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自民党総裁選 同性婚や夫婦別姓、クオータ制は? ジェンダー・セクシュアリティ政策を比較

松岡宗嗣一般社団法人fair代表理事
ジェンダー・セクシュアリティ政策で見る自民党総裁選(筆者作成)

27日に投開票を迎える自民党総裁選。候補者の意見が割れる「選択的夫婦別姓」が、争点の一つとして注目されている。

これ以外にもクオータ制や同性婚など、ジェンダー・セクシュアリティ政策についてはどのような違いがあるのか。過去の発言やアンケートなどから候補者を比較する。

ジェンダー・セクシュアリティ政策で見る自民党総裁選(筆者作成)
ジェンダー・セクシュアリティ政策で見る自民党総裁選(筆者作成)

現状、有力候補と報じられている石破・小泉・高市氏の3名を中心に見ていきたい。

「賛成」だが慎重な石破・小泉

「選択的夫婦別姓」をめぐり、1年以内に実現するという趣旨の発言が注目された小泉進次郎氏は、同性婚についても、これまで各種アンケートで「賛成」と回答してきた。

2021年の環境大臣時代には、「もし子どもの性的指向が同性だった場合どう思うか」との質問に対して「打ち明けやすい親でありたい」と答え、その際「同性婚には賛成だ」とも発言している。

一方で、今月の時事通信による総裁選インタビューでは、自治体で広がるパートナーシップ制度について触れ、「国民の理解がどこまで社会に深まっていくか見ていきたい」と答えており、選択的夫婦別姓で大きく前に出たことへのバランスなのか、慎重な姿勢も見せている。

石破茂氏は、選択的夫婦別姓への賛成に加えて、政治のジェンダー格差を是正するために候補者や議席の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」についても、過去に「必要なら躊躇なく実行すべきだ」といった考えを述べている。

性的マイノリティに関しては、法整備の機運が高まった2021年当時、「LGBTであれ、差別されることがあってはならないのは憲法で保障されているとおりだ。法制化することは必要だと思う」といった発言をしている。

同性婚については、今月11日のTBSのラジオ番組で「不利益を受けているとすれば、救済する道を考えるべきだ」と語っている。一方で、LGBT法連合会とMarriage For All Japanの個別アンケートに対しては、司法の判断も参考にしながら考えるべきとして、明確な賛成の回答を避けた。

自民党総裁選・立憲民主党代表選のアンケート結果に関する記者会見(筆者撮影)
自民党総裁選・立憲民主党代表選のアンケート結果に関する記者会見(筆者撮影)

「反対」の高市

高市早苗氏は、選択的夫婦別姓、クオータ制、同性婚いずれも反対を示しており、保守派としての立ち位置を明確にしている。推薦人には安倍派を中心とした「裏金議員」が多く、なかには性的マイノリティをはじめ様々な差別発言を繰り返してきた杉田水脈氏も含まれている。

安倍路線を引き継ぐ高市氏。その安倍氏については、選挙支援をめぐって旧統一教会会長と面談していたことが判明。これまで、旧統一教会と一部自民党議員との間で、「LGBT問題、同性婚合法化は慎重に扱う」などの記載がされた推薦確認書を交わしていたことも報じられている。選択的夫婦別姓や同性婚に反対する高市氏の姿勢の背景には、旧統一教会をはじめ、神道政治連盟(神社本庁)といった宗教右派組織との繋がりが影響していると言える。

高市氏と同様に、若手保守派の小林鷹之氏も選択的夫婦別姓や同性婚への反対を表明している。一方で、河野太郎氏は早くから選択的別姓や同性婚に対して明確な賛成を示している。

トランスジェンダーの法的な性別変更の要件をめぐり、昨年、最高裁が「生殖不能要件」を違憲と判断したが、「外観要件」については判断を示していない。個別アンケートで河野氏は、外観要件やその他の要件も含めた「早急な改正」が必要だと回答している。

投開票まで約1週間となった自民党総裁選。あくまで自民党という一組織の代表選挙だが、次の首相が決まる重要な機会だ。ジェンダー・セクシュアリティ政策を含め、それぞれの候補者の政策や主張に注目したい。

一般社団法人fair代表理事

愛知県名古屋市生まれ。政策や法制度を中心とした性的マイノリティに関する情報を発信する一般社団法人fair代表理事。ゲイであることをオープンにしながら、GQやHuffPost、現代ビジネス等で多様なジェンダー・セクシュアリティに関する記事を執筆。教育機関や企業、自治体等での研修・講演実績多数。著書に『あいつゲイだって - アウティングはなぜ問題なのか?』(柏書房)、共著『LGBTとハラスメント』(集英社新書)など

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