穴があったら入りたい!将来の月面基地候補、月の縦孔探査計画「UZUME」
皆さんは将来の月面基地についてどんな姿をイメージしていますか?SF作品に出てくる研究所のような建物や、はたまたドームのような形状かもしれません。本記事では、月面基地として注目されている「縦孔」と、その探査計画「UZUME」をご紹介していきます。
■日本の探査機が世界で初めて発見した「月の縦孔」
皆さんは月で発見された縦穴をご存知ですか?2007年に打ち上げられた月周回衛星「かぐや」が観測した月面地形データの中に、世界で初めて縦穴が発見されました。実は、地球にも様々な場所で溶岩チューブと呼ばれる孔は多数見つかっています。例えば、孔が見つかっている富士山などは玄武岩質の溶岩であり、月の海も同じ性質の溶岩で形成されているのです。これは、溶岩チューブが形成された後に、天井が崩落してできたものと考えられています。
■縦孔を探査する「UZUME計画」
現在JAXAでは、縦孔を探査する「UZUME」計画が検討されています。「かぐや」が発見した縦孔は複数ありますが、その中で最も大きい「静かの海」にある縦孔も探査候補の一つです。UZUME計画で打ち上げられる探査機は、幅が100mほどの孔に慎重に入っていきます。その間に、孔の大きさや壁の状態などを調査します。
一方で、孔の中に探査機が入っていくのはリスクが高いとのことで、他の探査方式も並行して検討が進められています。例えば、探査機が月を周回している最中に、または、縦孔の近くに着陸した後、探査機から小型ロボットを放出・縦孔の中に投下させます。小型ロボットは縦孔の中を探査し、その結果を探査機へ中継通信します。
それでは、その探査計画の実現性はどうなのでしょうか。まず、幅100mの縦孔への着陸については、SLIMのピンポイント着陸技術を活用すれば実現の可能性は高いと考えられます。2024年1月20日に月面着陸に成功したSLIMは、月面の目標地点に対して55mの精度で着陸ができたとの発表もあります、素晴らしい成果ですね。
更に、SLIMは二つの小型ロボットの放出にも成功しています。「SORA-Q」は、月面での探査を予定通り開始し、SLIMの着陸後の画像を撮影することにも見事成功しています。これは、世界で最小、最軽量の月面探査ロボットという快挙を成し遂げたのです。
■将来は縦孔が月面基地になるかも?
縦孔の調査は、月や地球の進化をたどる上で重要な手がかりになります。しかし、科学的な成果のみならず、将来の月面基地として活用できる可能性が高いのです。まず、皆さんもご存知の通り、月面で活動するには宇宙服が必須です。これは、月面に空気がないことに加え、様々な理由があります。
まずは、放射線の影響です。地球は内部のコアが発生する磁場により、宇宙から降り注ぐ放射線から地球表面の生物を守る役割を果たしています。しかし、月面は既に冷えて固まっており、放射線を直接浴びることになるのです。もう一点は急激な温度変化です。月面は最高温度が110度、最低温度はマイナス170度と、人間が生身で耐えられる環境ではありません。そのため、宇宙服は必須となるのです。
しかし、縦孔の中は放射線から守られることができ、温度もほぼ一定という利点ががます。すなわち、人間が月面で活動する際に、縦孔は最も適した環境なのです。もしかすると、UZUMEが探索した縦穴が将来の月基地に選ばれるかもしれませんね。
【関連動画】
【関連記事】