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ジョージ・ルーカス:今になって「スター・ウォーズ」は12歳向けだったのだとわかった

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
「スター・ウォーズ」40周年パネルに出席したルーカス、フォード、ハミル

この40年、世界はずいぶん変わった。だが、まったく変わらないものが、ひとつある。 「スター・ウォーズ」ファンの情熱だ。ルーカス・フィルムの公式ファンイベント「スター・ウォーズ」セレブレーションは、あらためてそのことを証明した。

今年の開催地はフロリダ州オーランド。初日である13日(木)、午前11時からの40周年記念パネルでできるだけ良い席を確保しようと、早い人は30時間以上も前から列に並んだ。パネル会場に集まったのは、約3,500人。空席ゼロの場内は、 ライトセーバーと興奮でいっぱいだ。

40周年記念パネルに集まったファン
40周年記念パネルに集まったファン

パネルは、「エピソード4」公開時の観客の様子や、キャストのコメント、数々のレッドカーペットの模様など、過去40年間を振り返るビデオ映像でスタート。司会を務めたワーウィック・デイヴィスに向かって、「君があの頃11歳だったというのが何よりのショックだね。40年というのは、そんなに長い時間なのか」と言ったジョージ・ルーカスは、「スター・ウォーズ」を思いついた瞬間はいつだったかと聞かれると、「ひとつの瞬間というのはないな」と答えた。

デビュー作「THX 1138」とその次の「アメリカン・グラフィティ」が、カルト的人気を得たものの大ヒットとは言い難かったせいで、当時、「スタジオはもう誰も僕に会いたがらない状態だったんだ」とルーカスは説明 。だが、そんな中、20世紀フォックスのエクゼクティブのひとりが、「アメリカン・グラフィティ」は良かった、次の映画をぜひ一緒に作ろうと言ってくれたという。ルーカルは彼に、「宇宙を舞台にしたオペラを作りたい」と言ったが、脚本は撮影が始まってからも変わり続けた。「僕が作りたかったのは、子供の頃に見て育ったような冒険物に、神話や、心理的な要素を組み合わせたもの。これは言うべきじゃないんだろうが、今になって、『スター・ウォーズ』は12歳向けの映画だったんだと思うんだよね。世界に向けて飛び立っていく時に、覚えておくべきことを語る映画なんだよ。友情とか、信頼とか、ダークサイドに落ちてしまわないこととか」(ルーカス)

子供から大人まで大勢のファンが集まる
子供から大人まで大勢のファンが集まる

パネルには、ほかに、マーク・ハミル、ヘイデン・クリステンセン、イアン・マクディアミッド、アンソニー・ダニエルズ、ピーター・メイフューなどが登壇。今年初めてセレブレーションに参加するハリソン・フォードが登場すると、とりわけ大きい拍手が起こった。

フォードとルーカスは「アメリカン・グラフィティ」で、初めて組んでいる。「でも、あの映画がヒットしなかったので、ハリソンはまた大工に戻らなければいけなくなったんだよ」とルーカス。ふたりは、フォードがフランシス・フォード・コッポラのところでドアの建てつけをしていた時に再会する。「大工仕事をしていたところにジョージがやってきた時は、驚きだったよ。彼は、次にSFを作ろうとしているんだと言った。そして、このすばらしい映画のために、僕を引っ張り出してくれたのさ」と言うフォードは、まずルーカスに向かって、次に、会場にいるファンに向かって「ありがとう」と言い、会場を沸かせた。

ルーカスはまた、主要キャストを選んだ裏話も明かしている。彼は1年かけて多くの俳優たちに会ったそうで(それを聞いて、ハミルは『1年も?』と驚きを見せている)、それぞれの役の候補が絞られてくると、いろいろな組み合わせをしてみて、一番相性の良い顔ぶれを判断したのだそうだ。

母について語るビリー・ロード
母について語るビリー・ロード

だが、レイア姫だけは、最初からこの人だと感じた。故キャリー・フィッシャーについて、ルーカスは「彼女が部屋に入ってきた時、彼女こそ、このキャラクターだと思った。疑問の余地は、ほとんどなかった。彼女のような人は、めったにいない。10億人にひとりくらいだ」と、思い出を語っている。パネルの終盤には、フィッシャーの娘ビリー・ロードも登壇し、ファンに向かって、「母はあなたたちとこの映画を愛していました。レイア姫のことも。私たちにとって、『スター・ウォーズ』は宗教であり、生き方となりました。あなたたちも同じだと思います。だから私は、今日、ここに来たかったのです」と語りかけた。

ほかに、チューバッカのキャラクターは、ルーカスが当時、大きな犬を飼っており、犬を助手席に乗せて運転をしたことからイメージが浮かんだこと、C3POのデザインは、表情がまったくない顔を考案するところから始まったこと、マクディアミッドがルーカスと短時間のカジュアルなランチをしただけで、役が何かも知らないままオファーを受けたこと、クリステンセンがライトセーバーを使って戦う時、子供の時に遊んだように、つい「シュッ、シュッ」と声を出してしまってルーカスに「音はやらなくていいんだよ」と言わレたことなどが話題に上っている。

セレブレーションイベントは、16日(日)まで。明日14日(金)には、今年12月に公開を控える「エピソード8/最後のジェダイ」についてのパネルが行われる。

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L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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