福島ロボットテストフィールド一部開所~南相馬市や浪江町に大規模整備
ドローン飛行のための通信塔が先行完成
2018年7月20日、福島県南相馬市の沿岸部を中心に整備が進む「福島ロボットテストフィールド」の一部が開所した。「福島イノベーション・コースト構想」に基づき、福島県、南相馬市、浪江町、経済産業省及び国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が取り組むプロジェクトだ。このたび、他の施設に先駆けて、ドローン飛行時の長距離通信の確保等を支える複数の「通信塔」が完成したことから、一部開所が実現した。福島県南相馬市と浪江町の間13キロメートルを広域飛行区域として、試験飛行などができるようになる。
ロボットのまち南相馬
南相馬市では、ドローンによる無人配達の実証実験、子どものドローン操縦体験などまちを挙げて市民がロボットに親しむ環境を築いてきた。2017年5月に策定した「南相馬ロボット振興ビジョン」では以下の7の柱が掲げられている。人材輩出が1番最初に来ていることに、人を大切にするという南相馬市復興の願いが込められているように思う。将来は地元から世界最先端の技術を担う人材が輩出されることを切に願う。
1.ロボット人材輩出のまち
2.ロボット技術革新のまち
3.ロボット産業集積のまち
4.ロボットベンチャー輩出のまち
5.日本の競争力の源泉、ロボット教育先進のまち
6.世界一ロボットの実証実験・チャレンジがしやすく、ロボットが日常に溶け混んだまち
7.ロボットを活用したツーリズム・スポーツのフロンティア
福島ロボットテストフィールドのいま
一部開所の2日前となる7月18日、内閣府原子力災害対策本部原子力被災者支援チームのメンバーとともに、南相馬市に整備中の福島ロボットテストフィールドを訪れた。1年ぶりの福島県沿岸部だったが、沿岸部に目をやれば、白く光る大きな防波堤が完成していたのも大きな変化だったように思う。また、福島第一原子力発電所直下の双葉町の工業団地造成地、同じく大熊町の復興拠点造成地などで大型重機やクレーンが稼働している現場は、新鮮な光景だった。
2020年までに本部棟の建設をはじめ、全体に「飛行場」「試験用橋梁」「試験用トンネル」「試験用プラント」「市街地フィールド」「屋内水槽試験棟」「水没市街地フィールド」などが順次整備される。隣接した復興工業団地(12ha)には工場の誘致も進められており、迅速な開発と実証の相乗効果も期待されている。災害・事故救助ロボットや原子力発電所での作業ロボットなどが開発される可能性もある。2020年夏には、この地でワールド・ロボット・サミットが開かれ、世界中のロボットが競演する予定だ。
南相馬市や福島沿岸部に生まれる新たな人の流れ
現地で解説をしていただいた南相馬市の方や、同行した内閣府・経済産業省のメンバーらと意見交換してみると、最先端技術をもつ企業や研究者に付随した人・モノの流れ以上のものをつくることが課題とのことであった。南相馬市としては、国民のだれもが訪れることができる環境を目指すことに意欲的だ。先行して研究が進められるドローンは、子供から大人まで非常に人気のあるコンテンツ。操縦体験を通じて福島ロボットテストフィールドの存在を南相馬市が一体となって啓発できる。将来的にはドローン操縦士のみならず、より高度なロボット操縦を担う人材の供給スポットとしての役割を果たす日も来るのではないだろうか。福島ロボットテストフィールドは、専門分野の最先端企業だけの施設ではなく、子供から大人まで誰でも訪れることができる施設となってこそ、より確実に地域経済や教育に貢献できるようになるだろう。
南相馬市の担当者は「東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故により、この地域は大きなダメージを受けた。今、世界中の多くの人々の支援・協力の下、復興に向けて一歩ずつ進んでいる。感謝の気持ちは忘れない。災害を経験したこの地域だからこそ出来るチャレンジがあるのではないか。例えば、震災時にドローン等のフィールドロボットがあれば、迅速な情報収集や、取り残されてしまった人達を一人でも多く、一瞬でも早く救出できたのではないか。この地域で人の役に立つロボット等を生み出すことができれば、世界への恩返しになる。この地を、未来を担う人材の育成拠点、第四次産業革命・イノベーション拠点にすべく、同じ志を持つ人々と連携し、取り組みを進めたい。」と福島ロボットテストフィールドを拠点とした福島の将来を語る。