銀行で投資すると100人に46人が損をしている3つの理由と儲けるために誰でもできる簡単な対策
46%の顧客が投資で損をしているという驚くべきデータが公表された
投資というと勝率はどれくらいだと考えるでしょうか。「何を買うのか」「いつ買ってどれくらい保有するのか」「どの金融機関で買うのか」など影響を及ぼす要素はいろいろありそうですが、なかなかデータがオープンになることはありません。
朝日新聞デジタルで7月5日に配信された記事が話題となっています。なんと46%の人が投資で損をしている、というデータが明らかになったからです。
これだけを見ると「なんだやっぱり投資は儲からないじゃないか」と誤解しそうになりますが、実はこのデータはいくつかのポイントを確認しておく必要があります。
実はこれは6月29日に金融庁が公表した資料が基になっています。もともとは投資信託の販売状況について共通の指標を採用しよう、という取り組みの一環なのですが、銀行29行を対象に金融庁で試算をしたところ、100人中46人が損をしているという驚きのデータが出てきたのです。
「金融庁、投信販売で共通指標を導入 顧客の損益分布など3項目」(Newsweek Japan)
「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIについて」(金融庁)
残念ながら、銀行で投資をする人はうまく儲けられない可能性が高い その理由は3つありそうだ
まず確認しておきますが、この46%という割合は「銀行」を通じて投資をした人が対象です。投資をした人すべて、ではありませんのでご注意ください。
昨今は規制緩和の関係で銀行でも投資ができます。昔は投資と言えば証券会社でしたが、こちらも無店舗型のネット証券が増えており様相も変わっています。郵便局(ゆうちょ銀行)でも投資ができますし、生命保険会社を窓口に投資をすることもできます。
このとき、一般論としていえば投資経験者やベテランは証券会社で投資を行います。直接、個別株を買いたい場合も証券会社を通じて投資をするのが原則です。
だとすると、銀行では「投資未経験者」「投資経験が浅い人」が中心となることが予想されます。そうなると「証券会社で買う投資家」と「銀行で買う投資家」で比べれば、勝率は銀行の顧客のほうが低くならざるをえないように思います。これが「銀行で投資をすると負ける可能性が高くなる理由その1」です。
実際、投資未経験者を相手に苦労してセールストークを積み重ねては投資信託営業をしている銀行の担当者もたくさんいるそうです。
しかし、「客の質が悪い」という言い訳で片付けることができない問題があります。むしろ「銀行の売り方」に問題があるという可能性です。
商品性や売り方をみても、銀行では儲けにくい構図がある
取り扱っている金融商品の商品性や、その売り方を見たとき、銀行経由の投資には下記の特徴(問題点)が指摘されています。
・そもそも金融機関の取り分が高い(理由その2)
・短期的な売り買いをさせられている(理由その3)
・高額販売をさせられている
高額販売というのは、投資をしたことのない小金持ちのおじいさんやおばあさんに対して、いきなり数百万円(あるいはそれ以上)の投資信託購入を提案するというものです。経験に比して購入金額が多すぎるのは問題です。ただ、勝率の問題ではありません。
むしろ問題が大きいのは、ネット証券などと比べて、金融機関の取り分が高い投資信託が多いということです(理由その2)。投資信託は購入時に販売手数料を、運用期間中には運用管理費用(信託報酬)を徴収することができますが、これが割高すぎる例が散見されます。
仮にネット証券で購入時無料(ノーロード)、信託報酬年0.2%で日本株で投資を行う投資信託を購入したとします。ところが、とある地方銀行では、同じ投資エリアについて、購入時に資産の2.16%を取り、かつ運用期間中の手数料は年1.566%としている投資信託を販売しています。
同じ日本株での運用成績でふたつの投資信託は勝負するわけですが、とある地銀の投資信託商品は最初に払った2%分、安い投資信託を上回らなければなりませんし、また毎年1.3%分の手数料の差分も値上がりで上回らなければ負けることになります。
高い手数料は高い運用成績の保障とならないばかりかむしろ運用成績を低くする結果となっている可能性が金融庁の分析でも指摘されています。
そもそも日本株の平均的な利回りについては国の運用ですら年平均2.8%(市場基準ケースの実質利回り。賃金上昇率を勘案した名目では4.7%)を想定しているくらいですから、この「取り分の差」は大きすぎることが分かります。株価があまり変動しなかったとすれば実質マイナスになる可能性もあるほどです。
短期的な売買を促す金融機関は、顧客の利回りを低く落としている可能性が高い
また理由の3つめとして深刻なのは、短期的な売り買いをさせられることです。
儲かれば儲かったで「これを売って、別の投資をしてみましょう」とセールストークをし、損をしているなら損をしているで「今手放してしまって、もう一度やってみましょう」とトークする例があるようです。
金融庁の分析で、顧客の投資信託保有期間と、顧客の元本割れ率を分析してみたところ、明らかに「長期で投資をさせている銀行のほうが、顧客の運用成績は良い」という傾向が出ています。
新しい投資信託をまた買い直しさせ「販売手数料」をもう一度稼ぎ直すことが銀行の利益になるだけでなく、恐ろしいのは回転売買をさせるとせっかく出た利益の20%を税金として国に払ってしまうことです。
一部の銀行は、短期的な売買の提案を控えているのか、顧客の運用成績も高いものとなっています。顧客の保有期間が約4.5年となっているある銀行では、顧客の70%以上が運用でプラスとなっているからです。
私たちにとっては、銀行の提案により短期売買をすることは「いいタイミングをアドバイスされた」と考えない方が良さそうです。
誰かが儲かる商品をあなたに用意してくれると思わないこと
そもそも投資リテラシーが低い顧客が、有利とはいえない投資条件で投資をすれば、勝率は自ずと下がることになります。46%の負け率というのはこうした3つの要素の相乗効果といえそうです。
銀行の投資信託販売担当者は「あなたのお金のパートナー」というよりは「投資信託の販売成績をノルマとして課せられている営業マン」だと思っておいたほうがいいでしょう。少なくとも、「親身になっていい商品を売ってくれるに違いない」という思い込みはしないほうがいいと思います。
あなたがもし投資知識が不足していると考えているなら、2つめと3つめの理由については回避できる方法を考えましょう。つまり「手数料が安い投資信託で買い」「できるだけ長く持つ」のです。
実はそのための「器」が用意されています。つみたてNISAがそれで、手数料の安い商品しか販売できないよう規制(これは良い規制!)をかけ、かつ運用益の売却時に非課税となる措置を最大20年としています。つまり「短期売買すると、その後値上がりした場合、もったいない」という仕組みにすることで短期売買を提案しにくくしているのです。
実は銀行でもつみたてNISAを提供しているところが多くあります。あなたがもし銀行で投資をするなら「つみたてNISA」にしておきましょう。
もちろん、投資の本をあと数冊だけ読んで、ネット証券で勝負してもいいと思います。
「よく分からないうちに46%の負け組になっていた」という悲しい投資家にならないようにしたいものです。