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「5類」移行後どのくらいインフルや新型コロナは流行しているのか?

倉原優呼吸器内科医
(写真:イメージマート)

新型コロナが5月8日に「5類感染症」へ移行してから、感染者数は全数把握から定点把握に変わり、全体が見えにくくなりました。さて、現在インフルエンザや新型コロナはどのくらい流行しているのでしょうか?6月16日に発表されたデータから考察してみたいと思います。

インフルエンザは減少傾向

まずインフルエンザについてですが6月16日に発表された定点医療機関あたりの感染者数は1.36人です(図1)。まだ流行期の水準にありますが、かなり少ないと思います。

図1.定点医療機関あたりのインフルエンザ患者数(筆者作成)
図1.定点医療機関あたりのインフルエンザ患者数(筆者作成)

インフルエンザでは、「注意報」、「警報」が設定されています。これはそれぞれ、定点医療機関あたり10人・30人という水準です。これらのレベルだと、外来にインフルエンザ疑いの発熱者が多くなり、医療機関もそれなりに忙しくなります。

現在、長崎県4.73人、宮崎県6.53人、鹿児島県5.10人、と流行している地域もあるので注意が必要ですが、おそらく全国的には今後減ってくると考えられます。

新型コロナは増加傾向

残念ながら新型コロナはじわじわと増加しています。現在全国平均で定点医療機関あたり5.11人なので(図2)、単純計算でインフルエンザの約3.8倍多いです。

図2.定点医療機関あたりの新型コロナ感染者数(参考資料1より引用)
図2.定点医療機関あたりの新型コロナ感染者数(参考資料1より引用)

実は現在、沖縄県だけが定点医療機関あたり18.41人という厳しい状況です。病床もかなり逼迫している地域があると聞いています。

新型コロナが「5類感染症」に移行してから、検査が有料になったこともあり、感染者数はかなり低く見積もられている可能性があります。

そのため、水面下には相当数の新型コロナ感染者が存在すると考えられます。実際に、札幌市の下水サーベイランスを見てみると、第7・8波の水準に迫る勢いでウイルス排出量が増えていることが分かります(図3)。

図3. 6月16日時点での札幌市の下水中新型コロナウイルスサーベイランス(参考資料2より引用)
図3. 6月16日時点での札幌市の下水中新型コロナウイルスサーベイランス(参考資料2より引用)

新型コロナが増加する理由

日本は「ほとんどの人がすでに新型コロナに感染した」とまでは言えない背景があります。抗体保有率を見ても、成人で感染した人はだいたい約3~4割といったところです(3)。

また、ワクチンを継続して接種している人の割合が減っており、この恩恵を次第に受けられなくなっている現状もあります。

これらによって、感染者数がゆるやかに増加しているのかもしれません。

年齢別でみると、子どもの新型コロナの増加が目立ちます(図4)。諸外国とはちがい、日本の多くの子どもはまだ新型コロナに罹患していないため、学校でのクラスターが多いのでしょう。

図4.定点医療機関あたりの新型コロナ感染者数(年齢別)(参考資料1をもとに筆者作成)
図4.定点医療機関あたりの新型コロナ感染者数(年齢別)(参考資料1をもとに筆者作成)

なお、小児科ではRSウイルス感染症やヘルパンギーナといった、子ども特有の感染症も増えており、こちらのほうが小児医療が逼迫している地域もあります。

まとめ

新型コロナはインフルエンザと比較すると感染性がかなり高いことから、地域によっては爆発的に感染者数が増えるリスクをはらんでいます。

周囲の流行に応じて、私たち一人ひとりができる感染対策を継続することが重要です。

(参考)

(1) 新型コロナウイルス感染症に関する報道発表資料(発生状況等)2023年6月~(URL:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00438.html

(2) 札幌市下水サーベイランス(URL:https://www.city.sapporo.jp/gesui/surveillance.html

(3) 厚生労働省. 第6回抗体保有調査(住民調査)速報結果(令和4年度新型コロナウイルス感染症大規模血清疫学調査).(URL:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001084515.pdf

呼吸器内科医

国立病院機構近畿中央呼吸器センターの呼吸器内科医。「お医者さん」になることが小さい頃からの夢でした。難しい言葉を使わず、できるだけ分かりやすく説明することをモットーとしています。2006年滋賀医科大学医学部医学科卒業。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医・代議員、日本感染症学会感染症専門医・指導医・評議員、日本内科学会総合内科専門医・指導医、日本結核・非結核性抗酸菌症学会結核・抗酸菌症認定医・指導医・代議員、インフェクションコントロールドクター。※発信内容は個人のものであり、所属施設とは無関係です。

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