【英会話】じゃあ、なに買うの? ってきいたら、買うなんて言ってないよ と言われた。なんで?
英語を仕事で話し始めて20年ほどになりますが、初めのころは、もともと英語が得意でなかったせいで、Native English Speakerの言ってることを正反対に理解したりして、よく彼らを困らせました。しかもその原因がリスニング力不足じゃないので、病は篤(あつ)い。困ったものでした。
そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は読むと大失敗を避けられるお得なエッセイです。
新しいゲームを買うよ
類は友を呼ぶと言いますが、これはNative English Speakerと我々Native Japanese Speakerも同じで、フットボール好きの私の周りにはfootball好きのNative English Speakerが集まっています。その中でも、熱狂的なスカウサー(リヴァプール在住の人、転じてリヴァプールFCのサポーター)でPete というやつがいまして、彼と初めて会った頃、ちょっと困らせたことがあります。
その頃はリヴァプールがあまり強くなかったんです。で、週の始まりはPete の愚痴を聞くことがルーティンになっていたんですが(週末にリヴァプールが負けるんで、そうなります)、あるとき、Pete、達観したように脂の抜けた顔でこう言ってきた。
おれも大人になったよ。何とか自分で自分の機嫌を直した。もう大丈夫。
まぁ、私としてもPete の愚痴を聞いてるばかりが仕事じゃないですから、そりゃよかったとほっとしてたんですが、問題は次の一言でして。
"I would get a new video game."
Pete君、スカウサーでもあり、ゲームオタクでもあったんで、ああ、新しいゲームを買うでしょう ってことねと私は理解。憂さ晴らしにゲームを買うんじゃ大人になってねぇじゃん、というツッコミはおいといて、
"What do you think you will get?" (なに買おうと思ってんの?)
って質問すると、Pete のやつ怪訝な顔して、一言。
"No, I'll get nothing." (いや、買うつもりないよ)
今度は私が怪訝な顔をする番です。お前、さっき買うつもりって言ったじゃん というと、いや言ってないよ と返ってくる。
どうしてこういう押し問答になったか、みなさん、お気づきでしょうか?
問題は、私のwould の理解にあります。私は"I would get a new video game." を「新しいゲームを買うでしょう」とwould を丁寧な意思表示と理解したんですが、違うんです。もちろん、この文単独では、そう理解してもいいんですが、その前にPeteは「何とか自分で自分の機嫌を直した」と言っています。つまり、新しいゲームを買って憂さ晴らしする必要はない という前振りがあるんです。そこで出て来たwould ですから、ここは仮定法のwould と解釈しなければならない。仮定法というのは、現実の反対の文言を使って感情をあらわす言い方なので、I would get a new video game. 訳文としては、
新しいゲームを買うところだよ(でも本当は買ってない)。
ぐらいになります。
結局、話しているうちに、Pete がああ、if not (もしそうでないなら)を補った方がよかったね、と言ってくれて落着したんですが、仮定法は要注意だなと思い知らされた一件でした。
Native English Speakerと会話しているとき、would, could, should という助動詞が出て来ることがよくあります。そのときは、話の内容が現実とイコールなのか? それとも反対なのか? に注意してください。反対なら仮定法です。
would なら~するところだよ(でも、やらない)、
could なら~できるのに(でも、できない)、
should なら~すべきなのに(でも、しない)
ということです。そこに気を配れば、感情を込めた仮定法をぱっと理解して、気の利いたことを言い返せますよ。
そうですね、ちょっとは英語が話せるようになった今なら、Peteにどういいましょうか?
If I were you, I would treat myself to a new video game. (おれがもし君なら、(大人になった)自分へのご褒美に新しいゲーム買うと思うね)
ぐらいかな。悪魔の誘惑ですね。
と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。
お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。
イラスト 大橋啓子