【クラブに入った方が速く走れる?】マラソン参加者20万人のデータで分かったクラブに参加するメリット
皆さんの周りにはランニングクラブはありますか?昔はその土地ごとに走友会やランニングクラブがあり、今はSNSの中で多数のランニングコミュニティが形成されています。ランニングの魅力のひとつに一人でも練習できることがあります。それなのに団体に所属する意義はあるのでしょうか。そこで今年7月に公開された、フルマラソンに参加したランナーを調べた文献をみてみましょう。
ロンドンマラソンを調べた文献より
調べられたのは2018~2023年のロンドンマラソンに参加した、計20万6653人のランナーです。そのうち約30%のランナーがクラブに加入していて、そのクラブに加入しているランナーと、加入していないランナーの完走タイムを比較しています。
結果は男女のすべての年代で、クラブに参加しているランナーの方が速かったようです。そしてこの結果を「Smells like team spirit」、訳すと「クラブ魂を感じる」と、この文献のタイトルで表現しています。とくに若い男性の場合、クラブのサポートとリソースを得ることで最大40分の記録短縮という大きな効果が得られるのです。
もともとマラソンは個人競技ですが、クラブに加入すると仲間とともに努力し協力しあうことができます。またマラソンのモチベーション(動機)も向上して、記録が伸びる可能性があるのです。
マラソンの動機とは?
1993年にMastersらの文献よるとマラソンの動機について、4つのカテゴリーにわけて説明しています。そしてその動機を測定する手法として、Motivation of Marathon Scales、略してMOMSというスケールを提唱しています。以降の文献では広くこの手法を用いて、マラソンの動機について調べられています。
例えば2017年のアテネクラシックマラソンの完走者について調べた研究では、タイムが良かったランナーは(4)の達成動機のポイントが高かったと結論づけています。またマラソン完走者とマラソン未経験者を比較したポーランドの研究では、動機に違いが見られなかったとの報告もあります。ランナーと動機についての研究の多くは、このスケールで評価検討しています。
ランナーがクラブに入ることは、特に(2)そして(4)の動機が強くなるのではないでしょうか。動機が強くなれば強度の高い練習を乗り越える原動力になり、そしてランニングを長く続けることができるようになるのです。
ランニングクラブに入るデメリット
気を付けなければいけないのは、冒頭にあげた文献はランニングクラブに入っているランナーと入っていないランナーを比較したものです。そもそも速い人はランニングクラブに誘われるし、気後れせずに入りやすいというだけかもしれません。そしてまた、ランニングクラブに参加することがメリットしかないわけではありません。会費や参加費がかかったり、練習会に時間や場所を合わせないといけなかったり、そもそも相性の合わない仲間がいるかもしれません。
ランニングは個人競技ならではの自由さがあります。個人で自由に走るのか、仲間とともに速さや楽しさを追求するのか、考えて決めるのがよいでしょう。