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ひとり旅は寂しい? 「ソロ温泉」が孤独でなくなる方法

高橋一喜温泉ライター/編集者

昨今は、ひとり専門の店舗やひとり専用のメニューを用意する飲食店が増えている。

本来みんなでワイワイしながら食べるのが当然であった「焼き肉」や「鍋」でさえも、おひとりさま専門店が拡大するなど、食の分野におけるソロ化の動きは目覚ましい。それだけ「ソロ」を愉しむ人が増えている証しである。

食にかぎらず、ソロキャンプ、ソロサウナなどのアクティビティも流行しており、「ソロ温泉」もまた、その流れを汲んでいる。

ただ、「ソロ温泉」は、自由で気楽だけど、やはりちょっと寂しさを感じる……といった不安の声も少なくない。

ひと昔前までは、ソロ温泉をはじめとするひとり旅は、人知れず出かけるのが普通だった。まわりから「寂しい人」と思われたくないからだ。

だが、今ではソロ旅をポジティブにとらえ、積極的にSNSなどを通じてシェアする人が増えている。

SNSで「ソロ=楽しい」を発信

筆者もここ数年、noteやTwitter、instagramなどのSNSで温泉に関する情報を発信しているが、しばらく続けてみて感じたことは、ソロ温泉をはじめ、ひとり旅を愉しんでいる人が、世の中にはたくさんいるという現実である。

そして、「ソロ旅=楽しい」という情報をSNSを通じて発信している。さらには、同じようにソロ旅が好きな人たちが「いいね!」を押し、旅の情報を交換している。その様子を見ていると、「ひとり旅はまったく寂しいものではない」と感じる。

筆者自身、15年前に「日本一周3016湯」をめぐる旅を敢行した際、ブログに毎日、旅の様子を綴っていた。3016カ所の温泉一つひとつについて、源泉や施設の感想を書いてアップしていた。

旅をしていた2008年当時は、ちょうどブログを書く人が増え始めた頃である。もちろん、Twitterもインスタもなく、個人が気軽に情報を発信する手段といえば、ほぼブログ一択だった。

それゆえ、ブログを見てくれる人も今のSNSと比べればかなり少なかったが、それでも毎日、旅の様子をシェアしていると、興味をもった人が「ここにもおすすめの温泉あります!」「あの温泉はマストです!」といった情報を送ってくれた。なかには差し入れをもって、筆者が立ち寄りそうな温泉まで訪ねてくれる人までいた。

そうした温泉仲間との交流は旅の愉しみのひとつだった。だから、一年以上ひとり旅をしていたが、寂しいと感じた瞬間はなかった。

情報をシェアすると、同じような趣味をもつ人と「出会う」ことができる。それがネット上のつながりであっても、趣味の合う人とは一気に距離が縮まりやすい。場合によっては、リアルの友人よりも自分の素を出せる、というケースもあるだろう。

「ソロ温泉」の旅をシェアする

ソロ活動を自由に愉しむ人がいる一方で、「ソロはさびしい」と二の足を踏む人がいるのも事実である。

そういう人は、SNSで「ソロ温泉」の旅をシェアしてみるのはどうだろうか。ポイントは「リアルの友人に向けて」ではなく、「まだ知り合っていない趣味の合う人に向けて」情報をシェアすることである。

リアルの友人に向けてだと、どうしても見栄を張ったり、カッコつけたりしてしまう。普段使っているアカウントは別のソロ旅専用のアカウントをつくってもいいだろう。

素直にひとり旅を愉しんでいる様子をアップすれば、同じような趣味をもつ人とつながりをもつことができるかもしれない。そうなれば、もはやひとり旅は孤独だとは言えないだろう。

ただし、旅の様子をリアルタイムでアップするのはおすすめできない。ソロ温泉では、スマホや人間関係と距離を置き、自分自身や湯と向き合うことを奨励しているからだ。防犯上の理由からも、リアルタイムで情報を発信するのはリスクがある。

ソロ旅をシェアするなら、旅を終えてからにしよう。「こんな情報をあとでシェアしよう」と考えながら温泉に入っていれば、孤独の感情が忍びよってくることはないだろう。

温泉ライター/編集者

温泉好きが高じて、会社を辞めて日本一周3016湯をめぐる旅を敢行。これまで入浴した温泉は3800超。ぬる湯とモール泉をこよなく愛する。気軽なひとり温泉旅(ソロ温泉)と温泉地でのワーケーションを好む。著書に『日本一周3016湯』『絶景温泉100』(幻冬舎)、『ソロ温泉』(インプレス)などがある。『マツコの知らない世界』(紅葉温泉の世界)のほか、『有吉ゼミ』『ヒルナンデス!』『マツコ&有吉かりそめ天国』『ミヤネ屋』などメディア出演多数。2021年に東京から札幌に移住。

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