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都市対抗野球を終えた、元阪神タイガースの2人 「次は大阪で!」

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
阪神OBの玉置投手(左)と阪口選手(右)。秋に京セラドームで再会しましょう!

 7月14日から東京ドームで開催されていた社会人の『第88回 都市対抗野球』は25日、NTT東日本(東京都)と日本通運(さいたま市)の決勝が行われ、NTT東日本が10対4で勝って36年ぶり2回目の日本一になりました。 元阪神タイガースの選手たちも出場していた今大会、パナソニック(梶原康司監督、阪口哲也選手)は2回戦で、新日鐵住金鹿島(玉置隆投手)、三菱重工神戸・高砂(若竹竜士投手)は1回戦で敗退という結果です。

 そういえばパナソニックの2回戦の相手・日本通運は、1回戦で三菱重工広島に勝っていました。三菱重工広島の町田公二郎監督も、元阪神ですね。また2回戦でJR西日本に敗れたセガサミーにも、元阪神の前田忠節コーチが在籍しています。そして榎田大樹投手の弟・宏樹投手が先発した日本新薬は1回戦で東芝に負けました。江越大賀選手の弟・海地選手の三菱日立パワーシステムズはベスト4まで進むも、準決勝で日本通運の前に涙を飲んでいます。

◆まさかの1回途中降板…

ことし88回目、伝統ある大会です。
ことし88回目、伝統ある大会です。

 玉置隆投手が所属する鹿島市・新日鉄住金鹿島は、1回戦最後の試合となった7月19日の第3試合で登場。相手は大垣市・西濃運輸です。新日鉄住金鹿島の先発はもちろん玉置投手で、西濃運輸はルーキーの堀田晃投手(大阪学院大)でした。

7月19日 第3試合・1回戦

新日鐵住金鹿島-西濃運輸

 (鹿嶋市)    (大垣市)

 鹿島 000 041 000 = 5

 西濃 500 100 00X = 6

 1回表の新日鐵住金鹿島の攻撃は三者凡退。5分足らずで終わってしまい、その裏に登板した玉置投手は先頭から四球、犠打、四球で1死一、二塁として、4番・谷選手のタイムリー(中前へ抜けそうな打球にショートが飛びつきグラブに当てるも、これで方向が右中間に変わった…)で、先に1点を失います。なおも1死一、三塁で5番・阪本選手に左翼線へのタイムリー二塁打。1死二、三塁となって6番・伊藤選手にはレフトスタンドへ特大の3ランを浴びました。

これは昨年の都市対抗1回戦での玉置投手です。
これは昨年の都市対抗1回戦での玉置投手です。

 2死後に四球を与えたところで交代が告げられ、あとはSUBARUから補強の高橋投手に託してマウンドを降りた玉置投手。試合開始25分、初球を投じてから18分でのことです。高橋投手が次を右飛に打ち取って1回終了。玉置投手は0回2/3で8人に42球、安打3、三振0、四球3、5失点という内容です。

 そのあと4回に1点追加されて6対0となりますが、5回に猛反撃を見せた打線。まず先頭の4番・林稔幸選手(SUBARUからの補強。SUBARU16年目、不動の4番。ジャパンでも4番を打った37歳)がレフトへソロ! 1死後に福森選手が左前打し、佐藤選手はセンターへの二塁打で1死二、三塁。続く8番・片葺選手がレフトとセンターとショートの間に落とすタイムリー二塁打!ここで西濃運輸の投手が交代します。

 なおも1死二、三塁で9番・渡部選手が中前タイムリー。一、三塁として1番・藤本選手は浅めの中飛だったものの、三塁から好スタートした片葺選手が生還!一塁の渡部選手も二塁へナイスラン。最後は右飛で打者8人の攻撃が終了。この回4点を還し、2点差に迫りました。6回にも連続四球などで2死一、三塁として、相手投手の暴投で1点。6対5とした新日鐵住金鹿島。

 その後は追加点を与えなかった投手陣ですが、打線もあと1点を奪えず…そのまま終わっています。

「間違いなく僕のせいで負けた」

昨年、自身初の都市対抗本大会に出場しました。
昨年、自身初の都市対抗本大会に出場しました。

 北関東2次予選は2試合で18イニングを投げ、安打14、三振18、四死球5、防御率1.00という成績を残し、この予選大会のMVPに輝きました。2年連続本大会出場に大きく貢献したのは言うまでもありません。3月に痛めた右ひじの影響もあったはずですが、執念の2試合完投勝利!その模様は、こちらでご覧ください。→<もと阪神・玉置隆投手が涙の完投! 新日鐵住金鹿島、2年連続で都市対抗出場決定>

 そして迎えた都市対抗の本大会、1年ぶりに踏む東京ドームのマウンドでしたが、先に書いた通り1回途中での降板。試合当日はさすがに連絡を遠慮しました。責任感の強い玉置投手が、どれだけ落ち込んでいるかと。なので、少し日が経ってから話を聞いています。

 「残念です。ことしのチームは本当に最高の仕上がりで、さらにSUBARUから最高の補強選手を迎え、盤石の体制で本戦に臨めました。僕さえしっかりすれば、必ず上まで行けるチームだと確信していたんです。だから本当に悔しかった。間違いなく僕のせいで負けてしまったので」

 返す言葉がなかなか見つかりませんよね。すると、玉置投手は続けました。

 「そんな中で、あきらめずに0を並べる投手陣、どんどん点差を縮めていく野手陣に、すごく感動しましたし、感謝しています。本当にいいチームだなって思いますね」「なおさら、自分のせいで…と悔やまれます」

