「お客様のなかに、お医者様はいらっしゃいませんか?」のアナウンス。飛行機に医師が乗ってる確率は?
こんにちは、空想科学研究所の柳田理科雄です。
マンガやアニメ、特撮番組などを、空想科学の視点から、楽しく考察しています。
さて、今回の研究レポートは……。
飛行機に乗っていると、客室乗務員からのアナウンス。
「お客さまのなかに、お医者さまはいらっしゃいませんか?」
テレビドラマなどには、しばしば出てくるシーンだ。
もちろんこれは、実際にもあり得ることだ。
筆者の友人の医師も、飛行機のなかで「お医者さまはいらっしゃいませんか?」と聞かれて、名乗り出たことがあるという。
筆者も機内で一度聞いたことがあり、「本当にあるのだなあ」と思ったものだ。
しかし考えてみれば、当然である。
人間、飛行機に乗っているときに具合が悪くなることだってあるだろう。
そう思えば、ぜひとも考えておきたい。
実際のところ、医師が飛行機に乗っている確率はどのくらいなのだろうか?
◆日本に医師は何人いる?
厚生労働省の調査によれば、日本の医師の人数は、33万9623人(2020年)。
同年の日本人口は1億2570万8382人だから「国民の370人に1人は医師」ということになる。
一方、飛行機の乗客数は?
世界で1千機が使われてきた「ボーイング787」の定員は210~300人。
そこで、250人が乗っている飛行機を想定し、そこに医師が1人以上乗っている確率を計算してみよう。
こういう場合は「1人の乗客が医師ではない確率」から考える。
最初の1人が「医師ではない確率」は、370分の369。次の人が「医師でない確率」も、370分の369。その次の人も、370分の369……。(※注)
このような現象が連続して起こる確率は、個々の確率をすべてかけたものになる。
そして、それを1から引くと「医師が1人以上乗っている確率」となる。
計算してみると、49.15%。
おおっ、ほぼ2分の1。意外と乗ってるもんですなあ。
同じように考えて、他の職業の人が乗っている確率を求めよう(人数はいずれも2020年)。
歯医者さんは日本に10万7443人いるから、ボーイング787に乗っている確率は19.25%。
小学校の先生は42万2554人だから、乗っている確率は56.91%。
美容師さんは53万3814人いて、確率は65.49%。
どうしても飛行機のなかで髪をきれいにしたかったら、なんとかなるかも……。
医師に話を戻せば、飛行機が大きくなり、客の数が増えるほど、その確率は上がる。
550人乗りのジャンボジェットなら、医師が乗ってる確率はなんと77.42%だ。
ただし、これは「医師の乗っている確率」であって、何科の医師なのかまではわからない。
医師は法律上、専門にかかわらずどんな診療もできることになっているので、何科のお医者さんでも、とりあえずの処置はやってもらえるはずだ。
ところで、冒頭で記した筆者の友人は内科医だが、そのときの患者の症状は何だったのだろう?
聞いてみたところ、なんとそれは「酔っ払い」。
飛行機に乗っているときに、酒酔いで呼ばれるお医者さんも大変である。
(※注)日本人口のうち、医師でない人の人数は、1億2570万8382-33万9623=1億2536万8759人なので、厳密には、1人目が医師でない確率は「1億2570万8382分の1億2536万8759」、2人目が医師でない確率は、分子も分母も1人ずつ減って、「1億2570万8381分の1億2536万8758」となるが、このように分母と分子にほとんど差がなく、繰り返しの回数(=乗客数)も少ない場合は、「最初に四捨五入した確率のまま一定」としても、結果に差は出ない。