合のことだけではなく解説者の話題も必ず盛り上がっている。お笑い番組でたとえれば、『M-1グランプリ』で審査員の講評もあわせて楽しむような感覚だ。今後の試合も、解説者たちの「喋り」に注目である。

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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