「温暖化でっち上げ論」の渦中で、今年も観測史上最も暑い年になる可能性
囚人のジレンマ…お互い協力する方がよい結果になることが分かっていても、協力しない者が利益を得る場合には、お互いに協力しなくなるという窮地の状態のこと
トランプ次期米大統領が、地球温暖化をでっち上げだと発言し、今後化石燃料を最大限に活用して、国内の雇用や経済効果を最優先にしようと考えていることについて、多くの国々が危機感をつのらせています。
国際社会が共に温暖化対策に取り組もうとする機運が高まってきた中、まさにこの「囚人のジレンマ」モデルのように、非協力者の出現が、流れを一気に変えてしまうのではないかと心配されます。
2016年は、観測史上最も暑い年になる可能性
そのような中、世界気象機関(WMO)は、今年1月から10月までの平均気温は、史上最も暑かった2015年よりも0.1℃高く、今年もまた史上最高気温となる可能性があると指摘しました。
この原因は、巨大なエルニーニョと、人為起源の温室効果ガスによる影響と見られています。
北極海は20℃も上昇
特に気温が上昇しているのが、北極圏です。長期間にわたって気温上昇が続いており、他の地域に比べて2倍も暖まりかたが速いといいます。今月北極海の海水温は、この時期の平均に比べ20℃も高くなりました。急激な温度上昇によって、10月の北極海の海氷面積の平均は、1981〜2010年の平均より28.5%も小さくなり、10月として観測史上最小となったのです。
ある研究者は、来夏には北極海から氷が消滅する可能性もあると指摘していて、もしそのような事態が起こると、10万年来の出来事だと警鐘を鳴らしています。
融雪で変わる北極
氷が溶けていることで、北極圏では今まで見られなかったような現象が起きています。
良い出来事としては、今年9月に豪華客船クリスタル・セレニティ号が、カナダから北極を横断して、ニューヨーク・マンハッタンに到着するという、歴史的快挙を成し遂げたことが挙げられます。
しかし悪い出来事としては、例えば、グリーンランドの気温が上昇したことで、雪原下に閉ざされていた、冷戦時代の米軍基地があらわになり、有害物資が空気中に広がる恐れが出てきたとか、雪ではなく雨が降ることで、積雪の上に氷の膜が作られ、牧草が食べられなくなったトナカイ数万頭が死んだなどといった問題が発生していることが挙げられます。
今月4日、温暖化対策の新たな国際ルールである「パリ協定」は異例の速さで発効されましたが、今後も世界が一体となって温暖化に取り組んでいけるのか、これからの動きに注視していきたいと思います。