シリア北西部で森林火災が相次ぎ、地中海東岸に残る数少ない杉の原生林の一部が焼失
シリア北西部で森林火災が相次いでいる。
ハマー県は8月31日、北西部のスカイラビーヤ郡(ガーブ地方)のイナーブ村、アブー・クライフーン村、アイン・クルーム村の植林地で火災が発生し、火が民家に迫り、住民が一時避難を余儀なくされた。
ハマー県の消防隊や民間防衛隊(ホワイト・ヘルメットではない正規の組織)による消火作業で、火は9月1日にはほぼ鎮火した。
国営のシリア・アラブ通信(SANA)によると、出火原因は不明だが、火の不始末か放火の可能性が高いという。
9月3日には、今度はミスヤーフ郡ワーディー・ウユーン区のビーラト・ジュルド村の農地で発生した火事が植林地に拡がり、県の消防隊と民間防衛隊が消火活動にあたった。
出火の原因は不明。
そして9月5日、今度はラタキア県ハッファ郡の避暑地スルンファ町の国立森林保護区内で火災が発生し、火は強い東風に煽られて、ハマー県北西部のフライカ村、アイン・バドリーヤ村の森林や植林地に燃え広がり、近隣の住民が避難を余儀なくされた。
SANAによると、自然発火による火災とみられる。
シリアでは、平均気温が10度前後高い日が続いていた。
火災は、ラタキア県とハマー県の消防隊と民間防衛隊の消火活動で6日までに75~80%が鎮火した。
だが、これによって、地中海東岸に残されている数少ない杉(レバノン杉)の原生林の一部と隣接する植林地が焼失した。
焼失面積は4,000ドゥーナム(4平方キロメートル)に達し、その被害は過去20年で最大規模となった。
なお、8月31日と9月3日にハマー県北西部で発生した火災では、松やオークの植林地2,000ドゥーナム(2平方キロメートル)が焼失した。
相次ぐ火災に関して、英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団は、シリア軍がこれまでに78,505発以上もの「樽爆弾」をヘリコプガーから投下してきたにもかかわらず、消火作業にヘリコプターが投入されなかったと批判した。
また、政府支配地域の住民の一部も、SNSを通じて、ヘリコプターによる消火活動が行われなかったことを批判した。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)