嫌韓だけに頼る安倍総理に覇気はなく今は嵐の前の静けさか
フーテン老人世直し録(461)
長月某日
ロシアのウラジオストクで「東方経済フォーラム」が開かれ、安倍総理とプーチン大統領の日ロ首脳会談が行われた。二人が直接会談するのは27回目だという。安倍総理は会談の冒頭「平和条約問題や国際課題について意見交換し、未来に向けて議論したい」と発言、プーチン大統領は「日ロ関係は安定的かつ躍動的に発展している」と応えた。
しかし平和条約交渉が進展する様子はない。会談の前にプーチン大統領は北方領土の一つである色丹島で操業を開始した最新設備の水産加工工場の式典に中継映像で参加し祝福の言葉を送った。大統領が北方4島の開発行事に参加するのは異例で、ロシアが北方領土を今後も実効支配し続ける意思を安倍総理に見せつけたことになる。
年頭会見で安倍総理は「今年は祖父岸信介が行った日米安保条約改定交渉から60年の節目に当たる」と述べ、自身も歯舞、色丹の2島返還で平和条約締結を成し遂げ、歴史に名を残す意欲を見せた。しかし6月の大阪サミットで締結にこぎつけることは出来ず、日露平和条約は今や遠い幻のようだ。
それにしてもプーチン大統領の態度は安倍総理を「舐めている」としか思えない。去年9月に開かれた前回の「東方経済フォ-ラム」でも、突然プーチン大統領から「先に平和条約を結んでから領土問題を話し合おう」と提案された時に、安倍総理はとっさに反論せず、ただ薄笑いを浮かべた。
それも中国の習近平国家主席の面前で、しかもテレビ中継されているというのにである。それを見てフーテンは「これでは外交にならない。世界中から舐められる」と思ったが、案の定、米国のトランプ大統領は今年の8月に一般の聴衆を前に安倍総理のなまりのある英語を真似してみせ、貿易交渉で金を吸い上げることが出来ると自慢した。
トランプの言った通り、安倍総理はその後の日米首脳会談でトランプから余剰トウモロコシ250万トンを押し付けられ、それを何の条件も付けずに受け入れた。しかも中国が買わないトウモロコシを押し付けられた。これではトランプだけでなく習近平からも「舐め」られる。
安倍総理が強気に攻めるのは韓国の文在寅政権に対してだけである。まるで強い者にはペコペコするが、弱い者には居丈高になる典型だ。韓国を攻める理由は韓国大法院が植民地時代の徴用工に対する慰謝料の支払いを認める判決を下し、日本企業の財産を差し押さえる構えを見せているからだ。
その根底にあるのは韓国大法院が日本の植民地支配を「不法」と見ているためである。これに対し日本政府は朝鮮半島の植民地支配を「合法で正当だ」と主張する。当時は帝国主義の時代で、日本は国際法上認められるやり方で朝鮮半島を領有し、その近代化に貢献した。
そして1965年の日韓国交正常化の時の日韓請求権協定で、3億ドルの無償供与と2億ドルの貸し付けを行い、国家の請求権は「完全かつ最終的に解決された」と主張する。ただし日本政府も個人の請求権については消滅していないとの立場である。
その結果、日本の最高裁は、個人に請求する権利はあるが裁判に訴えても救済は出来ないので、裁判以外の方法で被害の救済に向けた努力を期待するという判決を2007年に下した。当事者の話し合いによる和解や慰謝料の支払いを示唆している。
韓国大法院は、日本の植民地支配を「不法」とするから、植民地支配による不法行為はサンフランシスコ平和条約に基づく日韓請求権協定に含まれないという立場である。従って不当な強制労働に対しては企業が慰謝料を支払えという判決になる。
そして日本の歴代政権も近年は植民地支配を「合法」だが「正当」ではなく「不当」であったと主張を変えた。細川護熙、村山富市、小渕恵三、小泉純一郎、菅直人ら各総理は、節目の演説や談話で、日本の植民地支配を認め、多大な損害と苦痛を与えてきたとおわびの言葉を述べた。
しかし安倍総理だけはそれとは異なる立場を維持することで支持者を繋ぎ止めてきた。その安倍総理が北方領土問題で躓き、また拉致問題でも何もできない。さらに2013年の参議院選挙で大勝し、衆参両院で与党が3分の2を超える議席を獲得し、史上初めて憲法改正の発議に必要な議席を得たのに、何もできずにいる。
2013年の参議院選挙直後には、麻生副総理が思わず「ナチスを真似たらどうか」と口にした。ナチスは民主的な手続きに従って権力を得、世界で最も民主的と言われたワイマール憲法を守りながら、憲法の緊急事態条項を利用して独裁体制を敷くことが出来た。
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