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【英会話】It depends on artists って言ったら、首を振られた なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 20年ほど仕事で英語を話していますが、今でも迷うことがあるのは単語の単数形、複数形の判断です。日本語とイメージが違う単語があるんで、憶えておく必要があるんですよねぇ。

 advice なんて助言という意味はみなさん知ってらっしゃると思うんですが、これ、数えるか、数えないか、まで知ってらっしゃるでしょうか?
 答えは数えない。
 なんかNative Japanese Speakerの我々としては数えそうですけど、英語では数えないんです。advice はここからここまでって決められない言葉のカタマリという風に私はイメージしています。あ、ちなみに、彼は一つの助言をくれた と言いたい場合は、He gave me a piece(word) of advice. みたいに使います。

 そういう個別のイメージで迷うことはよくあるんで、そのたびに辞書で確認してイメージを作っておくんですが、このあいだ複数形そのもののイメージがちょっとずれていると気付いて、はっとさせられました。

 今回は読むと英語の単数形・複数形のイメージをはっきり掴むことができるお得なエッセイです。

描き手によるよ

 ちょっと前のことですが、仕事の合間の雑談で、ガンダムで有名なマンガ家の安彦良和さんの話をRichが振ってきました。この男、ビデオゲーム・オタクなんですが、日本のアニメとかには興味がないんで、へ~めずらしいこともあるもんだと、わたしも前のめりになる。自分の得意分野に入って来てもらうと、いろいろ知ってるねぇ って褒めてもらえますからねぇ。ここは逃せない。典型的なオタク心理です。

 なんでもたまたまテレビで、安彦良和さんがマンガを描いているのを観たんだそうです。それが凄かったとびっくりしている。どう凄かったかというと、安彦さんは簡単な下書きだけで、一発でコマに絵を描いていくのだとか、しかもそれが超絶にうまい。ひとしきり褒めちぎったRichが、最後に日本のマンガ家ってすごいねぇ、みんなあんな風にぱっと描けちゃうのかな? って訊(き)いてきた。

 いやいや、安彦良和は天才だから特別だよと思ったんですが、そういう天才はほかにもいそうなんで、一応こう返した。

It depends on artists. (描き手によるよ)YASUHIKO Yoshikazu is a special one. (安彦良和は特別だけど)

 そしたら、Rich、さらっと首を振る。
 みなさん、わたしの英語、どこがおかしいか気づかれたでしょうか?

 問題は、artist が複数形になっている点にあります。artist は数えられるんで複数形になっているのは問題ないんですが、問題はその指し示すものです。

 私がイメージしたのは、いろんなマンガ家たちのことです。なので、複数形にしたんですが、ちょっと突っ込みが甘いと私も気づく。
 複数形ってことはグループ全体をあらわしているってことです。ここで言えばマンガ家という人々全体をあらわすことになる。なので、It depends on artists. は マンガ家集団次第だ という意味になっちゃうんです。

 それじゃ変なんで、Richはさらっと首を振った。何人もいるから、複数形を使えばいいや という甘い判断に足元をすくわれてしまいました。二人(二つ)以上の集団全体(個別のひと(もの)はぼやけている)をイメージしたときに複数形を使うと判断基準を修正です。

 じゃあ、わたしがイメージしたいろんなマンガ家たち はどう英語にすればいいのかですが、ちょっと考えます。
 いろんなマンガ家たちがいても、それをまとめたいわけじゃない、個別のマンガ家の顔が見えてる。それならば、単数形です。そして、それぞれにスポットライトを当てたいので、the をつかう。

 ちょっと時間はかかりましたが、

It depends on the artist.

と言いなおすと、Richはサムアップ。the の使い方はよく知ってるのに、めずらしいところで引っ掛かったねと褒められてるんだか、貶(けな)されてるんだかわからないことを言われました。複数形、奥が深いですねぇ。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ日本語を英語にする方法で英文法をマスター。その実績を買われて英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職し活躍する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任。Native English Speakerのマネージメントを経験し、日本人とは違った価値観や思考法に振り回されるという経験を多々する。現在は独立し、英会話スキルだけではなく、Native English Speakerとうまく交渉できるスキル習得を目指した英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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