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藤井聡太挑戦者(18)午後の戦いで優位に立ち王位獲得に向けて大きく前進中 王位戦七番勝負第4局2日目

松本博文将棋ライター
(写真撮影:筆者)

 8月20日。福岡県福岡市・大濠公園能楽堂において第61期王位戦七番勝負第4局▲木村一基王位(47歳)-△藤井聡太棋聖(18歳)戦、2日目の対局がおこなわれています。

 朝は挑戦者が先に席に着くのが慣例です。一方で休憩明けは、そうしたことはありません。

 再開の定刻となるずいぶん前。先に盤の前に座ったのは手番の木村王位でした。羽織は小豆色。そして本局から採用している黒いスポーツ用マスク姿で考え続けます。

 再開5分前に藤井挑戦者も着席。こちらは白いマスクに、光の加減では限りなく白に見える淡い薄緑の羽織姿です。

 木村王位はももの上に閉じた扇子を左手で立て、その上に右手を乗せます。右手の先はひたいを押さえています。

「時間になりました」

 13時30分。立会人の中田功八段が声をかけて、対局が再開されました。

 木村王位はそこからまた3分ほど考えます。そしてあたりになっている桂を、中央に向かって跳ねました。

 対して藤井挑戦者は少しのあいだ、右手を動かします。藤井挑戦者とB級2組で対戦した橋本崇載八段によれば、この「もぞもぞ」とした感じのあと、藤井棋聖は次の手を指すのだそうです。

 消費時間は1分。藤井棋聖は相手の桂がいなくなった一段目に歩を進め、と金を作りました。飛銀交換で駒損の藤井挑戦者。と金を作ったことによって、少し駒損を回復したという見方もできます。

 藤井挑戦者が「両取りヘップバーン」で打った角は、結局飛も香も取らず、相手の角と等価交換になりました。その間に藤井棋聖はポイントをあげたようです。

 藤井挑戦者は作ったと金を拠点として、角を打ち込み、木村玉に王手をかけます。挑戦者の攻めが少しずつ厚くなり、形勢は少しずつ挑戦者よしに傾きつつあるようです。

 14時50分を過ぎました。現在は61手目、木村王位が桂を中央に跳ね、5筋の飛車とともに反撃に出たところです。藤井挑戦者とすれば、今度は受けに回って、ここをしのげばというところ。そして香を打つ絶好の攻防打が見えます。

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 筆者手元のコンピュータ将棋ソフト(水匠2)では評価値にして2000点前後、藤井挑戦者よし。客観的な形勢は藤井挑戦者優勢、もしくは、勝勢に近いのかもしれません。

 封じ手の鮮やかな飛車切りから藤井挑戦者の勝ちとなれば、その歴史的意義と合わせ、本局もまた後世に語り継がれる一局となりそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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