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ペットロスは克服しようとしないで!ペットを亡くした飼い主に知ってほしい3つのこと

松永由美ペットケアアドバイザー|ペットロスカウンセラー

犬や猫などのペットたちも一つの命で、いつかはお別れの時が来ます。遺された飼い主が“ペットロス”に陥ってしまうことも多いのですが、自身も愛犬を亡くした経験があるペットロスカウンセラーの立場からは「ペットロスは乗り越えようとしてはいけない」と思っています。今回はペットを亡くした飼い主さんに知ってほしい、3つのことをお話します。

“ペットロス”とは?

一昔前は犬や猫はいわゆる“愛玩動物”として飼われていることが当然でした。一方で、近年では犬や猫などの動物たちは“伴侶動物”と呼ばれるようになり、人々の家族の一員として以前にも増して大切に扱われるようになっています。


愛犬や愛猫を家族として大切にしている人が増えるのに比例して増加しているのが「ペットロス」です。ペットロスとは、ペットを死別や行方不明・盗難などで失ったことが原因で起こる精神的・身体的な不調のことを言います。
ペットロスは病気ではありませんが、飼い主はとてつもなく大きな悲しみに襲われるため精神的に不安定となり、次のような症状が現れます。

  • 涙が止まらなくなる
  • 無気力や疲労感
  • 不眠
  • 幻聴や幻覚
  • 集中力の低下
  • 自律神経の乱れによる発熱
  • 吐き気や拒食

筆者自身も数年前に愛犬を亡くした際、ペットロスに陥り拒食や不眠に悩まされました。家事をしている時でも気がつくと泣いていて、「あの子が死んだのは私のせい」「私なんかと家族にならなければ、もっと生きていられたかもしれない」と、いつも自分を責めていたのです。


ペットロスに陥ると、自分が自分ではなくなってしまったような気がして「早く立ち直らないといけない」と焦ってしまうことが多いです。ですが、いちペットロス経験者、そしてペットロスカウンセラーの立場から言うと、このように焦るのはNGです!

ペットロスに陥った人に知ってほしいこと

私はこの数年間ペットロスカウンセラーとして、多くの飼い主さんとお話をして来ました。ここからは、お話を伺う中で感じた「ペットを亡くした人に知ってほしいこと」を3つご紹介します。

知ってほしいこと1:ペットロスは“いけないこと”ではない

ペットを亡くした多くの飼い主さんが、自身がペットロスで悩んでいることを他の人に話しづらいと感じているようです。

  • 周囲の人と温度差を感じる
  • こんな話をしたら、相手が困ってしまうかもしれない

このような理由から家族や友人に話せないまま、つらい気持ちを自分の中に溜め込んでしまうのです。
悲しいことではありますが、確かにペットロスは日本ではまだ理解が進んでいないのが現状です。筆者自身も愛犬を亡くした際、SNSに「たかが犬で大げさだ」というメッセージが届いたことがありますもちろん、ペットを飼ったことがない人全員がこのような考え方をしているわけではありません。
しかし、大切な家族を亡くした直後の状態でこのようなことを言われると、周囲がみんな敵に思えて「ペットロスはいけないことなんだ」と思ってしまうのです。


ペットロスカウンセラーとしてお話しますが、ペットロスは大切な家族を亡くしたことで起こる“ごく自然な状態”です。何もおかしくありませんし、大げさでもありません。
というのも、周囲の人に話せずにいる飼い主さんが多いだけであって、動物と暮らしたことのある8割以上もの人が「ペットロス経験がある」と言われています

ペットロスは決して珍しいことでもなければ、いけないことでもないのです。安心してくださいね。

知ってほしいこと2:泣きたい時は泣いてもいい

もし身近な人がペットを亡くして悲しんでいたとして、みなさんならどう声をかけるでしょうか?難しいことではありますが、「元気出して」「泣いていると天国の◯◯ちゃんが心配するよ」など言う人も多いかもしれませんね。

一方、このように声をかけられた飼い主さんは「泣いてはいけない」「みんなに心配をかけないようにしよう」と、さらにつらい気持ちを内に秘めるようになってしまいます。

筆者も愛犬を亡くした時、周囲の人からさまざまな声を掛けてもらいました。スルーすることだってできたでしょうし、声をかけてくれただけでとてもありがたかったのですが、「泣いてもいい」という言葉以上に心を救われたものはありませんでした。

泣きたい時には泣いてもいいのです。「悲しい」「寂しい」という想いだって、私たちを作り上げている大切な感情ですよ。いつかまた心から笑うための準備期間だと思って、今は我慢せず、ありのままの気持ちを大切に泣きたくなったらとことん泣きましょう!

知ってほしいこと3:克服しようと頑張らないで

ペットロスに陥ると、冒頭にお話したような症状が続いて普段の生活すらもままならなくなることもあります。そのため、「ペットロスから早く立ち直らないと…」とつい焦ってしまう人も多いです。

筆者自身もペットロスから早く抜け出したいと、焦っていた時期があります。でも、もがけばもがくほど苦しい気持ちは募っていき、今思えば「克服しよう」とする努力は逆効果だったように感じます。


このような経験を経て、今私はペットロスカウンセラーとして多くの飼い主さんに「ペットロスを克服しようとしないで」とお伝えしています。ペットロスに陥るのは、愛犬や愛猫を心から大切に思っていた証拠ですから、無理に克服する必要なんてないのです。
私自身は「早く抜け出そう」と思うのをやめて、「一生ペットロスでいよう」と思うようになったら幾分心が軽くなりました。愛犬がくれた思い出・教えてくれた感情・亡くなった後に遺してくれたもの…これらをきちんと受け止めて、ペットロスと付き合っていくことに決めたのです。すると、ペットロスでただ「つらい」という気持ちが徐々に減り、「ずっと大好きだよ」「ありがとう」など愛犬へのプラスな想いが増えていきました。


もちろん、人によって悲しみの感じ方が違うように、ペットロスを受容するまでの道のりも人それぞれです。ペットロスを受け入れるのは平坦ではない大変な道のりで、どれほど時間がかかるかもわかりません。
でも、どれだけ大変だとしても、愛するペットとの思い出や築いてきた関係は決してなくなることはない、ご家族の大切な宝物です。
無理に克服しようと頑張らず、少しずつ自分の想いと向き合っていきましょう。

※記事内容には個人の感想や見解を含みます。
※記事に含まれる内容は執筆当時の情報であり、現在と異なる場合がありますのでご了承ください。

参考文献

日本におけるペットロス研究の動向と展望

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ペットケアアドバイザー|ペットロスカウンセラー

もとはトリマーでしたが、愛犬を亡くしたことをきっかけにペットロスカウンセラーやペットセラピストなど、動物の健康や終末期に関連する資格を複数取得。現在は、ペット関連メディアへの記事や台本の提供・ペットロスカウンセリング・ペットショップでのお世話スタッフなど、動物に関する活動を多方面で行っています。【保有資格】愛玩動物飼養管理士2級・ペットセーバー・動物介護士・ペット終活アドバイザー・動物健康管理士など。

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