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出掛ける前からジャズ気分:矢野沙織 Special 2days@目黒ブルース・アレイ・ジャパン

富澤えいち音楽ライター/ジャズ評論家

●公演概要

4月30日(火)開場:18:00/開演19:30

会場:目黒 BLUES ALLEY JAPAN(ブルース・アレイ・ジャパン)

出演:4/30=矢野沙織(サックス)、金子雄太(ハモンド)、小松信之(ドラム)、スペシャルゲスト 横田明紀男(from Fried Pride)、5/1=矢野沙織(サックス)、中島徹(ピアノ)、金子健(ベース)、加納樹麻(ドラム)

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ビバップじゃなくても、お好きでしょ?

BLUES ALLEY JAPAN    Live Schedule4/30
BLUES ALLEY JAPAN Live Schedule4/30

ビバップは、1930年代の終わりごろに生まれたジャズのスタイルの1つです。当時のアメリカで大流行していたカジュアルなダンスのための伴奏で夜明けまで働いていたミュージシャンたちが、仕事終わりに気晴らしのため立ち寄ったバーなどで、遊び半分に始めたゲーム感覚の強い音楽でした。ところが、一部の天才的なミュージシャンが披露した芸術的な演奏例が、そのころ世の中に出回り始めた”レコード”という反復再生できる機械で記録されたことで全米に――。そして、数多くの奇跡的な偶然によって生まれた音たちが、後世に伝えられることになりました。

後世に伝えられるということは、”規範”ができるということ。ジャズは、偉大なる先人たちの”規範”を足がかりにして大きな飛躍を遂げますが、大きく発展すればするほどその”規範”の意味は重みを増すことになります。そして後続たちの肩には、いつの間にかズッシリと重く、巨大化したビバップがのしかかるようになりました。1950年代以降のジャズの在り方は、ある意味でこの重荷からどう逃れるかにあったと言ってもいいかもしれません。

2003年、16歳の”女の子”が世界の名門ジャズ・レーベルからデビューするというニュースが流れます。もちろん、彼女の肩にもズッシリとその重荷がのしかかっていたでしょう。彼女はそれを避けようとせず、真正面からビバップを受け止めて、ジャズのサックス吹きになることを選びました。

そして、あくまでビバップにこだわりぬいて活動を発展させ、デビュー10周年を2012年に迎えました。

おそらく矢野沙織の心のなかには、「もうビバップはいいや」という気持ちはないのでしょう。それは不器用だからでも、ほかに興味がないからでもありません。ジャズにとってどれほどビバップが重要であるかを彼女は知っていて、その可能性の深さも肌身で感じているからに違いありません。

だから、彼女が求めるのは、ビバップ”プラス・アルファ”の進化系ということになるでしょう。

この2daysでは、それぞれ共演者が異なります。その意味は、どんなシチュエーションでも自分であり続けられるという存在証明をすることではないでしょうか?

気分によって着るものやメイクは変えても、中身である自分は変わらない――。その”自信”を聴くことができるステージになるのではないかという期待が高まります。

2003年、16歳でセンセーショナルなデビューを飾って以来、精力的に活動してきた矢野沙織。 モダン・ジャズの起源である“ビ・バップ”に真摯に取り組み、日本にとどまらずニューヨークでもライブを重ねる一方、 テレビ朝日系「報道ステーション」テーマ曲を担当し、世に新世代ジャズの到来を知らしめた。 その後も、様々なアーティストとの共演を経て、アルバムリリースを重ね、 2012年、10周年を迎えるこの年には原点に帰るファン・リクエストアルバム『Answer』をリリースし、話題となった。 今回、久しぶりの登場となるBAJでは2日間に渡って、違った顔を魅せてくれる。 お見逃しなく!

出典:BLUES ALLEY JAPAN Live Schedule4/30

♪ウイスキーが、お好きでしょ(レコーディング映像) / 矢野沙織

♪矢野 沙織(As) 『Confirmation~ウィスキーがお好きでしょ』

では、行ってきます!

音楽ライター/ジャズ評論家

東京生まれ。学生時代に専門誌「ジャズライフ」などでライター活動を開始、ミュージシャンのインタビューやライヴ取材に明け暮れる。専門誌以外にもファッション誌や一般情報誌のジャズ企画で構成や執筆を担当するなど、トレンドとしてのジャズの紹介や分析にも数多く関わる。2004年『ジャズを読む事典』(NHK出版生活人新書)、2012年『頑張らないジャズの聴き方』(ヤマハミュージックメディア)、を上梓。2012年からYahoo!ニュース個人のオーサーとして記事を提供中。2022年文庫版『ジャズの聴き方を見つける本』(ヤマハミュージックHD)。

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