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menuデリバリーの報酬をau PAYで受け取り可能に。「給与のデジタル払い」との違いは?

山口健太ITジャーナリスト
menuの報酬がau PAYで受け取り可能に(プレスリリースより、筆者撮影)

5月16日、フードデリバリー「menu」の配達員が報酬をau PAYで受け取れるサービスが始まりました。「給与のデジタル払い」はまだ解禁されていませんが、違いはどこにあるのでしょうか。

au PAYで毎日報酬を受け取れる

労働者に賃金を支払う方法は労働基準法で定められており、いまのところ電子マネーなどは認められていません。この制限を取り払う「給与のデジタル払い」はまだ議論の途中です。

これに対して、個人事業主やフリーランスなど雇用契約に基づかない業務委託であればその限りではなく、すでに電子マネーなどさまざまなデジタル手段への対応が進んでいます。

menuの場合は、飲食店と配達員が業務委託契約を結ぶ形となっており、両者をマッチングしているのがmenuという建て付けです。配達員は個人事業主であり、「社員としての雇用契約に基づく給与支払いではないため、給与のデジタル払いには該当しません」(KDDI広報)としています。

配達員は業務を引き受けるかどうか自分で決められるので、好きなときに働ける一方、好きなときに報酬を受け取りたいとのニーズがあります。その場合、銀行への振込手数料を誰が負担するのかが問題になりがちでした。

menuの報酬を受け取る際の「即時引き出しプログラム」では、月に5回以上または2万円未満を出金する場合には400円の手数料がかかっていました。2021年12月には「Kyash」と連携し、この手数料が50円に下がりました。

そして今回、au PAYを利用することで、出金手数料無料で24時間365日の報酬受け取りが実現しています。報酬受け取りの回数に制限はなく、毎日無料で受け取ることも可能とのことです。

au PAYで報酬を受け取れる(プレスリリースより)
au PAYで報酬を受け取れる(プレスリリースより)

KDDIとmenuは2021年6月に資本業務提携をしており、すでにデリバリーの利用者向けにはau PAYによる支払いや、au PAYのミニアプリとの連携が実現しています。

法人から個人への送金にあたっては、auペイメントの法人向けサービス「Bチャージ」を利用しているとのこと。au PAYへのチャージは今回が初めてのサービス提供としています。

auじぶん銀行への「自動払出」は手数料無料

au PAYで受け取った報酬は、au PAYの残高として使っていくことになります。これを銀行口座に移すことはできるのでしょうか。

給与デジタル払いの議論においても、銀行口座への出金ができるかどうか、またその際の手数料についても注目が集まっています。

まず、au PAYの残高には2つの種類あり、銀行口座への払い出しができるものとできないものがあります。menuの報酬については「払い出し可能」な残高とのことです。

次に、au PAY残高の払い出しができるのは「auじぶん銀行」のみです。手動での払い出しには、「2万円以上の場合は払出額の1%(税別)」などの手数料がかかります。しかし「自動払出」サービスを使えば手数料は無料になります。

自動払出では、金額と頻度を指定してau PAYの残高をauじぶん銀行の口座に払い出せるサービスです。毎月一定の金額をau PAYにチャージして使い、余った残高を貯金するなどのやりくりを想定した機能ですが、デリバリー報酬との相性は良さそうです。

やや残念なのは、払い出しがauじぶん銀行のみという点でしょう。メインの口座が別にある場合、大きな報酬の受け取りには従来の銀行振込を使いつつ、細かな受け取りにau PAYを使う、といった使い分けが考えられます。

au PAY、Kyash、銀行振込の使い分けが可能に(プレスリリースより)
au PAY、Kyash、銀行振込の使い分けが可能に(プレスリリースより)

銀行振込か電子マネーかといった二者択一ではなく、受け取る側が都合に合わせて手段を選べることは給与のデジタル払いにおいてもメリットとされています。menuとau PAYの連携はそれを一足先に実現したものといえそうです。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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