トランプ大統領の一般教書演説に潜む危険な“トランプ独裁体制” “ロシア疑惑”の捜査打ち切りを狙う?
初の一般教書演説では“一定の評価”が得られたと言われているトランプ氏。確かに、語気が強い“トランプ節”は登場せず、お行儀良く、ソツがない演説だった。超党派による協力を呼びかけたことも注目され、CNNの調査では、視聴者の48%が「非常に良かった」と評価している。しかし、その演説には“重大な危険”が潜んでいると、米国では人気のオンラインマガジンslate.comが指摘している。
Donald Trump Just Asked Congress to End the Rule of Law
危険な“反民主主義的権力”を要求
演説の中で危険視されたのは、以下のくだりである。
「すべての閣僚に、国民の信頼を傷つけ、国民を失望させるような連邦職員を解任する権利を与えるよう、議会に求める」
トランプ氏は、米国民の利益に反するような連邦職員を首にできる権限を、自分たち閣僚に頂戴と言っているわけである。slateは、このくだりについて、“IRS(米国の国税局)やFBI、司法省、連邦政府関係機関などが表面上は独立した格好になっていることに、トランプ氏は終止符を打つことを求めている。前代未聞の、疑いもなく反民主主義的な権力を自身に与えるよう議会に呼びかけた”と解釈して、批判している。
実際、このトランプ氏の“危険な要求”が実行されたらどうなるのか。
slateによると、例えば、大統領を調査している法執行官が国民の信頼を傷つけ、国民を失望させたら、閣僚はその法執行官を即座に首にできることになる。
つまり、このくだりを“ロシア疑惑”に当てはめるとするなら、疑惑の調査をしているモラー特別検察官は、国民の信頼を傷つけるようなことをしていると閣僚に判断されれば、首にされることになるわけだ。
ムラー氏を首にする可能性
1月25日、ニューヨークタイムズ紙は、昨年6月、トランプ氏が、モラー氏を首にしようとしていたと報じた。トランプ氏自身はこの報道を完全否定したが、実際のところ、トランプ氏としては、自身に捜査の手を伸ばすモラー氏を首にしたいところだろう。
元国務省政治軍事局政策アナリストのベネット・ランバーグ氏は、筆者のインタビューにこう話す。
「可能性は低いですが、トランプ氏がモラー氏を首にするような動きに出る可能性はあると思います。モラー氏のスタッフの中には、選挙時、ヒラリー氏に寄付をした人がいるからです。そのため、トランプ氏は“モラー氏は客観的調査ができない、首にしよう”と主張してくるかもしれません。昨年も、あるFBIのエージェントは、トランプ氏に反対するようなメールを送ったため、調査から外されたのです。しかし、トランプ氏は直接モラー氏を首にする権限を持っていません。モラー氏を首にできる権限を持っているのは、疑惑捜査を監督しているローゼンスタイン司法副長官だからです。しかし、トランプ氏が司法副長官に圧力をかけたら、大問題が起きます。ワシントンではデモが起きるし、議会も反対するでしょう」
つまり、slateが指摘したくだりにおいて、モラー氏を解任する権限のないトランプ氏は、その権限を自分に与えるよう、議会に要求しているとみることもできるだろう。
“法の支配”を終わらせたい?
slateは、いくらトランプ氏が共和党議員の支持を得られているにしても、そんな要求は議会では通らないはとしているものの、「初の一般教書演説で、米国第45代大統領が、“法の支配”を終わらせる権限がほしいと議会に要求した」というのが、超党派による協力を呼びかけたことよりも新聞の見出しになるべきだと主張している。
“ロシア疑惑”がふりかかっているトランプ氏としては、“法の支配”を終わらせたいところだろう。実際、2月2日には、“法の支配”に水を差す動きに出た。FBIの捜査を非難する文書の公開を認めて、捜査を牽制したのだ。モラー氏を解任する権限を持っているローゼンスタイン司法副長官ら公開に反対した高官の更迭も取り沙汰されているという。
トランプ氏が“法の支配“を終わらせたら、“トランプ独裁体制”ができあがってしまう。超党派体制を訴える耳に優しい演説には、“トランプ独裁体制”の呼びかけが隠されていたのである。