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減少に転じた沖縄県で考える重点措置と出口戦略

高山義浩沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科
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減少に転じた沖縄県の流行

沖縄県では、1月以降の第6波において3万人を超える感染者を認めています。極めて大きな流行でしたが、1月中旬をピークとして減少へと転じています。

ただし、いまだ高齢者における感染が持続しているため、その減少速度はゆっくりとしています。このあたり、ワクチン接種で高齢者が守られていて、おおむね若者の増減で終わった第5波とは異なる動態です(若者は急速に増えて、速やかに減ります)。

たしかに、オミクロン株が主流となってからは、ほとんどの若者は軽症で推移しています。しかし、80歳以上が感染すると3割以上が入院を要する状態となっており、いまだ高齢者にとっては脅威の感染症と言わざるを得ません。

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ウイルス性肺炎もありますが、基礎疾患の増悪や細菌性肺炎の合併を多く認めています。インフルエンザがそうであるように、高齢者は合併症に苦しまれているのです。少なくとも、「コロナが軽症なら、それでいい」とは言えません。また、全体では重症化する比率が低くとも、多数の感染者が発生すれば医療への負荷は過大となっていきます。

現在も、高齢者施設での集団感染が散発的に起きており、これら施設に医師や看護師が出向きながら抗ウイルス剤の投与など治療を行っています。私も施設を巡回していますが、かなり大変です。多数の軽症者に混じって、それでも状態を悪化させる高齢者がいるため、早期に発見して入院医療へとつなげなければなりません。現場の介護スタッフも献身的に頑張っておられます。

死亡者が少ないのは、こうした医療と介護の連携あってのことだということが、あまり世間に伝わっていないように思います。死亡者が少ないから特別な対応がいらないのではなく、特別な対応をとっているから死亡者が少ないのです。インフルエンザと比較するのなら、私たちがインフルエンザ並みにまで手を引けば分ります。待っているのは、欧米並みの死亡者数です。

とはいえ、今週からは沖縄県内の入院患者数も減少へと転じて、医療と介護への負荷は軽減されていく見込みです。そして、若者層への制限を緩和すべき状況となりました。難しいことですが、沖縄県では、全国の感染が拡大している最中に出口戦略を考えなければなりません。どこまで解除するかは、どこまでリスクを許容できるのか・・・ でもあります。

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筆者撮影
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重点措置に意味はあるのか?

この問いはよく聞きますが、実のところ、重点措置とは看板にすぎません。大切なのは、そこで何をするかです。

沖縄県では、急速な感染拡大を阻止する効果はあったと考えています。その背景には、重点措置が出たら何をするかの申し合わせが、それぞれの領域で行われていたことがありました。

たとえば、行政は、時短営業を飲食店に求め、GoToなどの促進策を停止しました。企業は(明文化されているかは別にして)BCPを動かし始め、テレワークへと切り替えたりといったことが始まりました。社員に新年会を控えるよう伝えた会社も多かったでしょう。

病院はコロナ流行に備える病床体制へと切り替え、診療所は発熱外来やオンライン診療を増強し、介護施設は面会を制限するなど守りを固めました。エッセンシャルワーカーを対象とした定期のPCR検査事業も再開され、従事者は感染しないように注意しながら、それぞれの機能を温存するよう力を合わせました。

今回、成人式のある3連休前、1月9日に重点措置が宣言されたのは大きかったと思います。多くの新成人が宴会を控えてくれたり、あるいは検査で陰性を確認するなど協力してくれました。要請に従わない人々に報道は向かいがちですが、実際は、多くの協力のもとに乗り切りました。

重点措置には、こうした危機感の意識合わせ、対策を一斉に開始するという役割があります。もし、1月9日に宣言されなければ、欧米並みの爆発的流行に至った可能性がありました。そうなれば、医療も介護も持ちこたえられなかったと思います。

ただし、こうした急ブレーキの効果は一過性のものであることを理解する必要があります。1か月、2か月と継続しても、もはや壊れたブレーキのようになっていくだけです。昨年の5月から9月まで漫然と続けられてしまった緊急事態宣言の反省です。

急速な感染拡大を抑え込むことに成功したら、あとはタイミングをみて緩めていくことが必要です。ダラダラ続けないこと。とくに日本では罰則もありませんから、協力が得られなくなったら、それこそ重点措置の意味は失われてしまいます。

沖縄県では、2月20日まで重点措置が延長となっていますが、減少した地域から順次解除していくべきです。そして、2月20日には必ず全県解除すること。

効果の低い活動制限は解除すべき

また、現在、重点措置で求めている自粛要請は、実効性があるものへと絞り込んでおく必要があります。オミクロン株の病原性によらず、社会負担に比して効果が低いと考えられるものについては、今後、ふたたび重点措置を求めることがあったとしても外しておくべきです。

たとえば、認証店舗であれば、別のグループへと感染を拡げるリスクは低く、営業時間の短縮を求める実効性は高くありません。というのも、認証店舗以外で対策に協力していない店舗へと流れているからです。むしろ、そこで他のグループとの接触頻度が上がっています。

また、旅行そのものは感染拡大のリスクとしては大きくありません。とくに、同居家族やいつも一緒にいる方との旅行を制限する必要はありません。移動を制限するのではなく、旅先で何をするのかに対策の焦点を当てるべきです。

この2年間、繰り返し申し上げてきたことですが、家族旅行で沖縄のホテルに宿泊して、ビーチで楽しんで帰るだけであれば、地元に感染を拡げる可能性などほとんどありません。また、水族館や平和関連施設など公共施設の感染対策もしっかりしており、訪問を制限する必要などありません。

一方、帰省や出張であれば、地元との濃厚な接点が生じる可能性があり、感染リスクとなっています。このため渡航前に検査を受けて、陰性を確認していただくようお願いしています(沖縄県への渡航前検査は無料です)。そして、日ごろの感染予防策を旅先でも守っていただけるのであれば、渡航自粛を求める必要はありません。

コンサートなどのイベントについても、マスク着用、大声を出さないなどのルールが守られるのであれば、開催そのものを制限する必要はありません。私自身、音楽ライブやプロスポーツなど視察させていただきましたが、いずれもよく守られていました。ただし、主催者は会場の換気を心がけたり、過密な環境とならないよう入場制限はお願いします。

もちろん、ゼロリスクを求めるのであれば、食事も、旅行も、イベントも、止め続けるしかありません。そろそろ沖縄では、このリスクとどう向き合うかについて、全国に先行した議論が求められているように思います。そして、これこそが、今後のウィズコロナへと落とし込んでいく作業となります。

沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科

地域医療から国際保健、臨床から行政まで、まとまりなく活動。行政では、厚生労働省においてパンデミック対策や地域医療構想の策定支援に従事してきたほか、現在は規制改革推進会議(内閣府)の専門委員として制度改革に取り組んでいる。臨床では、沖縄県立中部病院において感染症診療に従事。また、同院に地域ケア科を立ち上げ、主として急性期や終末期の在宅医療に取り組んでいる。著書に『アジアスケッチ 目撃される文明・宗教・民族』(白馬社、2001年)、『地域医療と暮らしのゆくえ 超高齢社会をともに生きる』(医学書院、2016年)、『高齢者の暮らしを守る 在宅・感染症診療』(日本医事新報社、2020年)など。

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