ふっくらふわふわの「いちご大福」白あんと苺の果汁を包み込む、ふくよかできめ細かな求肥餅に魅せられて。
幕末の動乱後。その爪痕が癒えないまま明治維新へと突入した京都。その混沌とした時代の最中である1875年、初代女将・鳴海よねさんがお嬢さん3人と商いを開始したことからはじまった「鳴海餅本店」さん。現在はカフェスペースも併設された、解放感と木目の温もりに溢れたお店ですが、開業当初は三間間口のこぢんまりとしたお店だったそうです。本当に販売だけ、といったスペースだったのですね。
戦争による強制廃業などの困難を幾度となく乗り越えていらした強かなお店は、日常に寄り添うようなほっとするお菓子が揃う京都の和菓子屋さんへと進化されました。
鳴海餅本店さんのもち米は、佐賀県産「ヒヨクモチ」とのこと。こちらはきめ細やかで粘り気がつよく、また固くなりにくいという特徴の品種。和菓子にもぴったりな品種ですね。
今回は、先日の日本橋高島屋さん京都航空便にて購入した、「いちご大福」をご紹介。
ぽよんぽよん。この言葉がぴったりなのは、鳴海餅本店さんの「いちご大福」が一番かと。きめ細やかでしっかりと厚みのある求肥餅は、確かに粘り気もあるのですが、それだけに留まらず、口の中で軽やかに弾むような食感に驚き。佐賀県産ヒヨクモチの特性がダイレクトに伝わります。
その軽やかさゆえに、苺の滴るような爽やかな果汁とクリアな白あんの甘味が一層際立ちます。けれども、脇役ではなくずっと印象に残り続ける柔らかな求肥の存在感たるや。奥が深い…
いちご大福と申しますと、地域やブランドの大ぶりな苺が引き立つ大福も多く、その迸る果汁と豊かな果肉を堪能するのも非常に美味しいのですが、鳴海餅本店さんのように求肥も印象に残るような大福もまた、和菓子として大変魅力的だなぁと思うんです。
鳴海餅本店さんが掲げる「キットオキニメス」という座右の銘のもと、私のお気に入りのいちご大福のひとつになりました。いつかこちらでまたご紹介したい栗おこわ、そしてまだいただいたことのないお菓子も「キットキニイル」こと確実です。