【英会話】don't understand. Me, either と言ったら目をぱちくり なんで?
仕事で英語を20年ほど話していますが、話し始めたころに思ったのは、自分と他人を厳密に区別する言語だな ということでした。
こういうのは、人から言われたことを他の人に伝えるときに顕著で、たとえば、
「あいつ、おれになに言ったの? ちょっと聞き逃しちゃった」
と言われて、
「彼は、わたしに連絡くださいって言ってましたよ」
というのは日本語として自然ですが、これを英語にするときに、
"He asked you to get in touch with me."
としてしまったら大惨事です。なに言ったの? って訊いてきた人は「わたし」(=答えている人)に連絡をよこしちゃう。
日本語の「彼は、わたしに連絡くださいって言ってましたよ」のなかの「わたし」は「彼」を指しているわけですが、これは話し手の立ち位置が、簡単に変わることを示している。自分と他人があいまいなんです。
それに対して、英語では、me はあくまで私を指します。get in touch with me のme は話し手です。なので、訊いてきた人は「わたしに」連絡をよこしちゃうわけです。もちろん、ここは、me ではなく、him にしないと伝わりません。自分と他人の区別が厳しいんです。
こういう自分は自分、他人は他人という感覚は、現代思想(哲学)なんかを修めた人間にとってはなじみ深いんでそんなに困ったことはなかったんですが、この間のこと、ちょっと失敗しました。してやられたって感じです。
そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は読むと英語を話すときのコツを得られるお得なエッセイです。
まぁ、おれもだけどね。
この間のことですが、English man の友人のRichが、生徒さんに、なんで欧米人はそんなに欲深いんですか? って訊(き)かれて閉口したよ という話を振ってきました。欧米の大富豪という人たちが一生かかっても使い切れない程のお金を稼いでいるのにさらにまた儲けようとするのが不思議だったようです、その生徒さん。
まぁ、ちょっと答えにくい質問ですが、Richが閉口したのは答えを思いつかなかったわけじゃなくて、どこから説明しようか迷ったから。欧米で通奏低音になっている「万物(タ・パンタ)を利用して理想にいたる」という哲学の話から話していいのかという迷いです。私はそれを聞いて、
Most Japanese people don't understand philosophy. (日本人の多くは哲学を理解してないからねぇ)
こう言ったんですが、言った途端にちょっと恥ずかしくなる。なんだか自分が哲学を完全に理解してるみたいじゃないですか。なんと傲慢な。で、慌てて、こう付け加えた。
Oh! Me, either.(あ、おれもだけどね)
そしたら、Rich、目をぱちくり。なんで、そこで、Me, either. なの? って言って来た。
みなさん、なんで、Richが驚いたか、お判りになるでしょうか?
なにも私が哲学を完全に理解してる筈なのにそれを否定したから、というわけではありません。残念ながら。
問題は、付け加えで、わたしが、Me, either. を使ったことにあります。
either というのは、二つのうちのどちらか一方というのがもともとのイメージです。そして、前文の否定を受けて、残ったもう一方も否定だよ という意味で、Me, either. (残った私も~ないよ)ということになります(肯定文を受けるときは、Me, too. ですね)。
これは重々承知していたんですが、裏の意味まではあんまり意識していなかった。残った私も というわけですから、相手が必要なんですね。誰かが言った否定文に対して、乗っからないといけない。自分で言ったことに乗っかるのは、残った私に ならないんです。何かを言った自分を他人視して、乗っかるのはダメ。自分は自分。なので、使えないんです。
でも、日本人の多くは哲学を理解してないからねぇ って発言は恥ずかしい。どうやって、おれもだけど と付け加えればいいのか? とRichに訊くと、そのグループに入るってことでしょ? とヒントをくれる。
ああ、そういうことかと、
Including myself.(おれも含めてだけど)
と私がいうと、Richはサムアップ。自然な英語だと褒められました。
このあたりの常に自分は自分だという感覚は、ふわっと他人になったり、自分に戻ったりできる日本語の感覚とはまるで違っていて、Native English Speakerが自己主張を上手くできる理由だと思います。英会話はやってみたいけど、Native English Speakerの自己主張の強さに負けそう~と思っている方、自分は自分、他人は他人という感覚を意識すると結構うまくいきますよ。ぜひ、チャレンジしてみてください。
と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。 お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。
イラスト 大橋啓子