これも昨年の1回戦終了後の玉置投手です。
これも昨年の1回戦終了後の玉置投手です。

 玉置投手自身の調子が悪いというわけではなかったんでしょう?「調子は全然悪くなかったですよ。ただ、チームがいい状態だっただけに、1点目を取られたとき自分を責めすぎましたね。『何をしてるんだ、俺は!』と自分自身を責めている間に付け込まれた感じです」。なるほど、そういう心境でしたか。まさか1回途中で交代するとは思わなかったけど、そのあと打線がよく追い上げてくれて「チームに感謝ですね」とのこと。

 何が何でも東京ドームで勝たないと、ユニホームは脱げませんねと言ったら「はい!また頑張ります」と玉置投手。秋の社会人日本選手権、京セラドームで会えるのを楽しみにしていますよ。「必ず行きますので、待っていてください!」

◆まさかのノーヒットノーラン…

 阪口哲也選手が所属するパナソニック(門真市)は、15日の1回戦で三菱自動車岡崎(岡崎市)に1点差で勝ちました。阪口選手の出番はなかったんですが、その喜びっぷりはこちらでどうぞ。→<もと阪神のパナソニック・梶原康司監督、阪口哲也選手ともに都市対抗初勝利!>

 2回戦は21日で間隔が空くため、いったん帰阪して再び東京へ行ったパナソニック。その2回戦は日本通運(さいたま市)との対戦でした。これが大会の記録残る試合となったのです…。相手投手に、ノーヒットノーランを許して。

7月21日 第2試合・2回戦

パナソニック-日本通運

 (門真市)   (さいたま市)

 パナ 000 000 000 = 0

 日通 010 001 00X = 2

1回戦で完投勝利を挙げた吉川投手。
1回戦で完投勝利を挙げた吉川投手。

 パナソニックの先発は1回戦で5安打2失点の完投、しかも14奪三振と、一気に注目を浴びた挙げたルーキーの吉川峻平投手(関西大)。三者凡退で立ち上がるも、2回1死から5番・関本選手にソロホームランを浴びて1点選手されます。4回まではこの1安打のみ。5回2死からバントヒットを許しますが、三上捕手の盗塁阻止により3人で終了。

 しかし6回、1死から9番に二塁打され、次は死球で1死一、二塁となって、2番・浦部選手に中前タイムリー。ここで吉川投手は降板しました。1死一、三塁で代わった青木投手(大阪ガスからの補強)が2死、そしてベテランの四丹投手が4番を三振。四丹投手は以降を1安打0点に抑えています。

パナソニック・梶原康司監督も、もと阪神です。
パナソニック・梶原康司監督も、もと阪神です。

 ところが1回、2回、3回、4回と1人の走者も出せず、完璧に抑えた打線。5回に先頭の4番・柳田選手が四球を選んで初出塁。二盗を決めたあと6番・福原選手が死球で1死一、二塁としますが、後続は連続で見逃し三振を喫して無得点。6回にも1死から1番・田中選手が四球を選ぶも、次は二ゴロ併殺打。7回は三者凡退、8回の代打攻勢も奏功せず三者凡退。

 3四死球に走者のみで、ノーヒットのまま2対0で迎えた9回表。パナソニックは一ゴロ、見逃し三振で2死ランナーなし。ここで代打・阪口選手がコールされました。まず140キロの真っすぐをファウル。次はボール。3球目の変化球も外れ、次を振ってカウント2-2。5球目は外の真っすぐでボール、そのあと2球ファウルで粘るも、最後は外への真っすぐを見逃して三振。試合終了です。

 日本通運の阿部良亮投手が、都市対抗史上5人目のノーヒットノーランを達成。小野賞に選ばれました。

「京セラドームで暴れます!」

真ん中が阪口選手。2回戦の打席が生で見られず、残念でした。
真ん中が阪口選手。2回戦の打席が生で見られず、残念でした。

 やった~代打で出た~!と喜んだものの、無安打無得点試合の最後の打者になるとは。玉置投手の時とまた違った“まさか”です。試合の翌日、大阪に帰ってきた阪口選手に「ノーヒットノーランという単語がベンチで出始めたのはどのあたり?」と聞いたら、返事は「5回くらいですかね」でした。まあ、わかりますわね。誰も打ってないやん、ってね。でもみんな達成されるとは思っていなかったはず。

 ところで、代打はいつごろ告げられた?「8回裏に、コーチから“準備しとけ”って言われました」。初めて出た昨年は、自身の出番がないまま1回戦敗退してしまった阪口選手の都市対抗。ことしは打席に立てたわけです。どうだった?緊張した?と聞くと「緊張するにはしましたけど、思ったほどではなかったですね」と言います。そうですね。初球からしっかり振って、ボールも見て、粘っていたし。

 「初球を打ちに行ったけどファウルになって。フルカウントから粘っていたんですけど…最後はやられました」

 最後はおそらくボールだと思ったんでしょう。でも審判がストライクと言えばストライクです、と阪口選手。タラレバになってしまうけど、あそこでヒットを打っていたら…って想像しちゃいますよね。そのあと2ランが出て追いついて、もしかしたら逆転とか?もし勝てなくても (社会人に“勝てなくても”はないんですが) 「ノーヒットノーランを阻んだ代打・阪口は、これが都市対抗初打席!」なんてことに、とか?

タイトル写真の全体がこれ。気合いのガッツポーズです。
タイトル写真の全体がこれ。気合いのガッツポーズです。

 果てしなく広がる妄想はこれくらいにして、次は京セラドームですね。絶対に行きましょうね。「はい京セラドームへ行って、暴れます!」と力強い声が返ってきました。そのあと「暴れるのはベンチで、じゃないですよ(笑)」と。ぜひグラウンドで、打って走って守る、どろんこ哲ちゃんを見せてください。

      <掲載写真はすべて筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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