なぜベリンガムはレアルで“154億円”の価値を示しているのか?クラシコの圧倒感と回る好サイクル。
クラシコというビッグマッチの勝利が、追い風になっている。
リーガエスパニョーラ第11節、バルセロナ対レアル・マドリーの一戦は、マドリーが2−1で勝利した。この結果、マドリーが勝ち点28で、首位に立っている。
そのクラシコで、大活躍したのが、ジュード・ベリンガムだ。試合の終盤、1点ビハインドの場面で、ミドルシュートを沈めて同点弾。そして、アディショナルタイムにルカ・モドリッチのアシストを押し込み、逆転ゴールをもたらした。
「ベリンガムは信じられないよ。常に違いをつくってくれる。マドリーのサポーターは、クリスティアーノ・ロナウドを見慣れていたと思う。でも、いま、もう一人、そういう選手が現れたんだ」とはヴィニシウス・ジュニオールの言葉だ。
「現在のマドリーには、若い選手がたくさんいる。僕たちはピッチ内、ピッチ外で、いつも一緒にいるんだ。それがチームの団結につながっている。ピッチ上では、それぞれがチームメートを助ける動きをし続けている。今シーズン、多くのものを勝ち取りたい」
■ベリンガムの圧巻のパフォーマンス
ベリンガムは、マドリー移籍後、公式戦13試合で13得点を記録している。リーガでは、開幕から10試合で10得点。近年、マドリーで、この数字を達成したのはクリスティアーノ・ロナウドとカリム・ベンゼマのみだ。
カルロ・アンチェロッティ監督は今季から【4−4−2】のシステムを使っている。中盤ダイヤモンド型のシステムで、トップ下にベリンガムを配置している。
マドリーは昨季終了時にベンゼマが退団。キリアン・エムバペ、ハリー・ケイン…。この夏、トップクラスのストライカー獲得の可能性が取り沙汰されたが、最終的には誰も到着しなかった。
そこでアンチェロッティ監督はベリンガムを得点源にしようと考えた。厳密に言えば、ヴィニシウス、ロドリゴ・ゴエス、ベリンガムを「擬似3トップ」にして、得点力アップを図ったのである。
指揮官の試みは、うまくいった。出来過ぎだ、と言い換えてもいい。「我々はベリンガムのレベルに驚かされている。特に、ゴールを奪う効率性においてはね。ベテランの選手のようで、素晴らしい姿勢を示している。本当に、違いをつくってくれているね」と語るのはアンチェロッティ監督だ。指揮官の期待をベリンガムが良い意味で裏切っている。
今季のマドリーで、ベリンガムは最もゴールを奪取している選手だ。ホセル(5得点)、ヴィニシウス(3得点)、ロドリゴ(2得点)、フェデリコ・バルベルデ(2得点)とゴールが分配されるなか。ベリンガムの数字は突出している。
チーム内の話に留まらない。ベリンガムは、ケイン(17得点/バイエルン・ミュンヘン)、アーリング・ハーランド(16得点/マンチェスター・シティ)、エムバペ(15得点/パリ・サンジェルマン)、ラウタロ・マルティネス(12得点/インテル)と名だたるストライカーたちに劣らない数字を残しているのだ。
■高額な移籍金と回収
ベリンガムは今夏、移籍金1億300万ユーロ(約154億円)で、ボルシア・ドルトムントからマドリーに移籍。ただ、その移籍金は「安価である」と言えるパフォーマンスを見せている。
近年、マドリーはエデン・アザール(移籍金1億1500万ユーロ/約172億円)、ガレス・ベイル(1億100万ユーロ/約151億円)、オウレリアン・チュアメニ(移籍金8000万ユーロ/約121億円)、ルカ・ヨヴィッチ(移籍金6300万ユーロ/約94億円)といった選手を高額な移籍金で獲得してきた。だがベリンガムの補強は完全に「当たり」だ。
ベリンガムのパフォーマンスが、このままずっと続くかは分からない。しかし、彼はまだ20歳の選手だ。すでにイングランド代表でも地位を確立している。1億ユーロ超の移籍金は十分に“回収”できるだろう。
■逆転劇の代名詞
レアル・マドリーと言えば、逆転劇を代名詞にしているチームだ。そのチームでも、「逆転は大好きだ。心臓に悪いけど、いつも自分とチームメートを信じている」と語るベリンガムは存在感を発揮している。
「いまは、全てがうまく回っている。チームメートやコーチングスタッフから多くを学んでいるよ。チームが勝利するための助力になれると考えているし、それを続けたい。試合前には感情的になっていた。これまで、クラシコは家族と一緒にソファで観るものだったんだ。でも、この試合の前には『クラシコでプレーして、何か大きなことを成し遂げるチャンスがきた』と家族に言っていた。そして、それを達成できた」
高額な移籍金というのは、期待と重圧を高める。それに潰されてしまうような選手も、少なくない。
だがベリンガムはそのフェーズを超えている。どこまで続くか不明の「ベリンガム劇場」を、いまはただ楽しみたい。