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『刑事7人』シリーズを支える紅一点・倉科カナの“デキるマドンナ”ぶり

斉藤貴志芸能ライター/編集者
『刑事7人』より (C)テレビ朝日

2015年の第1作からシリーズ化され、SEASON7が放送中の『刑事7人』(テレビ朝日系)。今回も7話まで、世帯視聴率は毎回10%超えと安定した人気を保っている。東山紀之が演じる主人公ら7人で事件を解決していくストーリーの中、紅一点の倉科カナが担っている役割は大きい。

『相棒』『特捜9』と並ぶ水9の刑事ドラマに

 毎年1作が放送され7年目になった『刑事7人』。『相棒』、『特捜9』と並ぶテレビ朝日の“水9”枠の刑事ドラマのシリーズ作として定着した。“7人”のメンバーはSEASON4から変わってない。演じているのは、東山紀之、田辺誠一、倉科カナ、白洲迅、塚本高史、吉田鋼太郎、北大路欣也という面々。

 東山が演じる天樹悠は高い捜査能力を持って証拠を積み上げるうえ、刑事資料係に在籍中、膨大な捜査資料と向き合って“人間犯罪ビッグデータ”と化し、ものごとの僅かな違和感も見逃さない。他のメンバーもそれぞれ強い個性と独自の捜査スタイルを持つ。

 基本1話完結で事件に挑む、大人向けの王道刑事ドラマ。練られた謎解きのカタルシスと人間模様の哀感が程良く配された物語がツボを押さえ、定番的な人気に繋がっている。

かわいい見た目で颯爽と勇ましく

 そんな中で倉科カナが演じているのが、唯一人の女性刑事・水田環。ショートカットでスーツにパンツといういでたちで、20歳近く年上の天樹をなぜか「天樹くん」と呼ぶ。最近はほとんど触れられないが、アメリカで犯罪心理学を専攻していた留学帰り。それでいて、足を使ってコツコツ調べる職人肌の刑事だ。

 天樹と違うタイプの洞察力と推理力を持つ一方、逮捕術にも長けているようで、暴力団などを担当する組織犯罪部に異動していた今回の1話では、逃げる犯人を蹴りで止めるシーンも。容姿端麗な女性刑事がどんな状況にも臆さず、颯爽としたところを見せるのがカッコいい。

 SEASON1当初の倉科は27歳のかわいい印象の女優で、大人向けドラマで刑事を演じるイメージはなかった。彼女目当ての視聴者を呼び込みそうではありつつ、年齢が比較的近い塚本や白洲がまだ出演してなくて、渋めな雰囲気があった中、やや違和感を覚えるキャスティングだった。刑事役とはいえ、中年の同僚たちのマスコット的な存在になるかとも思われた。

写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

 ところが、蓋を開ければ上述のキャラクターをまっとう。「美しさが圧巻だけど、かわいこちゃん枠でない演技でうれしい」「男気たっぷりな感じはハマリ役」といった感想が寄せられ続けている。ともすればむさ苦しい群像刑事ドラマに潤いをもたらしつつ、紅一点でも男性刑事にひけを取らない活躍を見せて、“デキるマドンナ”といった存在感を確立した。

 今回のSEASON7では、7人の休日を描いた5話で、水田はマッチングアプリで出会った男性と食事に。普通の男女っぽい会話を交わす珍しい顔を見せたが、投資話を持ちかけられたところで、相手を後ろ手に締め上げて確保。実は1人で投資詐欺の捜査をしていたのだった。デートモードのかわいらしさから一転、周囲が唖然の勇ましさを見せて、水田らしいシーンとなった。

男社会で肩ひじ張りながら疎かった恋愛も?

 また、今回の水田は1話から、塚本が演じる青山新と同居していた。つき合っているのかと思いきや、「ただのルームシェア」とのこと。6話では、青山が10年前に逮捕した後、更生して介護士を目指していた男が殺人事件の被疑者に。

 「あいつはそんなことをするヤツじゃない!」と、無実を証明するための捜査にのめり込む青山を、水田は「もっと冷静になって。あんたは人を信じすぎ」とたしなめる。

 それでいて、結局は「被害者の足取りを追うから。行くよ!」と協力。厳しさの中で見せるやさしさがグッとくる。母性のようなものも感じさせて、まさにマドンナ(聖母)。事件の真相を明らかにして、ラストの居酒屋での打ち上げシーンでは青山に温かい眼差しを向け、“やっぱり?”というところも匂わせた。

 倉科は「2人がどうなっていくのかは、私も全然わからないんです。環は男社会の中で、負けじと肩ひじ張ってきたキャラクターで、おかしいと思ったことには、おかしいと言える強さを持った女性ですが、事件ばっかり追ってきたから、恋愛に若干鈍いところがあって」とコメントしている。

 この2人の今後も気になるところ。個人的には恋愛要素を入れるより、いわゆる女性らしさに無頓着だからこそ、かえって女性としての魅力も際立つ水田環のままのほうがいい気はする。

逆転の朝ドラヒロインから躍進を続けて

 現在33歳の倉科は熊本出身で、高校卒業後に『ミスマガジン2006』でグランプリを受賞。愛らしい顔立ちにB89のグラマラスな水着グラビアが人気を呼んだ。一方、女優業ではデビュー3年で目立った活躍がなく、忘れられかけていたところで、NHK朝ドラ『ウェルかめ』でヒロインに抜擢。オーディションは5回目の挑戦だったといい、雑誌編集者を目指す役を演じた。

 その後は『名前をなくした女神』での見栄っ張りなヤンママ役、『花のズボラ飯』でのズボラな主婦役、『dinner』での倒れた父に代わりレストランを切り盛りする役など出演作が続き、演技への評価を高めていく。場を明るくするたたずまいが持ち味だったが、『ファーストクラス』の女を武器にしてものし上がろうとするデザイナー役や、『奪い愛、冬』での婚約者と姿を消していた元カレの間で揺れる役など、幅を広げてきた。そして30代になっても、ルックスのかわいらしさは変わらない。

 10月からは『らせんの迷宮~DNA科学捜査~』(テレビ東京系)で警視庁科学捜査研究所の美女役、『婚姻届に判を捺しただけですが』(TBS系)で主人公と偽装結婚するサラリーマンの兄嫁役と、連ドラ2本に出演する。

 さらなる活躍が期待される倉科カナ。7年前は新境地だった『刑事7人』の水田環も今や完全なハマリ役に。SEASON7のクライマックスから今後のシリーズへと出演を続け、本人の移り変わりと共に長く見ていけたら、うれしいところだ。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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